読書のすすめ
読書週間は過ぎたが本タイトルで書かせて貰いたい。特定の本を勧めるというより読書習慣のすすめである。
筆者の読書遍歴から始めたい。団塊の世代である。小学時代、読む本は無く、国語教科書は新学期が始まる前に数度読み終えていた。中学高校時は特に読書好きとは言えずに真剣に読み始めたのは大学入学後である。当時流行りのマルクスより、興味を惹いたのは実存思想だった。「本質はない、誰もが変われる」との実存思想の命題は、教職に就いた後も生徒達に接する時の根幹になってくれた。独身時は自由なお金で教育図書を月四冊ほどは定期購入して勉強した。結婚すると間もなく、書き始めた小説に芽が出そうと思えて、妻には無理を言って月刊小説誌を毎月数冊購入していた。捨てずにいた小説誌は段ボール箱に何箱も溜まっていたが、退職して暇を持て余していた父の元へ届けて喜ばれたのが救いである。子育て中は使える金銭も余裕なく、図書館を利用させて貰った。高校には図書室もあり、足繁く通った。六年前妻が早逝し、子供達は独立、独り暮らしの生活となった。が、孤独感を感じずにいられるのは、本とネット交流のおかげと言っていい。年金暮らしなので新刊は殆ど買えず、一冊二百円以下の中古本を求めて月に二十冊ほど読んでいる。朝目覚めた三時ころから新聞が来るまでの二時間と夜眠りにつくまでの凡そ一時間、全てベッドというのが読書スタイルで、何でも手当たり次第に読む。日に三時間ほどで一冊のペースである。最近読んだのでは認知症の母を書いた「ペコロスの母に会いに行く」。「妻がうつになりまして」「原発とヤクザ」「女子高生漂流」。シリーズのコミックでは「Dr・コト―の島」「黄昏流星群」「人間交差点」など。読み終えた本は資源としてカンパに出さして貰っている。また、気に入った本は何冊もストックして、必要だと自分の判断で勝手に送り付けさせて貰っている。
最後に、読書の効能である。経験で言うなら、本を読む人は悩まない、又は悩みが少ない。理由は一冊の本には作者の思いや人生が凝縮されている。ヒントにならない筈がない。千冊の本には千人の体験がある。人の話を聞いたりドラマ視聴も良いが、訊いたり見たりの体験は忘れてしまう事もある。本は何度でも読み返せるという強みがある。多くの体験に出会う事で、孤独も癒されるだろう。今の筆者は「死」も恐れる事は無い。多くの「輪廻転生」論を読んできたからである。というまとめにならない結末で、本稿「読書のすすめ」稿を閉じ、次稿は「世界侵略のすすめ」としたい。
最後に、十月二十七日、沖縄の芥川賞作家、大城立裕の訃報を知った。基地反対運動の先頭に立ってきた氏は、小生が十年前に、奄美・沖縄の復帰を背景に書いた「白幻記」を刊行した時、沖縄タイムス紙に書評をあげて下さり、個人的にも私信を頂戴した有難き文学の先輩だった。謹んでご冥福を祈りたい。
ーー南九州新聞コラム12日掲載
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