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「アマビエ」飴・論

 陳腐な表現だが、「タマガッタ」とするには及ばないだろう。「魂消・たまげ」るとは「魂が消えるほど驚く」を語源とした古語に起因するらしい。で、何をタマガッタのかというと、先般実施された初の「大学共通テスト・国語」の第一問である。現役時に高校社会科教師として「倫理」を専門に教えていたが、大学入試問題で最初に観るのは「国語」で、出典作品に興味があるのだ。設問を解くでなく、流し読みする程度なのだが。本年の第一問作品は香川正信作「江戸の妖怪革命」で、論旨は、「妖怪は日常的不可解な現象に意味を与えようとするミンゾク的な心意から生まれたものであった」としている。〈注。ミンゾクは設問の為カタカナとなっている〉。冒頭、タマゲタとしたのは、現代っ子は「妖怪」作品などに興味を持てるのか、この作品の出題意図は何か、という事からだ。ちなみに筆者の入試問題は、宮本百合子「播州平野」だった。戦後二十年に達しない時代である。僅かに国語を得意と自認していた筆者だが予想外の作品に〈やられた〉と思った苦い記憶がある。国語から哲学に関心が移り、「民俗学」や「心理学」とは遠い場所にいたが、職に就いてからそれらに関心をもち、現在は「スピリチュアル〈超心理学〉」や「超常現象」にも関心がある位置に来ているから我ながら不思議といえば不思議である。日本唯物論学会長を歴任された大学恩師とは今も年賀交換をさせて戴いているが、現在の小生の志向性についてはお報せできずにいる。

 本題に入りたい。昨今のコロナ禍で話題性が出て来た妖怪キャラクターといえば「あまびえ」であろう。出自は弘化三〈一八四六〉年の江戸での瓦版にある、とされる。それによると肥後の国〈現・熊本〉の海中から現れた人魚にも似た妖怪が、怪奇現象の探索に来た役人に対し「疫病出現の折は、自分の姿を書き写した絵を人々にみせよ」と託宣した事に始まる、とされる。除災の霊験ある「あまびえ」だが、江戸期瓦版の原画となる木版画を見る限り、妖気ある妖怪のようなおぞましさはない。厚労省が感染予防用に作成したポスターの「あまびえ」も同様で、どちらかというと、流行りの「萌え」系キャラクターに近い。

 さて本紙十二日の紙面で「あまびえ」のイラストパッケージを見た。大崎中生徒作品を使用し、富士屋製菓が「あまびえ飴」として新発売したとの事。厚労省図案より可愛いイラストは護符になるかもと、早速、同社に購入に行き、知人など十人近くに「コロナ対策の縁起物」ですとおすそ分けして廻った。が、「あまびえ」を知っていたのは僅かお二人のみで、知られてない方には、本紙のコピーをつけるようにした。「信ずる者は幸いなり」の引用をせずとも、ナチュラルキラー細胞の活性化、つまり、免疫効力は「信ずる」ところから生まれるのである、という結論で本稿を閉じ、甘い「あまびえ飴」がより多くの人達の口に入り、「疫病退散」の力になりますようと念じたい。ーー南九州新聞コラム掲載済み

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