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戦争に強い農業です


 学生時代は山岳部に属した事があり、職に就いた後には、北海道は大雪山、四国は石鎚と個人山行で歩きました。既刊の拙本名を「単独行」とし、現在発表中の小説連作「実存ヒプノ」の主人公名をブンタローとしているのも名登山家加藤文太郎からである。結婚して奄美群島勤務となり、十五年近い山行歴に終止符を打つと、次は海人(ウミンチュ)になった。

 元より、山ヤで自炊をやっていたのが七年の島滞在で魚料理を学び、一層調理自慢となる。小型遊漁船は管理の面倒からゴムボートに換え、海人は退職まで三十五年程続けました。最後の勤務地は農業科のある高校で空き農地を荒地にさせまいと仲間と鍬を入れ、収穫した野菜は同僚に提供していました。退職後に四年間非常勤講師をしていたところ、十歳年下の妻が個人山行に逝ってしまった。霊山へ不帰の山登りです。大事にすれば良かったと思ったが後の祭り。三人の子は独立していたので、後はわが身として、妻が借りていた農地を引き継ぐ事としました。

 七十坪は優に超える広さを鍬と鎌でやっていたら、子供達がミニ耕運機をプレゼントしてくれ、草刈り機も手にして有機農法でいくと決めた。雑草対策はマルチビニールです。が、問題は他にも出てきました。販売している種は殆どがF1種なのだ、一代限りなので毎年種を購入させられている。加えて「種子法」により自家採種も禁止となる模様で食糧安保は大丈夫かと疑念は強い。さて農法だが、ネットで学んだ知識で浅い経験を補っている。元より「畝」と言う字くらいは読める、「杉原千畝(ちうね)」を読めなかったどこかの首相とは異なる。 

 作物は根物が主流である。葉物は虫に弱い上に保存が利かないからだ。根物、さつま芋は保存が効くし、干せば甘味が増して焼き芋なら究極の美味となる。落花生はツマミに最高である。玉葱も健康食品である。最近ハマりだしたのがニンニク、らっきょうである。発酵させると栄養度は増し、免疫効果ときたらサプリメントをも凌(しの)ぐ老化防止食品なのである。二つの炊飯器で黒ニンニク、黒らっきょうを作って差し上げては喜ばれている、「精が着くので少子化対策に寄与してね」と余計な言さえ付け加えて。ところが。異変を感じるようになった。「沈黙の春」である。鳥類の激減を感じるのだ。蝶や蜂類の減少は以前からだったが、相手をしてくれていた鳥さん達までいないのは寂しく、連れ添いを捜す事とした。が、三高ならまだしも四高に近い身である。高血〇、高尿〇、高血〇に加えて高齢。来てくれるもの好きはいない、そこで「売り」を考えた「災害や戦争に強い農業やってます」である。戦中戦後の食糧難の時代に農家が「独り勝ち」したのは歴史が証明している。だが。改憲準備は進み、戦争前夜をも思わせる不穏な世情にも拘わらず、この「売り」に飛びついてきたカシコイ?女性はいない。「ハ? 食管法? 何それ」である。

     ---南九州新聞コラム19日掲載

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