時事論二題
〇真鍋氏のノーベル賞
米国籍真鍋氏のノーベル物理学賞受賞に際して思った一つが「頭脳流出」である。日本の公的教育費を対GDP比で見ると3,18%は最新データで世界150中113位で、先進国中最下位である。これでは将来「技術立国」など過去の遺産になりはしまいか。次に、最新の学問成果は軍事利用に展化できうるものが多いという事である。殺戮兵器ダイナマイトを発明したノーベルが平和研究の育成基金にと創ったのがノーベル賞だとは知られているが、最新の民生技術、例えばドローンや人工知能など軍事転用化もされやすい。デュアルユース〈軍民両用〉の語が存在する現在こそ、学術者には学問研究の意味を問う高い倫理規範が要求されると考える。〈死の証人〉からの金に手を汚してはなるまい。最後に、真鍋氏も記者会見で述べていたが、「政府政策に学術会合の意見が反映されているか」である。岸田政権は学術会議任命拒否者をそのまま放置する決定をしたようだが、人の話を好きだという総理には、政策批判など耳の痛い識者の話にもぜひ耳を傾けて欲しい。良薬は口に苦しとの言葉もあるので。
〇 防衛予算について
我が国の政府債務は現在、国内総生産(GDP)の2倍を上回る1200兆円を超えている。歳入と歳出額の差を解りやすく「ワニの口」に見立てると歳出額が歳入を大幅に上回り、ワニの口は大きく開いた状態だと、危機感を持って月刊誌に寄稿したのが現役財務省事務次官である。
彼によると国家債務が深刻な状況にある事を直視すべきだとして、「財政の健全性」問題を提起し、中で「今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの」だとし、「氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けていると、このままでは日本は沈没してしまう」と危機感をあらわにしている。一般家庭で言うなら〈家計破綻〉なのに借金を膨らます状態で、〈開いた口がふさがらない〉とはこんな時に使う言葉だろう。
さて衆院選が始まったが、自民党公約には驚いた。高市政調会長が12日発表した8大公約が含まれた「自民党政策BANK」(政権公約集)によると防衛費を二倍以上にする事が表記されているのだ。現在、日本の防衛予算は国内総生産の0.95%である。それは、1976年、三木武夫内閣の時、日本の軍国主義化を防ぐため、「防衛費をGNPの1%未満に制限する」という内容を閣議決定して以来、これを守ってきた歴史があるからである。これを2%水準に上げるというのが今回公約で、「防衛費1%枠」原則の破棄である。2021年の防衛予算は5兆1235億円だが、この目標が達成されると日本の防衛費は10兆円台に達することになる。米国からの戦闘機などは相手国の「言いなり」の価格で「爆買い」しているのが現状だが、会計検査院も目の届かない防衛予算だけが無尽蔵に膨らんでいく事に危惧を感じている。米ソ冷戦時に旧ソ連が莫大な軍事費により財政破綻した轍を踏むようなことがあってはなるまい。際限なき軍拡競争に陥ることなく、わが国は憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」精神に立ち返り、憲法九条の理念に基づいた「平和外交」に力を傾倒して欲しい、三木武夫夫人の睦子さんは二千四年に「九条の会」が発足した時、発起人九人のうちの一人だった事も蛇足ながら付け加えておきたい。
-----10/21 南九州新聞コラム掲載
橋--敵基地攻撃〈相手陣営批判〉までは出来ませんでした。選挙最中なので( ´艸`)
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