正統性無き米のイラン制裁
23日、米国のトランプ大統領は、「イランには核兵器をもたせない。オバマ大統領のひどいプランの下ではイランは近い将来に核兵器をもつだろう。現在の査察は受け入れがたい。月曜日(24日)にさらなる制裁を強化する」とツイートした。 トランプ大統領は、2018年5月にイランが核兵器製造過程にあることを理由に核合意から離脱したが、今年5月31日に国際原子力機関(IAEA)は、イランが核合意を引き続き順守しているという内容の報告書を発表している。しかし、その後、6月10日、IAEAの天野之弥事務局長は、イランが濃縮ウランの生産を加速させていると述べ、「イランが核合意を履行しているとは言っていない。しかし、履行していないとも言っていない」と5月末の報告書とは若干ニュアンスの異なることを述べ、米国への配慮をにじませたかのような官僚的な発言をした。しかし、イランが生産を増やしているのは、原発で使われるウラン235の濃度3%から4%の低濃縮のもので、核兵器製造に必要な90%には遠く及ばない。近い将来、イランが核兵器をもつとするトランプ大統領のツイートには合理的な根拠がまるで見られず、それゆえさらなる制裁強化には正当性がまったくない。
イランが生産を増やしているのは核兵器ではなく原発で使う低濃縮ウラン 2015年に成立したイラン核合意は、イランが遠心分離機の数を10年間で約1万9千基から6104基に、また保有する低濃縮ウランの量を15年間に1万2千キロから300キロに、ウランの最大濃縮度を20%超から3.67%に減少することなどの見返りに、イランの1000億ドルの在外資産の凍結解除や、国際市場での原油売却、国際金融システムをイランが利用することが可能になるなど、イランに対する経済制裁を緩和することが主な内容であった。現在、銀行に行って海外送金しようとすると、申込書には「イランと北朝鮮を除く」という注意書きがあるように、国際金融システムからの排除はイラン経済を苦境に追い込んでいる。トランプ政権は、イランが核兵器開発から遠のいたものの、18年5月に核合意の中に弾道ミサイルの開発規制や、イランの核開発に対する制限に期限が設けられていることなどを理由に核合意から離脱した。
トランプ政権の対イラン強硬策の中心にいるのは、ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官だが、彼はアメリカに敵対する国の体制転換のために、軍事介入を唱えてきた人物だ。2016年11月にも、極右系メディアの「ブライトバート・ニュース」でイランに対処する唯一の解決策はイスラム共和国体制を崩壊に導くことにあるという考えを明らかにし、また2015年のイラン核合意成立を前にしても、イランの核兵器開発を防ぐことができるのは軍事行動しかないと述べ、さらに核合意成立後もイランの好戦的な行動がいっそう顕著になったと根も葉もないことを語っている。 ボルトン氏は、補佐官就任当初からイランとの対決を主要な政策課題としてきた。彼の考えに同調するように、ケン・マッケンジー米国中央軍司令官は5月8日、米中央軍の活動する地域において最も重大な脅威であるのはイランであると述べた。マッケンジー司令官は、イラクで死亡した米兵のうちおよそ600人に対する責任はイランにあると述べたが、その根拠を示すことがなかった。イラク戦争とその後の米軍占領期にイランの軍隊がイラクで活動したことはなく、米軍を憎悪の対象としていたのはフセイン政権崩壊後に政治や軍事から排除されたスンニ派の武装集団で、イランはシーア派の国だ。シャナハン国防長官代行は、5月に国防総省がイラン脅威に関して非常に信頼性の高い情報を得ていると議会で発言したが、これも具体的に何が脅威であるかについて説明することがなかった。
まるでパラノイアのような米国の主張とイラン強硬策 トランプ大統領によるイラン原油の国際市場からの排除は戦争行為のようにも見えるが、ボルトン補佐官などのイランに関する主張は偏執病(パラノイア)のようであり、その「病的心理」がイランという平和や安定のある国を破壊や混乱に導こうとしている。NPT(核不拡散条約)に加盟するイランの核エネルギー開発には異様に警戒するトランプ政権だが、NPTに加盟せず、核兵器を保有するイスラエルを一向に問題にすることがない。この不公平、不公正はイスラム世界の反米感情を増幅させ、テロの要因ともなり、米国の利益とは決してならないだろう。ーー日刊ゲンダイ23日より転載
橋ーー上論は小生が過去に書いた論と一致します。ので賛同します