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桜を見る会再三


 兵庫県神戸市で14日、安倍首相が写ったポスターをナイフで切りつけたとして無職の男(80)が現行犯逮捕された。男は容疑を認め、「『桜を見る会』は税金の無駄遣いだと思った。いたずら心でやった」と供述したという。子供っぽいふざけた犯行だが、「桜を見る会」をめぐる一連の騒動を受け、安倍に対する世論の厳しさが一段と増していることの証左だろう。メディアの街頭インタビューでも「税金で支援者を招いていたら、お金を配っているのと同じ」「長期政権の驕りで私物化だ」などの批判ラッシュである。  国民の怒りは明らかに今までとは違う。野党も追及チームの態勢を3倍に拡充、「追及本部」に格上げして徹底的に調べ上げる方針。立憲民主党の安住国対委員長が「消しゴムで消せるようなものではない」と言ったが、その通りで、今回ばかりはお得意の「中止」で「疑惑にフタ」とはいかない。

 ここまで国民の怒りが高まるのは、次から次へと新証言や新写真、新資料が出てくるうえ、説明は二転三転、デタラメが底なしだからだ。  最初は、第2次安倍政権発足以降、桜を見る会の招待客が増え続け、経費が膨張していることが問題視されたのだが、安倍の地元・山口の後援会関係者850人もが大挙して招かれ、ホテルの前夜祭(夕食会)や都内観光まで含んだツアーが実施されていることが明らかになって、安倍本人が疑惑の中心に。SNS上では安倍の地元県議などが桜を見る会参加をハシャギ、安倍夫妻と地元後援者が並ぶ写真がアップされているのも発覚。  8日の参院予算委で安倍が「招待者の取りまとめには関与していない」と答弁していたのに、過去の参加者は「安倍首相の事務所が飛行機やホテルを手配してくれた」「後援会の慰安旅行みたいなもの」などと安倍事務所の関与を次々証言。安倍事務所名の「桜を見る会ツアー案内状」の存在まで明らかになり、安倍の「虚偽答弁」は決定的になったのである。

今回は国家のブラックボックスに逃げ込めない

 招待客名簿についても、内閣府は「桜を見る会の終了後に廃棄した」と言い張っているが、文科省や警察庁などには内閣府に提出した推薦者名簿があることが判明。内閣府にも残されている可能性が高くなってきた。  そして、最大の疑惑は安倍の後援会が参加した「ツアー」の夕食会の会費5000円だ。  14日、立憲民主党が会場となった都内のホテルに確認したところ、「だいたい1万5000円から2万円。立食150人で1万1000円」との回答だったという。破格の5000円は「あり得ない」金額。安倍事務所が補填していたら、有権者への寄付行為にあたり公選法違反になる。過去に小渕経産相(当時)の関連政治団体が後援会の観劇ツアーの代金を補填し、小渕は大臣辞職、元秘書は在宅起訴されている。

上智大教授の中野晃一氏(政治学)がこう言う。 会費5000円では賄えないならば、不足分をどこが出したのか。後援会のツアーなのに、首相の政治団体の収支報告書に費用が計上されていない。これはアウトでしょう。政治の私物化という点では、モリカケ問題でも完全にアウトでしたが、あの時は官僚が公文書を改ざんするなど、資料や事実が国家のブラックボックスに入っていた。しかし、今回はSNSなど表に出ているもので嘘がバレた。安倍首相本人や昭恵夫人が夕食会で『皆さまようこそ』と挨拶し、850人もの後援会関係者を17台ものバスで新宿御苑に運んでいるのに、『知らなかった』では済まない。今回は国家のブラックボックスに逃げ込むことはできません」

