ムーア「世界侵略りすすめ」2
ノルウェーの〈刑務所〉の話
である。筆者が一番驚いたのがここだった。受刑者は解放された土地で一軒の家に住む。鍵は本人のみが持ち、看守と言えど自由な出入りは出来ない。生活の為に包丁などの所持も規制はない。死刑はなく、懲役刑の最高は21年。それでいて再犯率は世界最低である。殺人事件の発生率も世界最低だという。殺害された遺族がインタビューで「死刑は望まない。更生の機会を与えるべし」というのが印象的だった。世界193国中、死刑を事実上廃止した国は143国で、OECD先進加盟国36国中、死刑制度を残しているのは日米のみである。〈韓国は凍結・停止中〉。ノルウェーでは犯罪を犯した人は、どこかで教育を間違えてしまったと考えられ、原因は社会全体にあるとする。だからこそ社会の中でもう一度最初から教育をやり直す、という考え方が根底にあるようだ。
後は簡単に紹介する。イスラム圏で民主化の進んだチュニジアは中絶費用が無料で、スカーフをするかどうかは自由となっている。つて三大銀行の倒産があった際も、唯一の黒字銀行は女性が経営者だった。そして国も男性を優遇する事はなく、銀行倒産時も原因となった男性銀行家たちは法により裁かれた。女性CEO〈経営の統括責任者〉も他国に比べると群を抜いて多く、アイスランドの女性CEOはアメリカへの印象をこう答えている「隣人愛が足りず、自分さえ助かればいいと思っている」と。そこには女性経営者たちの誇りに満ちた顔と、同胞をいつくしむ態度があり、加えて「アメリカは、同じ国民の中でここまで富の格差が起きていて、同胞の仲間が苦しんでいるのを見て、なぜなんとも思わないのか」、と言う。女性らしい視点と言ったら怒られるか?
後は簡単に紹介する。イスラム圏で民主化の進んだチュニジアは中絶費用が無料で、スカーフをするかどうかは自由となっている。
ポルトガルは〈ドラッグ、麻薬〉を合法化した。依存症になるか否かは自己責任の問題としたのである。オープンにしたら逆にドラッグ使用者は減ったという。〈ドラッグとは異なるが、筆者はギャンブル依存症増大の危険性からカジノ誘致策には反対である、いつか稿を改めて述べたい〉。
ここまでで〈医療・福祉〉のモデル国が登場していないという事に気付く。ムーアのメガネに叶う国が無かったのか、制約時間の中の映像だったからか。最後のまとめは意表をつく。これらのモデル国の原型は米国本国にあるじゃないかと。かつて、大学は無償だったし、フィンランド教育法も発祥は米国だ。労働者の権利を訴えたメーデーもシカゴで始まったし、8間労働制もそう。男女同権運動も米国発祥だし、英語圏で死刑廃止を最初に始めたのも米国なのだ。なんだ、アイデア侵略に行く必要はなかった。必要な物はアメリカ国内にあったのだ、と締めくくる。原点に立ち返れ、という指摘か。
筆者の結論は、限られた税収をどこに重点的に配分するかで国民の幸福度は異なるという事です。真に緊急必要なものに税は向けられているのか、納税者として監視すべしと思いましたね。「十万円が必要な人は手をあげて貰おう」なんて高飛車な財務相発言はもっての外です。ーー南九州新聞コラム掲載済み
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