愕!鹿児島楠隼中高
2015年4月の開校以来、深刻な定員割れで先行きに懸念が出ている「鹿児島県立楠隼(なんしゅん)中学・高等学校」(鹿児島県肝付町)が、他校では例を見ない「学習指導員」に多額の公費をかけ、寮生活する同校の生徒だけに特別な待遇を与えていることが分かった。 事実上の家庭教師ともいえる学習指導員にかかった人件費は、平成30年度だけで約4,000万円。実情を知った教育関係者からは「不公平」「他校の生徒にどう説明するのか」などといった厳しい批判の声が上がっている。
■年々増える「学習指導員」 楠隼中学・高校は、公立では珍しい全寮制の男子校。エリート養成を目的として設立されたが、入学者が多かったのは初年度だけで、翌年度から高校の出願者が激減する状況となっていた。同校の募集定員と今年度の在校生徒数は以下のとおりだ。
同校の実情について、鹿児島県内に住む複数の教育関係者から疑問の声が寄せられたのは先月。職員数や公費支出の多さを指摘する内容だったため、今月初旬、周辺取材を進めながら事実確認のため県教育委員会に文書で取材を申し入れていた。
次稿から詳細を報じていくが、6項目にわたる質問のうち、最も注目したのが取材過程で掴んだ「学習指導員」の雇用実態。事実上の塾講師あるいは家庭教師ともいえる役割の同職に、多額の予算が費消されているとの証言があったため、県教委に雇用状況との確認を求めていた。質問書送付から2週間、ようやく一連の質問に対する回答が送られてきたが、学習指導員の雇用実態(下の表、参照)は驚くべきものだった。
開校した2015年度(平成27年度)に7人を雇用し、約1,480万円を支出。指導員の数は年々増え、14人を雇った昨年度は、支出額が約3,900万円にまで膨らんでいた。指導員の仕事は、寮における学習指導。周辺に学習塾などがない環境であることから、事実上の学習塾あるいは家庭教師の機能を担わせているとみられる。
県教委は指導員について「募集で集めた退職教員など」としているが、関係者の話から、教員として正式採用される前の若い教員免許資格者が雇用されていたことも分かっている。
■公平性欠く楠隼への特別待遇 学習指導員は、県内の学校で楠隼のみに採用されている制度。開校当時から寮での学習指導をウリにしている鹿児島県だが、「寮があるのが楠隼だけだから」という県教委の説明に、納得する県民は皆無に近いだろう。多額の公費支出を認めさせる理由としては弱すぎる。県内の中学、高校に通う生徒たちには、こうした特別待遇は与えられておらず、公平性を欠く現状は決して妥当とは言えまい。
県内の教育関係者も楠隼の学習指導員について知っている人は少ないらしく、HUNTERの記者が話を聞いた複数の教員の中には、実情を知っている人は一人もいなかった。現職の中学教師は、こう憤る。 「人件費に年間4,000万ですか?信じられない。まるで公立の家庭教師斡旋業だ。同じ公立なのに、楠隼だけが特別扱い。県教委は、他校の生徒に『楠隼の生徒は特別なんだよ』とでも言うのだろうか。楠隼には県外からの子供も来ており、県費の使途としても疑問が残る。時代遅れの全寮制男子校という考え方にも呆れていたが、これでは明らかな教育差別。他校の関係者をバカにするなと言いたい」
寮のある高校に赴任したことがあるという教員も、「信じられない」と呆れながら次のように話している。 「寮で夜間学習する際のサポートは、正規の教職員が輪番で行うもの、というのが普通。楠隼も、正規の職員が交代で指導にあたっているものとばかり思っていた。まさか、14人も別口でスタッフを雇用して、しかも年4,000万円近くの公金を投入しているなんて……。鹿児島県内、いや日本全国の公立学校でこういう学校があったら教えてもらいたい。私の知る限り、少なくとも鹿児島県内にはそのような公立学校は存在していません。楠隼だけに多額の予算が投入されてきましたが、この特別扱いは異常。他校の生徒に、どう説明するというのでしょうか」--ハンターニュース14日より転載
橋ーー教育の機会均等に抵触の恐れありですね、公立校だから