「権力対報道」考①ーーコラム文
〈番記者〉なる語をご存じか。特定の取材対象者に密着して専任取材を行う記者のことを言うそうである。他社とのスクープ合戦の中で、記者が女性ともあればセクハラ被害もありはしないかと懸念していたところ起こった。
一昨年の四月、テレビ朝日の女性記者が、財務省の福田事務次官を取材する中でセクハラの被害を受けたと発表したのである。女性記者は最初、録音を元に上司に相談したものの対応して貰えず、他社週刊誌に訴えたところから発覚したものだった。結果、次官は辞任に追い込まれ、テレビ朝日はセクハラ被害に対し、社として対応しきれなかった事への反省を表明したのだった。驚くべきはこの時の担当大臣兼副総理の麻生氏の発言である。彼は言った「セクハラという犯罪はない」「女性担当を男性記者に変えればすむ話だ」と。驚いた。〈女性活躍社会〉は安倍政権の目玉スローガンの一つなのに副総理がこの認識では、と思ったからだ。他紙の話で恐縮だが間を置かず南日本紙に電話した。担当がどこだったか不明だが、「取材事情によって、セクハラ被害はありうる話だ。貴社にもセクハラ対応の内部規定はあるだろうが、この際、社としての姿勢を読者に表明する事こそセクハラを許さないというマスコミとしての決意表明になりはしないか」と。後日、その表明が出されて良しと思っていたら半年後の十二月、鹿児島県警の男性警視がパワハラセクハラ発言をしていたとの理由で処分されたとの記事。被害者五人の中に、共同通信社の鹿児島支局の女性記者もおり、同社は県警に抗議と再発防止を求めたとの事だった。共同通信とは、時事通信も同じく情報収集能力の低いマスコミ各社に代わって全国中枢や海外情報を取材収集して配信する組織であり、南日本も加盟して情報を貰っている。記事最後の共同配信というのがそれである。
共同通信社はリベラル派として信頼していたが全面信頼も怪しくなってきた。理由は以下である。十一月下旬、国会では野党が総理の〈桜を見る会〉を厳しく追及していた。その折、総理はマスコミ各社幹部を招き会食を催している。第二次安倍政権になってマスコミ幹部と頻繁に会食しているのは動静で明らかである。マスコミが懐柔されれば権力批判も甘くなるのは容易に予想されるところである。不参加は毎日新聞のみ〈注。一月十日は参加〉で、リベラルと称される共同も朝日も参加している。朝日は「会食はしたが権力監視の役割はきちんと果たす」と答えているが、このような姿勢では読者の方もマスコミを監視すべきだろう。マスコミが権力監視の役割を果たさなくなったら、政府発表を垂れ流すのみとなり、かつての大本営発表も同様広報機関と成り下がって、民主主義を醸成する報道機関とは言えないからである。故に私は南日本の共同配信記事に不満ある時は南に電話している。「共同に伝えます」と担当者は答えてくれるのだが。
橋ーー6日掲載文です。自己評価68点!後二回続きます