国政選挙の争点・前
二年前、野党の臨時国会開会要求をはねのけ、政府は衆議院解散とした。「国難突破」を名目に一千億に近い国税を費やした選挙の論点は「少子高齢化問題」と「北朝鮮危機」だったが、国難は解決の道筋がついただろうか。
去る三日、金融庁の金融審議会が「高齢社会における資産形成・管理報告書」を発表したが、そこでは「老後は年金だけに頼らず自助努力を」と呼びかけている。二千四年小泉政権時に「年金百年安心プラン」を謳(うた)って年金制度改革が実施され、安倍第二次政権でも厚労省は「公的年金は大丈夫」と、年金の給付水準を現役世代の五十%を百年年間維持するという約束をしてきた筈だが。あろう事か報告書の内容は「長生きしたいなら二千万の貯金が必要」とか「投資で資産運用しろ」と続くのだ。唖然とする他はない。年金制度は破綻させないとの喧伝は嘘だったのか。「年金積立金は十分に残っているから安心せよ」と言われてきたが、年金運用では損失を出しまくり、二千十八年十月から十二月の資産運用成績では十五兆円に近い過去最大の赤字額を出している。年金はもはやあてにできないのか。
生存権を掲げた憲法二十五条には「国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない〉と定めてあるが、二千十三年制定の、社会保障改革プログラム法では「自助・自立」が前面に出され、「公助」は後退しているのだ。一方、雇用年齢の引き上げが年金支給開始年齢の引き上げに繋がらないか、との懸念は強まる。「高齢化対策」は一体どこに?
次に「少子化対策」であるが、紙幅の関係上、簡潔に述べたい。我が国の幼児対策や教育予算は先進国の半分以下である。安心して子供を産み、育てる環境にないのは歴然とした事実だ。子供や若者が育たない国に未来があるだろうか。こんな環境で「子ども三人は産め」といった元大臣発言には断罪せざるを得まい。
最後に「北朝鮮危機」についてである。Jアラートは鳴らなくなった。「拉致問題の進展が前提で、対話の為の対話はしない」との対北方針も「無条件に対話の用意」に変わった事も評価はできる。が、その要因は米国がもたらしたもので政権独自の外交成果とは言えまい。現在でも「飛翔体の確認」は米国頼みになっていないか。北朝鮮は、護衛艦いずもや、かがの事実上の空母化やステルス戦闘機大量導入などを「軍国主義化」と機関紙などで批判している。北朝鮮への「最大限の圧力」を国際社会に説く事に懸命だった総理が「虚心坦懐(たんかい)」に対話したいと述べても簡単には応じまいとの懸念は残る。経済協力だけ食い逃げされて、二島返還にまで譲歩していながら北方領土返還は見通しの無い対ロ交渉と同様に、外交成果をあげて選挙に繋ぎたいとの焦りは相手に足元を見られかねないか。外交を「やってるフリ」だけなら御免である。
橋ーー本論は6日の「南九州新聞・雑草」欄に掲載予定のものです。掲載前の文をアップするのはルール違反と承知しつつーーごめんなさい