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国際政治学者浅井氏が語る日韓問題


浅井基文の反論と論破 - これぞ日本の国際政治学の知性と良識

 元外交官の浅井基文が、「日韓関係悪化の責任は100%安倍政権にある」と言っている。「韓国に100%の理があり、日本に100%の非がある」と断言している。私と同じ主張と結論だ。意を強くさせられる。

 浅井基文がネットに発表した論稿の一部を転載して紹介したいが、実に見事な内容であり、政府とマスコミが繰り返しプロパガンダ・シャワーして「国論」に固めているところの、「日韓請求権協定で解決済み」「国と国との約束を守れ」の主張に対する反論が返されている。安倍日本側で「常識」となった言説が崩されている。目から鱗の、きわめて明晰で説得的な論理と根拠が置かれていて、安倍政権と右翼論者の言い分はこの一撃によって完璧に論破されていると言っていいだろう。これこそ国際政治学だと膝を打つ議論であり、救世主が出現した昂奮を禁じ得ない。坂本義和の顔が思い浮かぶ。あとは、浅井基文にテレビに出る努力をしてもらいたい。単にHPの発信で満足するのではなく、SNSで拡散して積極的なエバンジェリズムに出て欲しい。

まず、今日の日韓関係の悪化を招いた責任は全的に安倍政権にあることについての私の理解をお話しします。私は1966年から1988年まで外務省で勤務し、アジア局及び条約局にそれぞれ通算4年間、合計8年間在職し、「日韓間の過去の問題は1965年協定で決着済み」とする日本政府の主張の一部始終を理解しています。その理解に基づく結論を申し上げると、日本政府の主張は1965年当時国際的に広く共有され、通用していた、しかしその後、国連憲章(人権関連条項)、世界人権宣言(正確に言えば法的効力はない)、国際人権規約をはじめとする国際人道法が国際的に承認されるに至って、日本政府の主張はもはや法的正当性を主張できなくなった、ということであります。すなわち、1960年代までの状況と21世紀の今日の状況を法的に根本的に分かつものは、第二次大戦後に普遍的価値として確立した個人の尊厳・基本的人権が、国際法上の法的権利としても確立したことです。 特に、1967年に発効した国際人権規約(日本加盟:1978年。韓国加盟:1990年)は、国家による人権侵害に対して「効果的な救済措置を受けることを確保」することを定めました。よく知られているのは、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド及びアメリカが先住民族に対して行った謝罪、補償です。またアメリカは、第二次大戦中の日系アメリカ人に対する隔離政策に対して謝罪し、補償しています。植民地支配の責任を認め、補償を行ったケースとしては、2008年8月31日にイタリア(ベルルスコーニ首相)とリビア(カダフィ最高指導者)との間で締結された友好協力条約、いわゆる「ベンガジ条約」が重要です。イタリアはこの条約で、過去の植民地支配について謝罪するとともに、補償としてリビアのインフラ整備に50億ドルを投資することを約束しました。カダフィ政権が崩壊したために条約は中断されましたが、2008年7月8日に、国連が支援するリビア暫定政府のシアラ外相とイタリアのミラネシ外相との間で条約を復活することが合意されました。 また、徴用工、すなわち強制労働の問題に関しては、ドイツが2000年7月に発足させた「記憶・責任・未来」基金の事例があります。8月12日付のハンギョレ・日本語ウェブ・サイトは韓国大統領府がこの事例について研究していると報道しました。「記憶・責任・未来」基金については、『日本大百科全書』(ニッポニカ)に要領を得た解説があります。安倍政権は徴用工、「従軍慰安婦」などの「請求権問題は日韓請求権協定ですべて解決済み」という主張にしがみついています。しかし、以上の国際的事例が明らかにしているのは、人権問題に関しては法律上の「不遡及原則」の適用は認められないということです。さらに重要な事実は、日本政府も日韓請求権協定にかかわる国会答弁において、個人の請求権は協定によって消滅することはないと認めていることです。しかも外務省は、日ソ共同宣言に関する国会答弁において、日本国民(シベリア抑留元日本兵)がソ連の国内法に従って請求権を行使することはできるとも明確に表明したことがあります。 したがって、徴用工問題に即していえば、元徴用工(及びその遺族)は、日本の国内法に従って請求権を行使することができます。しかし、日本の最高裁判所が日本政府の主張を事実上追認する立場(「慰安婦」問題)に鑑みれば、これらの人々が韓国の国内法に基づいて韓国国内で、往時の日本政府の国策に協力して彼らに「強制労働」を強いた日本企業を相手取って賠償・補償を請求する裁判を起こすことももちろん当然かつ正当な権利行使というべきですし、被告である三菱重工業は韓国大法院の判決に従う法的な義務があるというべきです。安倍政権の重大な誤りは、世界的に過去の戦争責任及び植民地支配にかかわる重大な人権侵害に関する法的責任を認める大きな流れが確立しているのに、これに逆らい、法的権利として確立した個人の尊厳・基本的人権を認めない点にあります。安倍政権がかたくなな姿勢に固執するのは、日本の戦争・植民地支配の責任を認めた場合に天文学的数字の賠償・補償に応じなければならなくなることに対する抵抗があります。 しかし、もっと重大で根本的な問題は、安倍首相を筆頭とする日本の右翼支配層(中心は「日本会議」)が日本の戦争責任・植民地支配責任を否定する歴史認識(聖戦論)に固執していることです。彼らの歴史認識にかかれば、神聖不可侵の天皇に直属する皇軍が従軍慰安婦調達、強制連行などに手を染めることはあり得ず、朝鮮半島の人々は自発的に慰安婦となり、日本内地で契約労働に従事した、とされてしまうのです。問題の本質は正にここにあります。だからこそ、この問題に関して「足して二で割る」式の妥協的解決は許されないゆえんがあります。私たちは、韓国に100%の理があり、日本に100%の非があること、日韓関係悪化の責任は100%安倍政権にあることを内外に明らかにしなければならないと思います。そして、今日の事態を作り出した「1965年日韓体制」を根本的に清算して、個人の尊厳・基本的人権の尊重を基調とする21世紀にふさわしい日韓関係の構築が求められていることを日韓両国民の共通認識に据える努力を行っていく必要があると確信します。

