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恵みの佐多街道


自然の恵み、佐多街道を走る

てつと

 佐多の伊座敷に別宅があるので月に何回か泊りに行く。別宅というと贅沢なようだが、海に近い中古住宅を格安で求めて亡妻と二人で補修したものだ。鹿屋の本宅から四十キロの街道は私にはご満悦ロードなのである。道の駅と無人販売店を中心に紹介したい。商品は自分の好みである。

 鹿屋市街地を抜けると田崎に無人販売店。種類量とも豊富な新鮮野菜が先ず目に入る。浜田に下りると窓を開け、海のオゾンをたっぷり取り込んで走る。浜田海岸は昔、自分の遊漁船「吾愛人わかな」を係留し、近くの楠園理美容店さんに管理して貰っていた。今もご夫婦で元気に営業されているのが嬉しい。

 錦江町入口に「にしきの里」がある。一角に私の好きな喜界島物産を置いてあるこの店のお目当ては果物である。季節によりイチゴ、パッション、辺塚だいだい、タンカン、サワーポメロなどを求めている。前の神川ビーチには最近多くの影絵シルエットが置かれ、夕陽に映えた光景は心を和ませてくれる。

 神川を渡ると「ふる里館」である。最近地元で生産されるようになったパイナップルやマンゴーが置かれている。新鮮な地元魚介類も豊富である。先日はサービスでカンパチのアラを可愛い店員さんに貰い、チョー嬉しかった。お目当ての乾燥ひじきはここしか置いてなく、数量限定である。サラダ玉葱苗を求めた事もある。

 南大隅町に入ると雄川河口に「なんたん市場」がある。ここでは時々珍しいものと出合う。「ムカゴ」「菊芋コーヒー」「辺塚ダイダイ唐辛子」などを見つけた時は嬉しい。マンゴー菓子や手作りパンもある。シーアグジャパン産の蛤は持て成しには欠かせない品である。雄川を渡り伊座敷へ向かう路は十店を超す無人販売店がある。とても安くて新鮮な農産物が置いてあるので、車のフロントには常時百円玉をワンサカ置いている。運転中に注意深く小さな店舗を覗くのだが、用心しなければならないのは道端のカカシである。本物そっくりの彼らに目を奪われかねない、要注意だ。無人店舗で求めるのは、冬はミカン類で夏はスイカやメロンなど。驚きの安さに生産者さんには頭の下がる思いである。

 給油は苙〈オロ〉という所のスタンドだ。ご夫婦に美男美女のお子さんの家族経営でとてもフレンドリーである。僅かでも南大隅町に税が落とせれば、と灯油も調達させて貰っている。難字「苙」の語源は檻だと辞書にはあるが不確かだ。

 到着地の伊座敷ではAコープさんが閉店時間前はカンパチやアジなど地元産の新鮮魚を値引きして下さり、嬉しく舌鼓を打っている。地元産のトコブシやキダカを見つけた時は手が伸びるし、焼酎「佐多岬」には舌も伸びるのは勿論だ。

こんな自然の恵みに満ちた南大隅を「核のゴミ」等の処分場として汚すのだけは御免こうむりたいと願う。ーー9日。南九州新聞掲載

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