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三丁目の夕日23

「三丁目の夕日」から題材をとった昭和30年代の追想記の再開である。戦後10年を経て、新憲法の下、国家という軛〈くびき〉から解放され、〈個人として〉国民が生活に勤しみ始めた時代と言える。


【柏餅】 お母さんは悩んでいた。秀男君の身長が5.6歳になってから伸びず、おまけに虚弱体質だったのである。大学病院で診察を受けた結果〈代謝異常による難病〉と診断され、食事療法以外の治療法はないと言われたばかりか十歳まで生き残れるかという症例が殆どだという残酷な宣告を受けたのだった。だが、お母さんが与えたのはバランスが取れた栄養食ではなく、秀男君の好きな物ばかりで極端な偏食だったのである。(どうせ短い命なら好きなように)させた結果、わがまま過ぎて友達もいない子供になっていた。ある日、病院で出会った知人から(うちのも病弱だったから甘やかしていたところ家で一番のワガママになってしまった)と愚痴を聞かされる。それは飼い猫の話だった。そこで秀男君への〈猫可愛がり〉を反省したお母さん、健康食に勤めて秀男君も医師が驚くほど栄養状態が回復した頃、米国で新治療薬が開発され、秀男君に治験の結果、難病を克服した上にわがままな性格までよくなり、中学入学式で息子の晴れ姿に涙する両親だった、というお話。

  筆者も身長は低く、いつもクラスで1.2番の低さだった。生後、母乳の出が悪くて山羊の乳で育ったのが理由とは思わないのだが。身長の低さから、高い人は羨ましかった。道子さんもその一人。大柄な彼女は面倒見がよく、人柄から頼られていたようだ。還暦同窓会でもその片鱗を見て、(変わらないな)と思わされた一人だった。東京の近郊で道子さんと同じ街に住むヨシ子さんはその同窓会で見事なフラダンスを披露してくれた。思わず(古稀同窓会では一緒にハワイアンを)と言ってしまったが、吾がギターもウクレレもスチールギターも押し入れで眠っている次第である。

【福の神】鮮魚店を営む魚清さんは紅白を聞きながら「今年も貧乏暇なしだった」と奥さんと話している。奥さん「成金だと皆が羨んでいた大蔵さんが破産し夜逃げしたそうよ」と話しているところに隣から泣き声が。いたのは貧乏神かと間違えそうな福の神だった。十年間同居していたが成績悪く〈失格〉となり、出て行かなければならなくなったと。そこへ代わりに現れたのが〈新・福の神〉。「任せなさい」と大見えを切るが、よく聞いてみると、大倉さんを始め、成りあがった金持ちは皆浪費癖がついて最後は破産するオチだと。そんな新・福の神より、元の〈無病息災〉を続けてくれた神の方がいいと、新神を追い出してしまう。話のラストは除夜の鐘に被せて「大金持ちにならなくともまじめに働く人間が報われて、細やかな幸せを守れる世であって欲しい」と結ばれている

 小生が還暦同窓会で会った二人。ヒロアキ君は高専を卒業した優秀な生徒だったが、自営業の経営者になっていて同窓会では全員にお店の名入りの記念品を呉れた。感謝! サダミ君は公務員の管理職を追えた後、引き抜かれての転職が決まっていたようだ。まじめで働き者をお天道様はしっかり見ているんだな、と思った次第。

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