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アベ対韓交渉の嘘


やっぱり「パーフェクトゲーム」は嘘だったらしい。先日、失効直前で韓国側がGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄を中止し延長した問題だが、安倍政権が流していた情報とはまったく違う実態があることが少しずつ明らかになってきた。

 当初、安倍政権は「韓国側がWTOへの提訴中断」という“条件”で「日本側が担当省庁局長級対話の再開」をしたという合意だけを強調し、「GSOMIA破棄中止」はあたかも韓国が自発的にやったことであるかのような姿勢をとっていた。関係省庁は「輸出管理の方針は変わらない」(経産省)、「輸出管理とGSOMIAは無関係」(外務省)などと言い張り、マスコミにも「安倍総理は『一切妥協していない』と語っている」「パーフェクトゲームだった」などと吹聴。あくまで“日本政府はまったく譲歩していない”“安倍政権の完全勝利”と印象づけようとしていた。

 ところが、こうした日本側の発表や報道に対し、韓国政府が「遺憾の意」を表明したのである。韓国政府は日本の経産省が合意内容を意図的に歪曲、膨らませて発表したと主張し、外交ルートで抗議したところ、日本側から謝罪を受けたと発表した。

 重要なのはこの後の日本政府の反応だ。これまでのパターンなら、日本政府は当然、この韓国側の主張に猛反発、韓国こそ「嘘をついている」だとなじり、「対話の再開を見直さざるをえない」などと抗議すると思われた。ところが実際にはまったくの逆。菅義偉官房長官は会見で、「韓国側の抗議に日本側が謝罪」という部分こそ否定したものの、抗議については「韓国側の発信一つ一つにコメントすることは生産的ではない」と言及を避けたのだ。発表直後には「輸出管理の方針は変わらない」「日本側のパーフェクトゲーム」と強弁していたことを考えれば、まるで人が変わったかのような“弱腰”だろう。

いったいなぜなのか。実は、本サイトが破棄撤回直後の記事(https://lite-ra.com/2019/11/post-5107.html)で報じたように、もともと、安倍政権が“条件つき延長”に応じたのは外交勝利でもなんでもなく、米国からの圧力があったからに過ぎない。そして、支持基盤である右派を気遣って表沙汰にしなかったが、現実には、水面下で「日本が将来的に輸出規制を解除する」という方向で、話が付いているとの見方を伝えた。

 韓国政府からの抗議に対するこの安倍政権の反応の変化は、つまり、その“水面下の合意”の証明ではないか。実際、安倍政権は「GSOMIAと輸出管理は別問題」「今後も適切な輸出管理を続ける方針に変わりはない」と言い張っているが、ここにきて、韓国メディアからも、本サイトが“予告”していたものとほぼ同じ内容を、具体的に報じ始めている。

たとえばハンギョレ新聞(11月26日)によれば、日韓政府間の水面下の交渉過程で、日本側は韓国を「ホワイト国」に戻すのに必要な手続きに「1カ月程度の時間がかかる」と説明していたという。ハンギョレは、複数の韓国政府・当局関係者の話として、GSOMIA失効の1週間ほど前、日本側が局長級協議を提案し、「ホワイト国を含む輸出規制を戻すには、1カ月余りの時間が必要で、韓国の輸出入管理体制に問題がないことを確認する手続きが必要だ」という説明をしたと報じている。

これが事実であれば、日本政府は韓国の「ホワイト国」復帰や3品目の輸出規制解除について、かなり具体的なスケジュールを描いており、すでに韓国政府へ提案していたかたちだ。つまり、安倍政権にとっては大幅な譲渡、完全勝利どころか痛み分けである。それ自体は「柔軟な外交」として評価すべきだが、一方、安倍首相らが大宣伝している「一切妥協していない」は“大ウソ”、国民を欺いていたことになるだろう。

 韓国政府も世論対策としていろんな情報が流しているから、鵜呑みにはできないが、今回の韓国政府の抗議に対して見せた安倍政権の“弱腰”を考えると、これに近い「合意」があったと見るべきだろう。

 実は、そのことは日本側がGSOMIA延長決定直後に発表した内容からも見て取れる。前述したように日本政府は「GSOMIAと輸出管理は別問題」として「WTOの提訴中断」だけを強調していたが、GSOMIA延長と同時に、貿易問題の合意を発表したというのは、輸出規制の解除問題が条件になっていたとしか考えられない。

 さらに、この発表内容からは、安倍政権がアメリカの圧力だけでなく、もともと輸出規制解除に応じざるを得ない弱みがあったことも見て取れる。

安倍政権は輸出規制や「ホワイト国」除外を、実際には徴用工問題への報復であるにもかかわらず「安全保障上の問題」「貿易管理体制に不備があった」などと言い張ってきた。その姿勢に自信があるならば、「どうぞ好きに提訴してください」となるはずなのに、韓国がWTO提訴を止めることを求め、それを勝ち取ったことを誇ったのである。これは、日本政府も、「WTOに提訴されたら『徴用工問題の報復』であることが指摘され、貿易問題を政治問題に利用したということで負ける可能性が高い」と判断したからだろう。

いずれにしても、こうした裏側をきちんと見れば、政権が吹聴している「パーフェクトゲーム」「一切妥協しない」という勇ましい言葉が、いかに国内向けのデマゴギーであるか、よくわかるというものだろう。逆に言えば、安倍政権はどれだけ外交上の敗北を喫しても、マスコミさえ押さえて大本営発表をしさえすれば、いくらでも有権者を欺けるとタカをくくっている。そういうことらしい。

 事実、この段になっても、マスコミの安倍応援団は「安倍政権の大勝利」をがなり立てている。たとえば、本日26日放送の『ひるおび!』(TBS)では、元駐韓大使の武藤正敏氏が「アメリカの圧力をもって、(韓国が)とにかく日本にベタ降りしたんだっていうのが実態でしょ」「(文在寅大統領は)とにかくアメリカに強引にやられた。で、彼はそれを日本に完全敗北したってことを隠そうとしてるわけでしょ。それは結局どっかでもってバレるわけですよね」などと“韓国の完全敗北”を唱えた。また、八代英輝弁護士も、韓国政府の抗議について「おそらく日本側の筋が、周囲の状況から考えても、正確に伝えているんだろうと思う」と無根拠に安倍政権を擁護していた。

 おそらく、テレビをはじめ、安倍応援団が跋扈する日本のマスコミでは、今後も「安倍首相が韓国を叩きのめした!」なる空疎な凱歌が響き続けるだろう。GSOMIAや輸出規制問題そのものとは別に、その予期される状況は、まるで連戦連敗を喫しながら「架空の戦果」を報じた戦中のメディアのようですらある。国民はいい加減、安倍政権の政治宣伝と情報操作の詐術に気がつかなければならない。ーーリテラ27日より転載

橋ーー片腹痛し秋の風ふく!

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