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「記憶に」「空母いぶき」

〇「記憶にございません」。国会で野党議員から「金銭授受はあったんですか、総理」と訊かれて「だからうるせえんだよ、記憶にございません」と開き直った総理の言からタイトルが付けられている。政権支持率は史上最低の2%で、街の警官からも「総理、あんたは約束なんか守った事なんかねえじゃないか」と罵声を浴びる始末。その警官と遇ったのは、彼が入院させられていた病院を訳の分からないままに遁走したからで、総理は演説中に当てられた石で〈記憶喪失〉に陥っていたのである。つまり自分の事が誰で、何をする仕事なのかも含めて。彼が完全記憶喪失状態にある事を理解したのは三名の秘書のみで極秘扱いとなる。記憶喪失によって人間関係のしがらみを断ち切れた総理は変身し、理想の政治に向かって真摯に邁進していくという展開。三谷幸喜監督。三谷作品は幾つも見ているが、本作も観客へのサービス精神に溢れ、飽きさせない。〈以下蛇足〉斉藤由貴さんはスケバン刑事から転職して、マイペースの官邸料理人となっていた(笑)。

〇「空母いぶき」。原作者のかわぐちかいじ氏の戦記漫画「沈黙の艦隊」「ジパング」を筆者は全巻を持っている。石破氏みたいな軍事オタクという訳ではない、逆の平和運動家だと思っている自分だが、内容に魅かれたので全巻揃えている次第。そんな訳で原作者に関心が有ったので視聴となった。なお「空母」については現在、「他国への航空兵力の展開が可能になる空母を保有する事は、日本国憲法専守防衛と戦力の不保持の原則に背く」という政府の憲法解釈により、海自固定翼機を運用する正規空母を保有していない事になっている。2014年7月国会で、小野寺五典防衛大臣は「自衛隊としまして、従来から、性能上専ら相手国の国土の壊滅的な破壊の為のみに用いられるいわゆる攻撃的兵器を保有する事は、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなります。例えば、大陸間弾道ミサイルICBMや長距離戦略爆撃機、攻撃型空母などの保有はいかなる場合も許されないと考えておりますので、このような考え方も一切変更はございません」と、従来の政府答弁を継承した答弁をしている。よってF35搭載可能艦でも空母と呼ばず、護衛艦と呼んでいる現状である。

 さて紹介は冒頭のみとする。20XY年中国軍が突如、先島諸島与那国島)と尖閣諸島を制圧した事から,史上初の防衛出動命令が出され、「いぶき」を母艦とする艦隊が、中国軍との武力衝突必死の覚悟で現場に向かう。国連に現況を報告した政府は、同盟国米国に支援要請を行う。米政府からの返答は「躊躇なく即自に支援軍を送る」でなく、「軍派遣の為の議会承認を即刻得る」でもなく、「くれぐれも自制的行動をされたし」だった。たまたま同艦に乗り合わせていた記者の発信により、日中の戦闘状態を国内外が知る。それが世界中に戦闘抑止、平和希求の世論喚起となる。ベトナム戦争時にマスコミ取材を自由にさせた負の教訓から今は戦争取材には厳しい規制がなされるようになったときくが、真実はいかに。〈以下蛇足〉、記憶喪失から回復した元総理役の中井貴一氏は、政治に吾関せずとコンビニ店長役をこなしていた(笑)。

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