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アッパレ!「笑点」の円楽師匠


政権忖度が横行するテレビ界にあって、政治風刺ネタに踏み込むことで知られる『笑点』(日本テレビ)。一昨年には、安倍応援団から一斉に攻撃を受け、大炎上したが、当人たちはまったく怯んでいないらしい。

 年明け、1月26日放送回でも、三遊亭円楽がどストレートな安倍政権批判ネタを披露したのだ。しかも、2連発だった。

 最初に飛び出したのは、大喜利の定番、即興で3行詩をつくるお題でのこと。このお題は、回答者が、「1」「2」「3」の数字を文頭に置いたフレーズを答えるというものだったが、いの一番に手をあげた円楽は、まず「我々の代表であります、政治家の皆さんにお聞きしたいと思うんですが」とネタふり。春風亭昇太が「なんですか?」と問いかけると、円楽は逆にこう問い返したのだ。

「1.いまの 2.日本は本当に 3.民主主義国家ですか?」

 大喜利ネタにはそぐわない、この国の政治、言論状況に対する本質的な批判。しょっぱなからこんな重い回答が飛び出したことで、観客は面食らって、凍りついたように静まり返った。

 しかし、笑点のメンバーたちはまったく気にしない。春風亭昇太は「いま、(座布団を)よこせっていう目を、すごい強烈にされたので」と茶化しながらも、円楽に座布団一枚。

 そして、円楽は2つ目のお題でも、政権批判ネタの追い討ちをかけた。今度は、回答者が行列に並んでいる人に扮するお題。春風亭昇太が「長い行列ですね~」とネタ振りをするので、それに合わせて回答するものだったが、ここでも1番最初に手をあげた三遊亭円楽は、こんな答えを披露した。

昇太「長い行列ですね~」 円楽「えぇ、これシュレッダーの順番待ちなんですよ」

 もちろん、これは安倍政権による「桜を見る会」の名簿破棄を茶化したもの。この回答には観客からも笑いが起きて、円楽は気持ちよく座布団をもらっていた。

 ただ、今回、注目したいのは、まったく笑いが起きなかった最初の「1.いまの 2.日本は本当に 3.民主主義国家ですか?」という回答のほうだ。しょっちゅう政治風刺を披露している円楽だが、さすがに『笑点』でここまで重いメッセージを発するのはめずらしい。しかも、「3」を「さん」ではなくわざわざ「み」と読ませてまでこのネタを口にした裏には、やはり相当な危機感があるのではないか。

「桜を見る会」問題を見ても明らかなように、今の日本では、安倍政権がどんな不正や税金私物化をしても、政府ぐるみで改ざんし、隠蔽し、それがほとんど批判もされずにまかり通るという体制ができあがってしまった。もはや安倍政権の横暴というレベルでなく、日本という国の民主主義が崩壊しつつあることを円楽は訴えたかったのだろう。

過去には円楽、林家たい平、林家木久扇が安倍政権をからかいネタで炎上

 また、その背景には、前述した一昨年の『笑点』の炎上というのもあるのかもしれない。これは2018年5月27日放送で、三遊亭円楽、林家たい平、林家木久扇が立て続けに安倍首相を風刺する回答をしたことがきっかけだった。

 春風亭昇太から「人はうるさいと耳をふさいだりなんかしますよね。そこで皆さん、今回耳をふさいでください。で、一言言ってください。私が『どうしたの?』って聞きますから答えてください」とお題が出されると、まず、三遊亭円楽が声色を安倍首相に似せながらこう答える。

「安倍晋三です」 「どうしたの?」 「トランプ氏から国民の声は聞かなくていいと言われました」

 続いて、手を上げたのは林家たい平。たい平もまたモノマネを交えながら回答した。

「麻生太郎です」 「どうしたの?」 「やかましいぃ〜」

 政権批判ネタ三部作のトリを飾ったのは林家木久扇。木久扇はこのように答えた。

「うるせーなー」 「どうしたの?」 「沖縄から米軍基地がなくなるのはいつなんだろうねぇ」

 安倍政権への痛烈な風刺三連発。そして、回答した三人は連続で座布団一枚を獲得した。

 しかし、これが放送されるやいなや、ツイッターを中心にネトウヨや安倍応援団から一斉に非難が手中し、『笑点』は大炎上。ネット上には〈河原乞食が飢えもせず生きていけるのは資本主義社会の賜物なのにな 馬鹿だと思うわ〉〈笑いまで政治的偏向するようになってしまったのかと思う。最近「笑点」を見なくなった理由の一つでもある〉といった罵倒が次々と投稿された。

安倍政権擁護のお笑い芸人が跋扈するなかで『笑点』が存在することの意義

 落語や笑いというのはもともと、民衆が権力を茶化し、笑い飛ばすというのが本分だったはずだ。実際、以前のお笑い番組には、政治家や政府を揶揄するようなギャグ、風刺などが普通に盛り込まれていた。それが、この程度の政治風刺で「偏向」などと攻撃されて炎上する状況になってしまったのだ。

 この状況はもちろん、安倍政権と安倍応援団の圧力がもたらしたものだ。第2次安倍政権以降、政権批判報道だけでなく、バラエティからも政治風刺がどんどん少なくなり、政権批判をするようなタレント・芸人は「芸人風情が政治を語るな」「偏向タレントを出演させるな」という攻撃を受けて、テレビから干されるようになってしまった。

 そして、逆に安倍政権を擁護するお笑い芸人が跋扈し、情報番組のMC やコメンテーターにやたら起用されるようになった。落語界からも、野党批判を連発し安倍政権をアシストすることで有名な立川志らくがワイドショーのMCに抜擢された。

円楽のネタはこうしたメディア状況、言論状況への危機感表明でもあったのではないか。

 今回も『笑点』や円楽には、「落語家のくせにえらそうに政治を語るな」「面白くもなんともない、笑えないネタをやるな」などという非難が浴びせられるかもしれない。

 たしかに、今回の円楽の「日本は本当に民主主義国家ですか?」という問いかけは笑えない。しかし、いま、テレビのお笑い番組でこの「笑えない」言葉を発することには、想像以上に大きな意味があるはずだ。

    --リテラ2日より転載 (本田コッペ)

橋ーー論に賛同します。頑張れ!気骨の芸人たち!

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