簡潔だが正鵠を得ている。分かりやすい。これこそ国際政治学者の議論だ。拍手を送りたい。時局を考えれば、起立して拍手の上で敬礼に値する。私が不満で苛立つのは、今回の日韓問題で、どうしてテレビやネットで浅井基文のような日本人の国際政治学の正論を聞くことできないのかということだ。なぜ、いつも李泳采とか金慶珠とかの韓国人が出て来て、噛ませ犬の役割を演じるのを見なければならないのかということだ。お茶濁しと噛ませ犬の政治芝居。日本人の「学者」は、木村幹だの、木宮正史だの、どれもこれも安倍晋三の言い分を正当化して文在寅を叩く者ばかりだ。佞悪な右翼学者と姑息な忖度学者ばかり。うんざりだ。浅井基文、前に出て来い。われわれをコンビンスさせよ。知識を提供せよ。

中国の徴用工に対して日本企業が和解金を支払った事実があるのに(2000年に鹿島建設、2004年に日本冶金工業、2009~10年に西松建設、2015年に三菱マテリアル等)、なぜ日本政府は、韓国人元徴用工に同様の行動をとろうとする日本企業に、圧力を加えるのだろうか。それは韓国政府が、植民地支配の歴史に対する清算を表だって問題にするからであるが、同時に中国人とちがって韓国人は「併合」下にあって法的に日本臣民だったからである(この論理は詭弁である)。(中略)日韓請求権協定にもとづいて日本が供与した無償3億ドル貸し付け2億ドルも、実は「ひも付き」。(中略)供与された3億ドルは「日本国の生産物」、つまり日本製機械などの固定資本、日本製原資材などの流動資本、そして「日本人の役務」という可変資本の購入にあてられただけ。韓国への資金拠出は、一般の「政府開発援助」ODAよりたちが悪い。「朝鮮人徴用工にまつわる右派の誤解を正す」と題された杉田聡帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)の長文記事の一部か。論座(8月23日)。浅井基文氏の論稿のご紹介に深謝。

橋ーー浅井・杉田論に全面賛意します

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