岸田・アベ傀儡政権
明日4日に発足する見通しの岸田文雄内閣。すでに発表された自民党役員や漏れ伝わる組閣人事に対しては「『生まれ変わった自民党』どころか、たんなる安倍傀儡政権だ」という批判が高まっているが、ここにきて御用ジャーナリストやメディアからはカウンター情報がしきりに流されている。
それは「安倍前首相は岸田氏の人事に不満を持っている」「岸田氏は安倍前首相の言いなりではない」という説だ。
たとえば、おなじみの田崎史郎氏は、岸田氏の人事を「(安倍前首相は)全部満足しているわけではない」と言い、時事通信や毎日新聞も「(岸田氏の人事は)安倍氏へのささやかな抵抗」「岸田氏は安倍氏の言いなりにはならないとの姿勢もうかがえる」「安倍氏は一連の人事にいら立ちを募らせている」と報じた。
だが、これらの情報は、安倍前首相や岸田氏の周辺が「安倍の傀儡」という批判を打ち消すために流しているにすぎないものだ。
たしかに、自民党の役員人事にかんしては、すべて安倍前首相の思いどおりになっているわけではない。安倍前首相は幹事長に総裁選で支持してきた高市早苗氏を、官房長官には最側近である萩生田光一氏を推したと言われているが、周知のとおり、岸田氏は幹事長に甘利明氏、官房長官に松野博一氏を抜擢した。
しかし、高市氏にかんして安倍前首相は「あわよくば幹事長に」と目論んでいたものの、そこまで絶対視していたわけではない。一方、前述した田崎氏は「(甘利氏ではなく)もっとほかの人を据えたほうが(安倍前首相は)自分の意志が通しやすい」などと解説していたが、むしろ甘利氏は安倍前首相にとって派閥を超えた刎頚の友であり、もっとも「自分の意志を通しやすい」人物と言うべきだろう。 実際、2018年の総裁選後におこなった役員人事では、賄賂問題で辞任したばかりの甘利氏を安倍前首相自身が党四役である選挙対策委員長に抜擢。当初は党三役である総務会長に据える案さえあったほどだった。今回の幹事長人事も、総裁選投開票の前夜にはすでに麻生太郎と相談の上でGOサインを出していたと言われており、安倍前首相にとって「既定路線」の人事なのである。
「松野官房長官は細田派内でも安倍に遠い」は本当か? 安倍は「Hanada」で“ポスト菅”に松野の名を
官房長官にかんしても同様だ。高市氏とは違い、安倍前首相は「萩生田官房長官」に強くこだわり、朝日新聞が9月30日に「萩生田光一文科相を官房長官に充てる方針を固めた」と“誤報”を出したのも、その実態は安倍前首相に近い細田派幹部が流した「新聞辞令」だった。結果的に岸田氏はこれを蹴ったわけだが、それは当の細田派からも「萩生田に官房長官は早すぎる」という批判があがったため。そこで岸田氏は萩生田氏の代わりに同じ細田派から松野氏を官房長官に起用したのだ。
だが、この人事に対しても御用メディアは安倍色を払拭しようと腐心。時事通信は「細田派でも松野氏は安倍氏と距離があることで知られる」などとし、松野氏を官房長官に据えた人事に安倍前首相が不満を持っているかのように伝えた。しかし、松野氏は細田派のなかでも「安倍四天王のひとり」と呼ばれ、実際に安倍前首相は今年6月末発売の「月刊Hanada」(飛鳥新社)のインタビューでも「ポスト菅」の「有力な候補者」として萩生田氏らとともに松野氏の名前も挙げていたのだ。
さらに、岸田氏による「若手登用」「岸田カラーの象徴」として総務会長に引き上げた福田達夫氏の人事にしても、田崎氏は「安倍さんは『もう一回考えてみたら』と言った」「気持ちはNO」「でも、岸田さんはやり抜いた」と解説、岸田氏が安倍前首相に抵抗した結果であるように語っていたが、福田氏も細田派であることに変わりはない上、安倍前首相自身が福田氏のことを「細田派のホープ」として買い、育成を目的に国防・安全保障を学ばせるため2017年の人事で防衛政務官に就けていた。 いや、岸田氏が「安倍前首相の言いなり」になっていることは、党役員および閣僚人事案を見れば明々白々だ。
まず、岸田氏は甘利氏の幹事長抜擢のみならず副総裁に麻生財務相を起用し、安倍政権の基盤を固めた「3A」を早々に復活。しかも、麻生氏が退く財務相ポストには、麻生氏の妻の弟にあたる鈴木俊一氏を充てるという「3A」への配慮を剥き出しに。
しかも、現在伝えられている組閣案では、安倍前首相の実弟である岸信介防衛相や、安倍前首相が今年5月に総裁候補のひとりとして名指しした茂木敏充外相が続投すると見られ、安倍前首相の最側近である萩生田文科相は経産相への横滑りとなる見通しだ。
北村滋の官房副長官就任は批判受け撤回したが、首相秘書官に安倍の最大の側近・今井尚哉の影武者
それだけではない。岸田氏は当初、官房副長官として安倍政権時代に内閣情報官としてさまざまな謀略を仕掛け「官邸のアイヒマン」と呼ばれてきた北村滋・前国家安全保障局長を起用する方針さえ見せた。この人事案は批判が高まったためか、岸田氏は北村氏ではなく栗生俊一氏を起用する方針に転換させたが、栗生氏も北村氏や前任の杉田和博氏と同様にエリート警察官僚であり、安倍・菅政権で暗躍した「官邸ポリス」の流れを汲んでいる。
さらに、筆頭格である政務担当の首相秘書官には、嶋田隆・元経済産業事務次官が内定したと伝えられているが、嶋田氏は安倍政権下で「影の総理」と呼ばれた今井尚哉・元首相秘書官と同期入省組で昵懇の間柄。ようするに、今井氏に代わって岸田氏を操るための「今井氏の影武者」だ。ようするに、どこからどう見ても、岸田政権が「安倍傀儡政権」になることはすでに決定づけられているのである。
にもかかわらず、「安倍前首相は岸田氏の人事に不満を持っている」「岸田氏は安倍前首相の言いなりではない」などと言いふらすことは、まさしく御用の極み。いや、御用メディアのみならず、菅首相就任時の「パンケーキおじさん」報道を反省することなく、「岸田氏はお好み焼きと納豆が好き」「愛妻家」などと好感度を高めるためのPRを盛んに繰り広げている始末だ。
橋ーー上論に全面賛成します