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みよちゃん④ーー実存ヒプノ十二


「何でしょう」「連続してやると言う事でしたが」「そうです、課題を担った場合とそうでなかった場合の近未来です」「明日にしていただけませんでしょうか」 。

 明日という希望は、現生の本人の意思で無く、中間生からの意思である。理由を聞かず承諾した。中間生とは魂の存在であり、永遠に転生していく自我そのものである。簡単に言うと、〈神に繋がる自我〉だとるいえる。故に、「明日が希望」は、理由を聞かずとも受け入れたのである。

 翌日。実存ヒプノである。希望の三年後へ導く。

「課題を引き受けた場合です。何をしています」。

「コーヒーを飲んでいるよ」

「誰かと一緒ですか」「一人だ」

「誰もいないの」「そう。四人目の女と暮らしていたのよ。離婚の成立を待たずにな。だが、三月も経たずして金と一緒に女にトンずらされちまった。で、家事が面倒でよ、紙皿に紙コップの使い捨て生活なんだが、コーヒーが不味(まず)くて仕方ないと来てる。大体、コーヒーというものはだな」

「解りました。では引き受けなかった場合です。何をしてます?」

「サンルームにいる」

「自宅ですか」「そう」

「四人目の人とは結婚しなかったの?」「したんだ。でもひと月で逃げられた」

「ひと月で?」「そう。で、家に戻ったのよ。形だけは元のサヤに収まったみたいだが、嫁の怒りは収まっちゃいないんだ。どうやったら許して貰えるかを考えている最中さ」

「考えつきましたか」「まだだ。それにしてもコーヒーがうまい」

「コーヒーですか」

「そう。俺にはささやかながら決まり(ルーティン)があるんだな。朝一には必ず少量のミルクを入れる。二杯目からはブラックだ。休日には十杯近く飲むが、天気と気分によって色々変えるのが好みなんだ。キリマン、ブルマン、ジニスにハックルベリなど、な。それに最近、新種が加わったのさ。菊芋コーヒーというヤツだ。今、飲んでいるのがそれよ」

「という事は嫁さんが淹(い)れてくれた?」「そう」

「美味(うま)いですか」「決まってるだろ」

 覚醒後、男に告げる。

「どちらも、四人目の女性と一度は一緒になってましたよね。でもそれが運命として決まっている訳じゃないのです。どうするかは貴方の選択です。自由な選択が未来を創る、実存ヒプノの眼目はそこにあります。終わります」。ーー続く

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