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みよちゃん⑦

  • 執筆者の写真: 雄幸 土橋
    雄幸 土橋
  • 2020年4月19日
  • 読了時間: 2分

「妻が先に逝く事は二人で決めていた事なんだよ」。

中間生にいる人物として男が語り続ける

「なぜ、今の時期だったかは己(おのれ)で答えを探すのだ」。

「貴方が残った事、今の時期だったという事のどちらにも意味がある、という訳ですね」「そう」

「それが現生での必然の取り決めだったという事は解りました。それでも、妻が生存している別の多次元世界を見たいとの強い希望も有るのですが、見せて貰えますかね」

「いいだろう」。

「では、三年先の未来です。元気な奥様が傍(そば)にいますよ。何をしています」「喧嘩している」と中間生から現生に移った男が語った。

「喧嘩ですか。何で? 訳を聞かせて貰えますか」

「そばですよ」「そばとは?」

「蕎麦屋をやっているんですよ。小さな店ですがね」「それで?」

「ここまで来るには二人で色々研究を積み重ねてきたんですよ。で、最後は二八蕎麦で行くと決め、おかげで毎日限定四十食は完売しているのですがね」「二八とは」

「小麦粉とそば粉の割合です。見た目、のど越し、味から二八に決めたのです。自信をもってこれで提供していたんです。ところが評判聞いて来られたお客さんの中に、十割(とわり)蕎麦はないのかと注文される方が時たまいまして。それで家内が十割も作ろうかと言い出すものだから。冗談じゃない、十割り用の汁まで別に作れるかと言い合いになったところです」

「そうですか。羨ましい。一日中顔を突き合わせてケンカまでできるなんて、独り者からすれば羨望の極みですよ。でも、気をつけた方がいい」「何を」「蕎麦食う客はいても、犬すら食わないと言うのが夫婦喧嘩と言いますからね」

男にもみよちゃんにも笑顔は浮かばず、展開を変える。

 
 
 

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