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三丁目の夕日⑤


コミック「三丁目の夕日」から題材をとった追想記で時代は昭和30年代である。戦後10年を経て、新憲法下、国家という軛〈くびき〉から解放され、〈個人として〉国民が生活に勤しみ始めた時代と言える。【】はコミックのタイトルである。

【貯金箱】今週の目標〈ムダ使いをしないで貯金しよう〉と書かれた黒板の前で、先生が「みんなはおこづかいをどんなふうに貰っていますか」と質問すると「お手伝いをした時に貰ってます」とか「週に50円」とか「毎日10円」とかの答えが返ってくる。主人公の一平くんも母親に貯金箱を貰い、貯金をするようになるのだが、お手伝い料金表を定めてがめつく母親から徴収するようになる。が。ある時母親が小銭の支払いの為に自分の貯金箱からこっそり取り出しているのをみて激怒する。しかし、夜に、父と母が苦しい家計の話をしているのを盗み聞きしてしまい、「僕のを使ってよ」と貯金箱を差し出す優しい一平くん、の話しである。

筆者は決まったおこづかいを貰っていた記憶はない。が、たまには近くのお店屋さんに菓子を買いに行ってたので幾らかは貰っていたのだろうと思う。祭りと言えば最大は志布志のお釈迦祭りだったのだが、その為のお小遣いは茶摘みで賄っていた。学校から帰るとすぐに茶摘みに行き、バケツに入れた新茶を近くの茶工場に持って行くと目方を記録してくれたのが親戚の優しい武雄おじさんだった。貯めたお金で母の日はエプロンを毎年プレゼントにしていたのだから親孝行少年だったと言える〈年寄りになって誰もそう言ってくれないので、自分で誉めるしかないのです(笑)〉。

【算数】小学3年の陽介くんは暗記力はあるのに勉強は苦手で特に算数は不得意だった。授業参観日の時、割り算を答えるのに皆が手をあげてたので自分も手をあげ指名されて「解りません」と答え、観ていた母親は恥ずかしい思いをさせられている。母は成績優秀だったらしく、陽介君につきっきりで勉強を教えるのだが「時計」も「割り算」も全然理解できない。彼は「母さんは僕への期待を捨ててしまったのか」「このままでは嫌われてしまう」と思って猛勉強?して次のテストで65点を取ってくる。でも何かおかしい。難しい割り算はできているのに簡単なのが出来てないのだ。問い詰めると本の答えを丸暗記したからだという。「母さんに嫌われたくなかったからだ。勉強はできないけどお手伝いは懸命にするから見捨てないでね」という彼に、愛しさが募って思わず抱きしめる母親だったが。数日後にはまた0点のテストにガミガミというお話。

 筆者も算数は苦手だったが、加えて中学で始まった英語も苦手になってしまった。コツコツと積み重ねるという勉強習慣が無かったのである。返されたテストを見て成績の良かったキヨちゃんが目を丸くしたのに、いい点取ったのだろうなとため息は出るものの努力はせず、友達のミチユキ君が確か82点取った時、つい「反対にすればオレと同じ点じゃないか」とつぶやいたつもりが周りに聞こえて笑われた事がある。アルファベット嫌いはその時からで、今でもキーボードは日本語打ちである。父親とは逆に英語好きの娘は翻訳会社に勤めているのが皮肉である。ーー南九州新聞コラム掲載済み 

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