三丁目の夕日⑭
3丁目の夕日⑭ 戦争の爪痕 1300
「3丁目」は昭和30 年代を描いたコミックだが、主人公「一平」君の名に平和への願いが込められている事は最初に紹介しました。さて今回で「戦争の爪痕」連載は終了となり、次回から「追想」シリーズ復活予定です。
【円タクと飛行帽】。『円タクとは1円内の料金で流したタクシー。神風タクシーー低賃金使用のために流しの回転をあげたが無謀運転がちだったので命知らずの意味からこの名がつけられたそうな。個人タクシーが認められ、また東京五輪で交通規制が強化された為に姿を消した』
主人公の草葉氏は特攻の生き残りである。多くの戦友を見送り、親友の上条氏と一緒に出陣したが、親友は死に自分は飛行機の故障で生き残ってしまったという負い目がある。戦後にタクシー運転手となったが、目標も無くいつ死んでもいいと無謀運転をするは、酒とバクチに身を崩して独り暮らしを続けていた。が、誠実に続けていた事が一つ。戦友上条の未亡人と子供に金銭の援助をしていた事である。だが事故を起こして危篤となる。退院の日、迎えに来た上条親子を前に「俺は今度の事故で死んだ。生き返ったつもりでやり直そう」と決意する。そして間もなく奥さんと結婚し、その後、安全運転を続けるようになった、というお話。
【湘南電車】高村さんは六年間毎週、湘南電車で奥さんの療養所に見舞いに行っていた。結婚したのは昭和18年。だがすぐに兵隊へ。終戦で帰国して幸せな生活を送っていた。が、間もなく奥さんが肺炎を発病する、戦時中の労苦からだった。肺炎に効くとされた新薬ストレプトマイシンの闇価格は昭和二十三年時、一g一万円の超高価格だった、公務員の基本給が三千円に満たない頃である。「どんな事をしても助けて下さい」と必死で金を工面し、新薬で奥さんは快方へ。しかし退院の一年前から奥さんは高村さんの変化に気づいていた。痩せていた顔の色つやが良くなり、身なりも小綺麗になっていた事に。退院して空気のいいサナトリウムから湘南電車で帰宅する時、「実は秘密があった」と言われて奥さんは覚悟を決める「もしや新たな女性の話では。でも仕方がない」と思ったのだが「薬の為に大きな家を売った。二人で生活する為に洗濯や料理などお隣さん達に習っていたんだ」と打ち明けられ、涙ぐんで「私、元気になるからね」と決意するお話。
【わたしの青空】。戦争中には物資不足から禁止されていたブリキのおもちゃ、中でも「戦争物」が売れて淀橋おもちゃは発展していた。一方、ライバルの土井おもちゃの社長の信条は「終戦の日、焼け跡に立って見上げた青空が原点だ、将来の世界を背負う子供達に夢のある良いおもちゃを与えるのが転職だと思っている、おもちゃは平和の象徴だからね」と語る彼は、爆撃で一人息子を失っていた。見舞いの病室でその言葉を聞いた淀橋会社社員青島さんはその後、プラスチックおもちゃで大会社に成長した社長になった。社長室には土井さんの最後の作品、料理する猫のおもちゃが置いてある。尋ねる社員に「これが僕の青空なんだ」と答えるのだった。
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