海人【ウミンチュ】です・後
釣り人の頼りになるのは仲間であり、釣りは独りで行くな、は鉄則である。次は海上保安庁である。緊急時は一一八番にテレすれば海保に繋がる事になっていて頼もしい存在である。が、船長としては時には怖い存在となる。発煙筒や救命ブイなど法的常備品が欠けているのを見つかろうものなら違法行為として摘発されるからである。仲間の猛さんは海技免許不携帯を巡視船に見つかり、車の違反よりはるかに多大な罰金刑を払わされている。猛さんが海保に捕まった話を聞いてからは、電話で「こちら海上保安庁です」と名乗って脅していた小生もイイ人とは言えない。が、三十年後の今も同じく海保を名乗っている。
さて、「遭難」話に戻ります。船外機付きボートを借りて、沖堤防に青年一人を連れて行った時の事。堤防には鉄梯子が取り付けられていたが、彼が慎重に梯子を登る間に、船の弦が梯子に挟まれてしまい、そこに横波を食らって船があえなくひっくり返されてしまったのだ。幸いにして二人は堤防に登って漁船に救助して貰った。腹を見せていたボートも曳航して貰って事無きを得たのだった。これが海保の救助となったとすれば新聞記事になった事は避けられない。海の事故とはそのように重大事故扱いとなる。
浜田海岸から小学生低学年の息子がマイボートで一人釣りに出た時も「遭難疑似体験」をした。突然の陸からの強風にボートが沖に流され始めて碇が効かない程の風だった。別のボートを借りて救助に向かい、二梃を繫いでのオールでやっとの思いで別の岸に避難した事がある。翌日の新聞で、同沖でウインドサーファーが転覆遭難して漁船に救助された記事を見て、胸をなでおろしたものだ。
福山港沖でも急な風向きの変化に必死でオールを漕いだのは数知れない。同港ではゴムボート釣りに子供二人を乗せていた時の事、子供が釣った魚をボート内に落としてしまい、穴が開き、空気の漏れだす音に子供達が青ざめた事がある。その時は、餌のアミを破損個所に塗り付けて修復して、ベテランの経験ぶりを見せつけましたね。
山も同様に落雷は海でも怖かった。遊漁船で寄港中、近くの大地に落雷を見てはビビらさせられたし、磯釣り中には急な落雷が近づくと、伝導率のいいカーボンの竿を密やかに置いて、恐る恐る離れるしかなかったのだ。今は反電動のグラスファイバー竿が多いと聞く。最後に毒魚に刺された話。毒魚の知識はあった。ある時、針からはずしたゴンズイが逆襲し、スリッパの足を刺した。毒が廻る前にと病院に駆けつけ点滴治療をして貰った。が、帰ってから痛みが増して七転八倒。熱湯につけてやっと痛みが引いた経験をした。これは遭難で無く災難の方でしょう。
最後に、釣り人にとって高波や津波は最も警戒すべきものですね。東日本大震災直後は、私は釣り仲間に「津波に注意を」のテレを入れたのだった、遠くは喜界島迄。釣り人は地震情報には常に注意を払い、かつ、携帯は必携すべきだと考える次第です。
ーー 18日南九州新聞コラム掲載