年金制度の破綻・再
どこまでも国民を舐めきっている──。金融庁による「年金に頼るな、自分で2000万円貯めておけ」問題について、本日の参院決算委員会で追及がおこなわれたが、麻生太郎・金融担当大臣は「(報告書の)全体を読んでいるわけではない」と言い放ち、「年金100年安心」と言い募ってきた安倍首相は、その嘘を暴露されると逆ギレ、この期に及んで「100年安心だ」と根拠もなく断言したのだ。
安倍首相は問題となっている金融庁の報告書案について、「不正確であり、誤解を与えるものだった」などと答弁したが、実際には「不正確」なものでも「誤解を与えるもの」でもない。
そもそも、麻生金融担当大臣は金融庁の報告書について「単純な試算を示しただけで、(年金だけでは)あたかも赤字だと表現したのは不適切だった」と言っているが、金融庁は平均的な高齢者世帯の月々の生活にかかる費用をあげたうえで「5.5万円赤字」という数字をはじき出しており、「年金だけでは赤字」というのは事実だ。そして、これは金融庁が勝手につくったものでなく、“年金制度の元締め”厚労省が提供したデータだ。
にもかかわらず、「100年安心は嘘だったのか」と追及を受けた安倍首相は、「反論させていただきたい」と大見得を切った。そして、こう断言したのだ。
「マクロ経済スライドによって『100年安心』という、そういう年金制度ができたということなんです」 「マクロ経済スライドも発動されましたから、いわば『100年安心』ということはですね、確保された」
しかし、最初から最後まで安倍首相はその「100年安心」の具体的な根拠を何一つ示せなかった。だらだらと「マクロ経済スライド」の説明をつづけたあげく、「今年度の年金額は0.1%プラス改定になった」と主張。今年の年金額がたった0.1%上がったことで「100年安心」など言えるものではまったくなく、「関係ない!」という当然のヤジが飛んだのだが、安倍首相はこうキレはじめたのだ。
「年金水準をちゃんと説明しなければ、不安を煽るだけの結果になってるんですよ!」 「こうやって説明させないという態度は、おかしいと思いますよ」 「年金っていうのは制度の説明ですから、少しは時間かかるんですよ。スローガンを言い合うことではないんですよ」
「100年安心」というスローガンをさんざん喧伝しておきながら、「年金水準は下がる、2000万円貯めろ」と不安を煽ったのは政府のほうではないか。なのに、言うに事欠いて「不安を煽るな」って……。
しかも、そこからはじめた「不安を煽らない説明」とやらは、前述した何の安心の証明にもならない「今年度の年金額は0.1%増額改定」というアピールの繰り返しと、「みなさんにとって都合が悪い説明になると遮るんですか?」などといういつもの野党批判だったのだ。
安倍首相は「100年安心」というが、41歳以下の老後は3600万円不足説
言っておくが、いま大きな問題になっている焦点のひとつは、「2000万円貯めておけ」の根拠として金融庁が「将来的に年金給付水準が下がる」と示していたことだ。しかも、本サイトで本日お伝えしたように、この報告書を作成していた金融審議会「市場ワーキング・グループ」には厚労省年金局企業年金・個人年金課の吉田一生課長も出席。その場で吉田課長は、こうはっきりと明言している。
「公的年金の給付につきましては、マクロ経済スライドにより、中長期的な水準の調整が見込まれているのはご案内のとおりで、老後の所得確保における私的年金の重要性が増すものと考えております」 「若い人ほど65歳時点になった時点の平均寿命は長くなりますが、公的年金の所得代替率は低下するわけです」
「調整」などという表現を使っているが、これはもちろん「中長期的に年金給付が下がる」という意味だ。実際、吉田課長がこの説明の際に示した厚労省資料のグラフからも、厚労省がいま公表している見通しよりもさらに長期的で大幅な給付削減を想定していることがはっきりとわかる。
つまり、安倍首相は「マクロ経済スライドによって年金は100年安心」と言うが、それは年金制度が保たれるというだけの話で、政府が「国民が安心して老後の生活を送ることができる水準の給付金」を約束しているわけではけっしてないのだ。
しかも、だ。共産党の小池晃議員は、こうしてマクロ経済スライドによって年金はどんどん下がっていくことから、「41歳以下の世代では、夫婦で3600万円不足する計算になる」と指摘。2000万円どころか、3600万円も貯め込まなくてはならないのだ。就職氷河期世代である40歳代の貯蓄ゼロ世帯は17.3%、30代も14.5%にも及んでいるというのに、政府は3600万円もどうやって貯金しろと言うのだろう。
いや、これだけではない。きょうの国会では、安倍政権による「年金給付引き伸ばし」の手口も暴露されたのだ。
国民に年金給付開始年齢先延ばしをさせる詐欺的誘導の手口
現在の年金制度では年金開始年齢は原則65歳だが、60〜70歳までのあいだで本人が選択することができる。そんななか、じつは今年4月から年金受給額などが通知される「ねんきん定期便」の記載内容が変更され、年金の繰り下げ受給が案内されるようになった。そこでは、70歳まで年金開始を遅らせた場合、年金額が「65歳と比較して42%増」になると図まで用いてアピールされている。
「42%も増えるならお得かも」と考える人も多いだろうが、現在、繰り下げ受給を選択している人はわずか1%程度にすぎない。年金がなければ暮らしていけない、そういう苦しい生活を余儀なくされている人が多いことも要因のひとつだろうが、もうひとつ重要なのは、70歳から年金を開始した場合、65歳から開始した場合と比較して「得」が出るのは82歳から、ということだ。日本の平均寿命は2017年で男性が81.09歳、女性が87.26歳。つまり、男性は平均より長生きしなければうま味はなく、年金の給付をなんとしても抑制したい国の思惑が透けて見える。
前述した金融審議会「市場ワーキング・グループ」に出席した厚労省年金局の吉田課長も、年金支給年齢を遅らせる繰り下げを強調し、「フル就業できるうちは公的年金を繰り下げ、引退後、増額した公的年金と私的年金を含む貯蓄の取り崩しで、長期化する高齢期の生活水準を確保することができます」などと述べていた。年金の支給開始時期を繰り下げる高齢者をなんとか増やそうと厚労省は必死になっているのである。
まさに詐欺的だが、この“年金詐欺”の元締めはもちろん安倍政権だ。その典型が、すでにデータが揃っていると認めている年金の「財政検証」の結果公表先延ばしだ。今回の「財政検証」の結果は将来的に年金給付額が下がることを示す厳しい内容になると見られており、参院選前に公表すれば確実に安倍政権に大ダメージを与える。つまり、安倍政権が厚労省に命じて、参院選まで公表を遅らせようとしているのだ。
しかし、どれだけごまかそうとしても、年金制度が崩壊していることはもはや、あきらかだ。きょうの国会では、安倍首相が「年金100年安心」と言い張る根拠をまったく提示できなかったどころか、41歳以下の世代は3600万円もの貯蓄が必要という指摘まであった。国民に年金安心神話を振りまいてきた安倍政権の責任を問う。それこそが、参院選の争点だ。ーーリテラ10日より転載
橋ーー「年金」はまさしく、参院選争点にすべき!