コロナ対応に思う
七日夜、総理の緊急事態宣言発令に伴う記者会見をみた。一言で言うと解りづらいものだった。30万円の現金給付の線引き、中小・個人企業への給付時期、営業制限に対する補償など。東京都知事会見も連続でみたが東京都も宣言解釈が十分なされているとは思えなかった。不鮮明な部分が多かったからだ。質疑には多くの記者から質問の挙手がなされていたものの、途中打ち切りとなってしまった。首相動静を見る限り、後に公務は無く、他一局の報道番組に出演したあと帰宅しているが、国民の生命や安全そして人権制限に伴う重大決定に対し、もっと時間を割いて、多くの疑問に丁寧に答えてほしいと思った。
コロナ対策に対しては専門家の間でも意見が分かれているようである。中で筆者がかねて信頼しているのはノーベル賞の山中伸弥医師の発言である。「感染症の専門ではない」と断った上、氏は五つの提言をしている。紙幅が無いので簡潔に紹介する ①行政は強力な対応を ②感染者の症状に応じた受関係者を感染と過重労働から守りつつ、重症者、重篤者に対する医療体制の充実。病床と設備機器、人員の確保が不十分だと感染爆発に耐えられず医療崩壊が起きる。③検査体制の強化。〈以下は筆者文〉外国に比べ、わが国の検査個数が極めて低い事は知られている。コロナ感染者40万、死者1万となった米国だが、去る3日在日米大使館は在日米人へ「直ちに帰国準備をせよ」という緊急連絡を出した。「広範な検査はしない」とする日本政府に不信を持ったからとされる。隣の韓国で実施の、ドライブスルー方式などもっと広範な検査をと、氏は提言している。④国民への協力要請と適切な補償 ⑤ワクチンと治療薬の開発に集中投資を が五つの提言である。簡潔にした為に要を得ない箇所は氏のブログで直接ご覧いただきたい。
IPS細胞で著名人となった山中氏だが昨年も話題を呼んだ。年末の週刊誌がスクープしたのは、山中研究補助金削減を通達にきた首相補佐官と厚労省審議官が「不倫旅行」で出張し、研究所に立ち寄ったというものだった。呆れてしまった。
「研究所職員の9割が非正規です」と研究費不足を嘆く山中発言を目にした事があるが、厚労省の〈貧困〉行政は他にも見れる。保健所の数は30年前の852に比べ472カ所と半減され、感染症病床は96年時の9716床が昨年時で1758床と18%まで削減されているのだ。感染症指定医療機関数も一種、二種とも覚束ない上に、昨年は公立病院の30%に当たる424病院を名指しで統廃合・縮小の対象として発表したのは記憶に新しい。このうち48病院が二種指定医療機関で700の感染症病床がある。何より行政は「国民の安全を守る」を第一義にせよと声を大にしたい。
〈改革知事〉として大阪府知事をした橋本氏が最近、「徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。見直しを」と反省を言う一方、総理に「コロナ初期対応の誤りを謝罪せよ」と発言しているのは皮肉である。 最後に。曖昧な根拠での安易な人権制限は憲法違反である、と指摘する憲法学者の声が少なくない事も付記しておきたい。ーー9日南九新聞コラム掲載