インチキ1強政権が新記録という恥ずべき国

 モリカケ問題で安倍夫妻による政治の私物化がクローズアップされた。野党の追及が何カ月も続き、国民の政権不信も拡大。火だるま状態から逃げ出す一手として安倍が繰り出したのが、「国難突破解散」と自ら名付けた解散権の乱用だった。  都合の悪いことは全てリセット。消しゴムで消して葬り去る。モリカケ問題の処理で味をしめた安倍は、今国会では誰もが唖然とするほど、この悪辣手法のオンパレードなのである。  福井県の高浜原発に絡んで高浜町の元助役が関西電力幹部に巨額の現金や商品券、小判まで配っていた一件は、政治家の関与も疑われたのに、関電の問題に矮小化してフェードアウト。メロンやカニを選挙区の有権者に贈っていた経産相は、国会でヤリ玉に挙げられ、秘書が経産相名で香典を渡していたことが報じられると、スピード更迭。そのわずか1週間後、法相の妻である参院議員の選挙事務所がウグイス嬢に法定額の2倍の報酬を支払っていたことが報じられると、今度は国会での追及すらされないまま、法相を即座に更迭した

来年度から導入予定だった大学入試の英語民間試験を延期したのも、消しゴム手法だ。民間試験に問題があることは1年以上前から関係者が声を上げていたのに、文科省は「決定事項」として一切見直す姿勢を見せなかった。それが、萩生田文科相の「身の丈」発言で一転。安倍の最側近とされる萩生田を守るため、つまりは政権維持のために萩生田ではなく、試験をリセットしたのである。  そして桜を見る会の中止。今回も常套手段のリセットで窮地から逃れるつもりだろうが、これまでと根本的に異なるのは、安倍の後援会の問題なのだから、安倍本人しか説明できないことだ。中止したって、追及はやまず、国民の不信感は消えない。 「今の安倍政権は浸水し始めている船から荷物をどんどん捨てて軽くし、沈まないようにしているようなものです。しかし、それも長くは続けられない。政治に政策に予算に税金にと、あらゆるものを私物化してきた。説明もくるくる変わる。戦後の歴史で見ても、守りに入った政権はもう長くはもたないでしょう」(政治評論家・森田実氏)

私物化の度合いはバカ殿レベル  それでも、そんな最低首相が来週20日には、在任期間で歴代最長の桂太郎を超えるというのだから世も末である。  桜を見る会について安倍官邸は、民主党政権時代も首相の後援会関係者が招かれていたという情報を流したり、再来年は規模縮小して開催する検討に入るなどと、論点すり替えに躍起。しかし、今回の私物化の度合いはわけが違う。安倍後援会の850人に代表される私的招待客が、本来は1万人だった参加者を1万8000人にまで膨れ上がらせ、税金の無駄遣いにつながっているのである。70年近い歴史ある会を「中止」させたのだって究極の私物化だ。 「税金を使った公的な会を、支援者をセレブに会わせてご機嫌を取る会にしてしまった。首相ともあろう人がやることなのか。さもしいし、みっともない。そりゃ、トランプ大統領やプーチン大統領にいいように扱われるわけです。自分の国の首相がこんなレベルとは情けない。バカ殿ですよ」(中野晃一氏=前出)

 安倍は「私が最高権力者」と言ってはばからない。ここまでの公私混同は、自らを専制君主か独裁者か、万能の神とでも思っているのか。安倍政権の7年で、民主主義は崩壊し、国は劣化し、社会の荒廃は取り返しのつかないところまで進んだ。 「『日本は100年もたない』と言う自然災害の研究者が増えてきましたが、私はこの国をダメにするのは、モラルの低下だと思います。安倍首相のようなごまかしやインチキがまかり通り、官僚も経済界もマスコミも劣化の一途。『今だけ、カネだけ、自分だけ』が社会全体に蔓延している。そんな『インチキ1強体制』の首相が歴代最長の新記録とは。これほど恥ずべき記録はありません」(森田実氏=前出) いまだ安倍内閣を支持する4割の有権者も、今度こそ政権の本質が分かっただろう。一刻も早く、引きずり降ろさなければ、国民愚弄がエスカレートするばかりである。

   ーー日刊ゲンダイ15日より転載

橋ーーあきれ返る、としかいいようのない内閣

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