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日本・敗訴


 世界貿易機関(WTO)の紛争を処理する上級委員会は11日(日本時間12日未明)、韓国が東京電力福島第1原発事故後に福島など8県産の水産物の輸入を全面禁止しているのはWTO協定のルールに違反するとした1審の判断を覆し、日本は逆転敗訴した。勝訴をテコに輸出拡大を図ろうとしていた日本政府への打撃は大きい。一方、韓国は禁輸を継続する方針を示した。

 河野太郎外相は12日、「主張が認められなかったことは誠に遺憾だ」との談話を発表。さらに「韓国に対して規制全廃を求める立場に変わりはない」と2国間協議を呼び掛ける考えを示した。

 吉川貴盛農相は12日の記者会見で「復興に向けて努力してきた被災地を思うと誠に遺憾」と述べた。そのうえで「日本の食品の安全性を否定したものではない」と強調した。

 菅義偉官房長官は12日午前の記者会見で、「日本産食品は科学的に安全との1審の事実認定が維持されている」としたうえで「敗訴したとの指摘は当たらない」と語った。

 一方、韓国外務省は12日、「現行輸入規制措置は維持され、日本の8県全ての水産物に対する輸入禁止措置は継続される」との政府見解を発表した。

 1審の紛争処理小委員会(パネル)は昨年2月、韓国による輸入規制は「差別的」かつ「必要以上に貿易制限的」でWTOルールに違反するとした日本の主張をおおむね認め、韓国に是正を勧告していた。これに対し、上級委は「パネルは製品サンプル中の(放射性物質の)実測値のみに基づいて安全性を調査している」として議論の過程に問題があったとの見解を示した。さらに「WTOでは食品の安全性について科学的証拠が不十分な場合、暫定的に規制を認めている」との韓国の主張に対し、日本は反論しなかったとも指摘した。

 WTOの紛争処理手続きは2審制。上級委は最終審に当たる。30日以内にWTOの全加盟国会合で採択され確定する。

 韓国は2013年、東電の汚染水流出問題をきっかけに規制を強化。青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県産の水産物の禁輸対象を一部から全てに拡大した。日本は「科学的根拠がない」と15年にWTOに提訴。日本が1審で勝訴した後、韓国は昨年4月に上訴していた。日本はWTOを通じて安全性を立証しようとしたが、裏目に出た形だ。

原発事故後、一時は54カ国・地域が日本産食品の輸入を規制した。現在も23カ国・地域で続いている

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