官邸記者クラブの実態
安倍晋三首相の記者会見の在り方に疑問の声が広がっている。
毎回20分以上の冒頭発言や官邸による質問の事前聴取、官邸記者クラブ非加盟の記者に対する参加規制などがあって、さらに新型コロナウイルス感染拡大の緊急事態宣言後は「3密の回避」を理由に既存メディアも1社1人に絞られ、フリーの記者も抽選になっている。
メディア研究者やフリーのジャーナリストからは「会見本来の活発な質疑を抑え込み、説明責任を果たす場になっていない」という批判があがる。官邸の姿勢を容認しているとして記者クラブの責任を問う声もある。
18日の記者会見。安倍首相が会見場に入室する直前、男性が演台に駆け寄り紙の束を置いて立ち去った。安倍首相のスピーチライターとされる秘書官だ。置いたのは官邸が事前に一部記者から聴取した質問と想定問答集とみられる。同じ光景が毎回の記者会見で見られる。
第2次安倍政権の首相会見は(1)首相発言(2)内閣記者会の幹事社が代表質問(3)その他の社の質問、の順に進む。
(1)で首相はプロンプターという透明な板に映し出される原稿を読む。官邸報道室は(3)についても記者会の一部加盟社に内容を聞き取り、想定問答を用意する。司会の長谷川栄一内閣広報官が指名するほとんどは聞き取りを受けた記者たち。長谷川氏は「質問は1社1問で」とアナウンスして会見を始める。
こうした仕組みについて、会見に度々参加するフリージャーナリストの江川紹子さんは「質問を重ねて追及するなら事前通告も意味があるが、現状はなれ合いだ」と指摘。外国通信社の記者経験があるジャーナリストの神保哲生さんも「当局の質問制限も問題だが、記者側も異論を唱えず首相に言いっ放しを許している」と話す。
首相記者会見を取材できる記者が1社1人に限られていることについて、京都新聞社は「質問の多様性が失われ、改善が必要」と官邸記者クラブ幹事社に指摘し、同クラブは18日、首相官邸に改善を口頭で要請した。
京都新聞22日より転載
橋ーー御用記者クラブ