頑張れ!稲田
周知のように、賭け麻雀を報じられた東京高検・黒川弘務検事長が辞職することになった。しかし、驚いたのは森雅子法相が発表した処分だ。賭け麻雀は賭博法違反という立派な犯罪なのだから懲戒免職になったっておかしくはない。それが、減給や戒告ですらない、訓告、つまりただの注意で終わらせてしまったのだ。
この甘すぎる処分には国民から批判の声が殺到しているが、安倍政権がとんでもないのはこれだけではない。首相官邸はなんと、黒川氏の賭け麻雀問題を逆に利用して、自分たちにとって“目の上のたんこぶ”である稲田伸夫検事総長の排除と、河井克行・前法相の捜査潰しに動き始めたのだ。
実際、毎日新聞がきょう昼前に配信したウェブ版の記事でこう打っている。
〈法務省は首相官邸と調整を進めているが、官邸は混乱の責任を取る形で稲田伸夫検事総長の辞職も求めているとみられる。〉 〈法務省は、黒川氏の辞職を前提に、後任人事も含めて官邸と調整を進めている。検事総長、次長検事、検事長の任命権は内閣にあるが、首相官邸は、稲田検事総長の監督責任を問題視しているという。検事総長の引責辞任は極めて異例で、調整が難航する可能性もある。〉
毎日だけではない。共同通信も、政権の動きを伝える記事のなかで〈稲田伸夫検事総長の監督責任も今後焦点となる〉と報じた。さらに、日本経済新聞も〈政府高官は21日、稲田伸夫検事総長の監督責任について「調査結果次第だ」と言及した〉と伝えている。
「森法相の会見では稲田氏の進退問題は出ていないと言っていたが、これは何も聞かされていないだけ。実際には菅義偉官房長官と杉田和博官房副長官が法務省に、『稲田の監督責任はどうなるのか』と揺さぶりをかけている」(官邸担当記者)
実際、これを裏付けるように、“官邸の代理人”である田崎史郎氏もきょう放送の『ひるおび!』(TBS)で、稲田検事総長の責任問題にこう言及した。
「黒川さんを指揮監督する立場にあるのは最高検なんですよ」「だから僕は今回の後始末どうするのかってことも含めて、やっぱ最高検の検事総長がどうするかってことが厳しく問われなければいけないと思います」
よくもまあ、こんなむちゃくちゃな話のスリカエを口にできるものだ。検察トップをかばうつもりはないが、この件については稲田検事総長には何の責任もない。それどころか、稲田検事総長は黒川氏が法務省事務次官や東京高検検事長に就任する際も反対しており、昨年末、官邸が黒川氏を検事総長に据えようとしたときも、総長勇退を拒否して、その動きを阻んできた。にもかかわらず、官邸が黒川氏について「組織に引き続き必要な人材」だと言い張り、これまでの法解釈を変更して黒川氏の定年年長を閣議決定。違法な形で2月以降も検察の職にとどまらせたのだ。
そういう意味では、引責辞任しなければならないのは、定年延長を決定した森法相であり、安倍首相なのだ。それを黒川重用に反対していた検事総長に監督責任を押し付けるとは……。
しかし、安倍政権がこんなむちゃくちゃな理屈でなりふりかまわず稲田検事総長を辞めさせようとしているのは、理由がある。それは河井克行・前法相の逮捕をなんとしてでも潰したいからだ。
周知のように、広島地検はこの間、河井前法相を公選法違反の買収容疑で着々と捜査を進め、「逮捕許諾請求をして国会会期中に逮捕する方針を固めた」とも伝えられる。実はこの広島地検が強気であることの背景にあるといわれていたのが、検察トップの稲田検事総長の後押しだった。
「捜査を潰そうとする黒川氏に対して、稲田氏が『立件にたる証拠があるのなら遠慮することはない』と広島地検の動きを守ったため、捜査は潰れなかった。官邸にとって稲田氏はまさに目の上のタンコブだったわけだ。だから、早く稲田氏を引退させて、黒川氏を検事総長に据えようと必死になっていたんだが “番犬”の黒川氏が国民の批判と賭け麻雀問題で沈没。だったら、河井捜査の後ろ盾になっている稲田氏も一緒に辞めさせられないか、と考えたんだろう。それに、実際に稲田検事総長を辞めさせることは無理でも、“監督責任”というプレッシャーをかければ、稲田氏が裏取引に応じて、逮捕許諾請求はせず在宅起訴くらいになるかもしれないという計算もあるはず」(検察関係者)
明日から安倍応援団や御用メディアは一斉に稲田検事総長の監督責任を喚き立てるだろう。だが、こんな詐術に騙されてはならない。黒川検事長と定年延長をめぐる責任は、自分たちの不正を握りつぶすために腐敗官僚を検察幹部に引き立てた安倍首相にあるのだ。ーーリテラ21日より転載
橋ーー稲田氏は堂々と定年日まで職務を続けよ👏