ジブチ・自衛隊
自衛隊の中東派兵は、ジブチ基地を維持するためのリストラ対策だ!――自衛隊版「ジブチ慰安所」をいつまで維持するのか?
「戦力回復日」という特別休暇で利用される「自衛隊の慰安所」 自衛隊の初めての海外駐留基地である、ジブチ基地が開設されてからおよそ10年。――この日本から遠く離れた自衛隊ジブチ基地の実態が、メディアなどで報道されることはほとんどない。 陸海の自衛隊員約400人が駐留するこの基地は、ジブチ国際空港の北西地区にあり、同空港地区には、米仏軍の基地も置かれている。 この駐留軍の位置する場所から、北へ10数キロ行ったジブチ市内の最大のリゾート地には、ジブチでもっとも高級と言われるドイツ系の「パレス・ケンピンスキー」というホテルがある。一泊4万~20万円というこのホテルには、プライベートビーチが2つあるほか、カジノまで据えつけられている。 この超高級ホテルこそ、関係者にはよく知られている、自衛隊員の「慰安所」である。言うまでもなく、ここでは、買売春が公然と行われており、派兵部隊の幹部連ばかりだけでなく、一般隊員も利用する「慰安所」だ(事情通の証言)。 隊員たちには、月に一度「特別休暇」が与えられ、このホテルを利用する日を、駐留部隊の隊員の間では「戦力回復日」と呼んでいる。 問題は、この自衛隊版「慰安所」が、10年もの間、防衛省・自衛隊内で何ら問題にされることなく「運営」されていることだ。この背景にあるのは、隊員の間で昔から知られている、海外演習部隊の「慰安所」の公認である。 知られているように、例えば陸空のミサイル部隊は、毎年交代でアメリカ本土でのミサイル実弾演習に出かける。国内では射程の長いミサイル演習場がないからだが、このアメリカの演習で隊内で上司から密かにいわれるのが、「病気をうつされないようにスキンを持って行け!」ということだ(例えば『逃げたい やめたい自衛隊』根津進司著・社会批評社刊「海外演習にはスキン必携」)。 もちろん、これらの事実は、旧日本軍の「軍隊慰安所」の隠蔽と同様、自衛隊内でも隠されている。しかし、関係する隊員らが海外演習の実態を全て周知のように、このジブチ基地の「慰安所」問題も、世間に知られていくことは時間の問題である。 大事なのは、旧日本軍と同じで、自衛隊が海外出動していくときに、この「慰安所」を必ず「設置」しようとすることだ。これは旧日本軍とまったく同様、自衛隊首脳は「病気対策」で行おうとしているようだが、問題はこのような旧日本軍体質の根本的な改革ではないのか。旧日本軍の性暴力問題を検証するどころか、隠蔽してきた政府・自衛隊の根本的体質がここには現れているというべきである。 リストラ対策に他ならない自衛隊の中東派兵 さて、この自衛隊のジブチ基地を拠点に、今年早々、海自を軸に航空・艦艇部隊が、中東ペルシャ湾周辺へ派兵されようとしている。 ところが、メディアで語られているのは、この派兵が「調査・研究」という名の脱法行為だ、という批判だけである。もちろん、この防衛省・自衛隊のトンデモナイ「脱法行為」を許容するわけにはいかない。 だが問題は、これら自衛隊の中東派兵が、もはや、何の意義もなくなった自衛隊ジブチ基地を維持する、「リストラ対策」であることがまったく隠されていることだ。 別表を見てほしい。2009年の海賊対処法成立以来、自衛隊が行ってきた「海賊対処行動」は、今やほとんどなくなったに等しい。2011年に237件行われたそれは、2015年にゼロ件になり、2019年もゼロ件を記録している(アデン湾、ソマリア沖も同様に圧倒的減少)。 (2019年3月「ソマリア沖・アデン湾における海賊対処に関する関係省庁連絡会」)
