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農家つぶしの日米貿易協定


【AFP=時事】日米が最終合意した新たな貿易協定について、両国政府は「ウィンウィンの合意」と強調しているが、日本国内の肉牛農家からは、さまざまな問題に苦闘する畜産業界にとどめを刺す結果になりかねないと危惧(きぐ)する声が上がっている。  日本の肉牛農家は既に、環太平洋連携協定(TPP)と日欧経済連携協定(EPA)の2つの地域貿易の枠組みに適応することを求められ、苦悩している。だが、日米貿易協定がもたらす圧力はこれまでより大きくなると、畜産関係者は警戒感を強める。 「今までのTPP(メンバー国)だと、確かに輸入品は安いけれども、品質ではじゅうぶん対抗できる国だった」と、北海道・JA士幌(Shihoro)町畜産課の吉川晴美(Harumi Yoshikawa)さんは指摘した。「ところが、米国とは(オーストラリア産牛肉などと比べ)品質的にはより競合するので、その点では心配」  北海道鹿追(Shikaoi)町で約4300頭の肉牛を飼育する大平畜産工業(Ohira Livestock Industry)の川合昭夫(Akio Kawai)社長(61)は、「政治の上のほうの人たちは、生産者のことなんか全然考えていない」と憤る。自分としては何とか経営を続けるつもりだが、「牛飼いなんてやめてやろう、と思う人たちは出てくるかもしれない」。 「国産牛はおいしいし、安心、安全でそれを選ぶ消費者もいるかもしれないが、(中略)米国産牛肉は圧倒的に安いから、それがいいという人たちもいる」(河合社長)

将来への不安  25日に米ニューヨークで最終合意に至った日米貿易協定では、日本が72億ドル(約7800億円)相当の米国産食品・農産品について関税を撤廃・削減することになっている。政府は国内農家への支援を約束しているが、酪農家の間にも先行きを不安視する声がある。 神奈川県内のある酪農家は、貿易協定について「われわれのような30頭から50頭の零細の酪農家には、さらに追い討ちをかけることになる」とAFPに語った。 「飼料の価格も高騰して、(働き方改革で)人件費も上がり、(中略)いろいろなコストが上がっている中で、この商売を続けていけるのかどうか、さらに心配の種が増える」とこの酪農家は話し、「多くの酪農家の方が、年齢も高齢化していく中で、もう酪農は辞めよう、と決断するのではないか」と続けた。  日米貿易協定は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領政権がTPPを脱退し、日本の主要輸出産業である自動車に対する追加関税を示唆したことで、日本側が交渉のテーブルに付かざるを得なくなった経緯がある。しかし、日本政府が国内の農家を保護するため交渉を尽くしたのか、国内の専門家らは疑問視している。 「日本は米国からもっと譲歩を引き出すことができたはず。なぜなら、米国が勝手にTPPを離脱して(その後)交渉したいと言ってきたのだから」。丸紅経済研究所(Marubeni Research Institute)出身で、資源・食糧問題研究所(Natural Resource Research Institute)を立ち上げた柴田明夫(Akio Shibata)代表は、そう指摘した。 「TPP並みの関税引き下げであっても、高齢化が進行している日本の農家の中には、先行きの見通しが立たないとやめる決断を取る人たちも出てくるのではないか」(柴田代表) 「自動車の鉄でもかめばいい」  自動車などの製造業は、日本の名目経済成長率(GDP)の約20%を占め、経済成長のけん引役として期待がかかる。一方、農業がGDPに占める割合はわずか1%だ。 米 政府は今回の貿易協定を「第1段階」と位置付けており、「第2段階」では自動車も交渉材料に含める意向を明らかにしている。米政府関係者は交渉のカギを握る争点として、日本の対米自動車輸出に最高25%の高い関税を課す可能性を今後もちらつかせていくだろう。  東京大学(University of Tokyo)の鈴木宣弘(Nobuhiro Suzuki)教授(農学)は、「(日本の交渉官の)考えは、もし米国に自動車で脅されたら農業を差し出す、ということ」と述べ、日本政府が自動車産業を守るため農業で譲歩したとの見方をAFPに示した。「その結果、国内農産品の生産額はさらに減っていく」  大平畜産工業の川合社長も、この見解に同調。「食料安全保障や食料自給率について、国はどう考えているのか」「もう牛乳の値段だって、水より安くなっている。それはおかしいでしょう」と語り、次のように付け加えた。 「もし国が、食料(需要)の100%、牛乳の国内消費の100%輸入でいい、というなら、それでいい。もし食糧危機が起きたら、自動車の鉄でもかめばいい」

橋ーー怒りをもって上記論に賛意です。「食糧安保」の欠落!

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