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哲人論➁プラトン


「ワシの後はどうなってんだよ」という〈ソクラテスのため息〉が聞こえてきそうです。本稿で〈哲学者論〉を始めたのに「元気の出る言葉20回」他を入れ込んでしまい、ソクラテス論まで二回展開したのみで休筆して半年経ったようで。そこで〈哲学者論〉として、ソクラテスの弟子、プラトンから再開することといたします。

 プラトンと言えば、プラトニックラブ〈精神的恋〉や、エロス〈性的欲求〉を思い浮かべられるのではなかろうか。しかし、正反対に見えるこの二つの用語の意味するものは同じなのである。対象を求めて自分のものにしたい、との欲求の意味で。〈求める〉の対極に位置する語と言えば〈与える〉になるだろう。〈与える〉は対償を伴わない純粋な精神的行為であり、宗教的意味の〈愛〉に繋がる。求めるが自己中心なのと対照的である。くだけて説明するなら、「愛の心は真心、求める恋、つまり恋心は下心」との表現でおわかりになるだろうか。愛と恋を漢字にした時の〈心〉の位置の説明で解って貰えるかな。

 さて、この自己中欲求を〈エロス〉で説明した人物がプラトンである。プラトンが「ソクラテスの弁明」を書かなければ師の言動は歴史に残らなかっただろう。まさに持つべきは弟子であり、先達は後継者を育てることが肝要だと思われるのである。プラトンもアリストテレスという確たる弟子を育てている。後に弟子は師の論を否定するに至るのだが、それでも哲学史的に評価できるのである。そのプラトンだが、身体大きくたくましく、古代オリンピックにも出場したらしい。古代五輪は女人禁制だった。不正を防ぐ為、男どもは皆、すっぽんぽんで競技に臨んだというところが面白い。

 それでは、プラトンは〈イデア〉論から。彼は師ソクラテスの求めた〈本当のもの〉それを〈イデア〉と名付けた。例えば。〈面積のない,点という存在〉〈永遠にして完全なる美女〉〈色鉛筆でなく、絵の具の色でもなく、赤色そのもの〉など。それを、点のイデア、美女のイデア、赤のイデアとするなら、それはこの世には存在しないのだと彼は断定する。たかだか最高10,0くらいの視力で見つけられるわけがない。ではなぜホンモノを見たことがないのに、点らしい、とか、美女らしいとか思えるのかというと。この世に生まれる前、人はイデアの世界に暮らし、肉体の無い精神世界でホンモノに出会っていたから、この現実世界でホンモノらしきを認識するのだといった。転生論である。よって人は肉体をまとった不完全なこの現実世界で、完全なホンモノを求めざるを得ない、それを〈イデア〉論としてまとめたのである。次に彼の「哲人政治論」であるが、紙幅も尽きたので次回にしたい。なぜ、「真実を探そう」と世間に呼びかけた正義の師、ソクラテスは死なざるを得なかったのか、死なせない為にはどうあるべきだったかを次回の初めにして、アリストテレスに繋ぎますね。今回はこの辺で。ーー南九州新聞コラム一月掲載済み

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