つまり、もはや、自衛隊がジブチ基地を維持する必要性が、全くなくなったということだ。 この存在価値を完全に喪失したジブチ基地を維持するために、まさしく「リストラ対策」として、新たなジブチ基地を拠点とした中東派兵が決定された、ということである(筆者は、例えば、東京新聞・半田滋氏の「自衛隊の南西シフトは陸自のリストラ対策」という主張に真っ向から反論している。というのは、この論は、日米の対中抑止戦略下の、先島―南西諸島への自衛隊配備という大軍拡競争を徹底的に軽視し、この南西シフト態勢を許容している論に他ならないからだ)。 言い換えると、自衛隊の中東派兵は、「アメリカの要請」という形式をとりながら、あくまで政府・自衛隊が、初めての海外駐留基地であるジブチ基地を固持するための詭弁であると言わねばならない。もちろん、この自衛隊の中東派兵が、「世界の火薬庫」になりつつある中東危機に軍事的に介入する危険な行動であることを批判しなければならない。 安倍政権のインド太平洋戦略―砲艦外交・軍事外交政策を阻もう! もともと、戦後日本初の海外駐留基地であるジブチ基地は、海賊対策に名を借りた、日本の軍事外交政策の一環であった。海賊対策も、「シーレーン防衛論」も、インド太平洋戦略の口実に他ならない。 今や、日本はアメリカとともに、インド太平洋戦略下で、アジア太平洋ばかりでなく、インド洋まで自衛隊に遊弋させている。この間のインド軍との共同演習もこの一環だ。そして、自衛隊は、オーストラリアを始めとして、インド、フランス、イギリス軍などとの、アジア太平洋ーインド洋にわたる共同演習を頻繁に繰り返している(日米ACSAに加え、ここ数年に日豪・日英・日仏・日加ACSAを締結)。 始まっている事態は、日米の対中抑止戦略下の南西シフト態勢を突破口に、日米、とりわけ自衛隊が、東シナ海から南シナ海、そしてインド洋にまで軍事行動を広げている、軍事外交政策(砲艦外交)をとっているということだ。この日本の軍事外交政策は、繰り返すが、対中戦略を突破口に、グローバルな戦略として広がっているのである。 自衛隊の中東派兵を阻止し、ジブチ基地を撤去せよ! この自衛隊のジブチ基地の設置が、初めから重大な問題を孕んでいることは、筆者もたびたび指摘してきた。この問題とは、日本政府が、ジブチ共和国との間で結んでいる地位協定が、日米地位協定よりも遥かに酷い差別的協定、植民地協定だということだ。 知られているように、日米地位協定が、米兵の公務中の犯罪ー刑事裁判権を排除している(日本の)ことなどが、沖縄を始めとして頻繁に問題になっている。ところが、日本ージブチ地位協定では、公務中も非公務中も、全ての刑事・民事裁判権がジブチ政府は排除され、日本の一方的な司法権が行使されることになっている。つまり、自衛隊員がジブチ基地内外で、人を殺傷しようがジブチ政府には何らの裁判権もない、ということだ。 まさしく、自衛隊は、ジブチで「治外法権」を行使していると言うべきである! 「ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府とジブチ共和国政府との間の交換公文について」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pirate/djibouti.html 自衛隊の南西シフト態勢を突破口とする、海外派兵―軍事外交を阻もう! この自衛隊の中東派兵は、繰り返すが、自衛隊の東シナ海・南シナ海への行動の拡大の中で生じている事態である。自衛隊は、日米の対中抑止戦略―インド太平洋戦略下で、今や、アジア太平洋からインド洋にまで軍拡を広げようとしているのだ。この東シナ海を軸としたアジア太平洋での軍拡・覇権闘争という水路を抜きに、問題を見誤ってはならない。そうでない限り「本当の危機」を見失ってしまうのである
---小西誠氏記より26日 *ジブチ・メモ ジブチ共和国の人口は、約90万人。同国の失業率は、約60%(2014年)。一人あたりのGNIは2180ドル。 *ジブチ基地の自衛官 水上部隊は、3カ月交替。航空部隊は4カ月交替。派兵隊員は1日2千円の「特殊勤務手当」のほか、護衛艦乗組員は俸給の33%の乗務手当のほか、航海手当等が加算される。航空機乗員は1日7700円の航空機手当等が加算される。
橋ーー小西論に賛同します。別表コピーつけました