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アベの私兵か!自衛隊


 どうしてこうもすぐにバレる嘘をつくのか。安倍首相は「自衛隊員募集に6割以上の自治体が協力を拒否している。だから改憲が必要」と国会や自民党大会で力説していたが、それが大嘘だったからだ。

 安倍首相は10日におこなわれた自民党大会で、こう述べた。

「残念ながら、新規(自衛)隊員募集に対して、都道府県の6割以上が協力を拒否しているという悲しい実態があります。地方自治体から要請されれば自衛隊の諸君はただちに駆けつけ、命をかけて災害に立ち向かうにもかかわらずであります。皆さん、この状況を変えようではありませんか。憲法にしっかりと自衛隊と明記して、違憲論争に終止符を打とうではありませんか」

 これまでは「自衛隊を合憲とする憲法学者はわずか2割」「そのせいで自衛隊員の子どもがいじめられている」などと言って憲法に自衛隊を明記する改憲が必要だと訴えてきたのに、今度は「自治体が自衛隊員募集に協力しないから改憲」って……。しかも、これは自民党大会で言い出したのではなく、1月30日の衆院本会議でも、自民党・二階俊博幹事長の代表質問への答弁でも同様の主張を繰り出していた。

 だが、この「自衛隊員募集に都道府県の6割以上が協力を拒否している」というのは事実とまったく違い、「実際は9割が協力」していると昨日の朝日新聞や毎日新聞が報じた。

 防衛省はおもに18歳と22歳を対象にして自衛隊への勧誘活動をおこなうため、市町村にその名簿を「紙媒体または電子媒体」で提出することを求めている。つまり、安倍首相が言った「都道府県」というのは間違いだったわけだが、2017年度は全市区町村のうち「紙媒体または電子媒体」で提出したのが約36%だったことが、安倍首相の「6割以上が協力拒否」発言の根拠であるらしい。

 しかし、12日の記者会見で岩屋毅防衛相は、その6割の市町村も「3割は(自治体が)該当情報を抽出して閲覧」「2割は防衛省職員が全部を閲覧して自ら抽出しなければならない」「1割はそういう協力もいただけていない」と発言(毎日新聞13日付)。ようするに、自治体の約9割は、住民基本台帳の閲覧を認めていたというわけだ。

 しかも、名簿を紙媒体や電子媒体で提出していなかった「都内の自治体」が『報道ステーション』(テレビ朝日)の取材に対して、「そもそも自衛隊からは『閲覧』しか求められていない」と答えていた。

 これらを見ても明らかなように、安倍首相がいった「6割以上の都道府県が協力を拒否している!」というのは大嘘。安倍首相はインチキに基づいて自治体を攻撃し、それを改憲の理由にしているだけなのである。

 だが、驚いたことに、昨日の衆院予算委員会でこの問題が取り上げられると、安倍首相は誤りを頑として認めず、逆に「閲覧だけでは協力ではない」「報道は誤りだ!」などとがなり立てはじめたのだ。

「全体の6割以上の自治体は法令に基づく防衛大臣の求めに応じず、資料を提出していません。自衛隊はこれまで4万回を超える災害派遣をおこない、助けを求める自治体があればいかなる事態にも直ちに駆け付け、献身的な働きをおこなっています。これに対して、これに対して、募集に対する現状は、まことに残念と、まことに残念と言わざるを得ません」

 災害時には駆け付けてやっているのに、自衛隊募集で名簿を提出しないとは何事か──。安倍首相はそう怒りを見せたが、一体何様のつもりだ。災害現場で救助や復旧活動に携わる自衛隊員の働きを、安倍首相は見返りを求めるためのものだとでも言うのか。

「閲覧は協力じゃない」「報道は誤りだ」と開き直った安倍首相

 しかも、安倍首相は続けて、こうまくしたてた。

「住民基本台帳法に基づく閲覧は文字通り、見るだけ。そこに見に行って、写しの交付はこれ、おこなわれません。写しの交付はおこなわれない。複写もできませんから、膨大な情報を自衛隊員が手書きで書き写しているということであります。これも含めてですね、きょうの報道は一部、私はそういう意味では誤りだろうと、こう思うわけでございますよ? それも協力を得ているということで勘定されてしまってますから、あの報道は誤り。あの報道は誤りであります」 「6割以上の自治体において協力を得られていないというのが真実、ファクトであります」

 紙や電子媒体で提出せず、閲覧だけなんてけしからん。そんなものは「協力」とは言わない! ……安倍首相はそうキレたのだ。

 失踪した外国人技能実習生の聴取票の問題では「プライバシー保護」を盾にしてコピーを禁じ、野党議員に一枚一枚手書きを強要したくせに、今度はプライバシー保護などまるで無視して紙や電子媒体で提供しない自治体を“非国民”であるかのように糾弾するとは──。

 だいたい、自治体からの情報提供の根拠としている自衛隊法施行令には「紙媒体または電子媒体で提供すること」などとは書かれておらず、法学者の園田寿・甲南大学法科大学院教授も「自衛官募集のために住民基本台帳の情報を自治体が紙などで提供するのは法的根拠がない。住民基本台帳法で禁止する『個人情報の目的外利用』にあたり、違法だ」「個人情報を扱う規定は同(自衛隊)法にも施行令にもなく、これらを根拠に提供を求めるのは拡大解釈だ」と指摘している(朝日新聞2016年3月22日付)。このように、自衛隊が自治体に名簿の提供を迫ることに対しては個人情報保護上の問題を指摘する専門家は多いが、安倍首相はそうした指摘にはまったく目を向けないのである。

 しかも、昨日の国会ではテレビ中継が入っていなかったせいか、安倍首相はこのあとヒステリーを全開にした。

「パパは憲法違反?」発言の根拠を問われ、「私が嘘を言うわけない」

 安倍首相が何度も改憲の理由として語ってきた「自衛隊員が『お父さん憲法違反なの?』と息子に尋ねられ、そのとき息子は目に涙を浮かべていた」という耳タコ話について、立憲民主党の本多平直議員が「実話ですか?」「駐屯地のそばで育ったが私の実感と違う」「国会で『自衛隊は憲法違反の疑いがある』などと取り上げている政治家って誰だと思うか」と、その根拠を追及すると、安倍首相はまたもこうキレはじめたのだ。

「本多委員はですね、私が言っていること、嘘だって言っているんでしょう? それは非常に無礼な話ですよ! 嘘だって言ってるんでしょう、あなたは! 本当だったらどうするんです、これ。これあなた、嘘だって言っているんだから! こんなに時間を使って私に対して嘘だと言っているというのは、極めて酷い話だと思います」 「あまりにもですね、全面的に人格攻撃ではないかと思う」

 大前提として「お前の父ちゃん憲法違反!」といじめられた子どもがほんとうにいるのだとしたら、おこなうべきはいじめの解消・解決であって、憲法改正ではない。そのエピソードをもち出して改憲の理由にすること自体がどうかしているのだが、その上、少し突っ込んだ質問をされただけで「嘘だと言ってる! 人格攻撃だ!」と怒鳴り散らす……。挙げ句、安倍首相はこう叫んだ。

「私が嘘を言うわけがないじゃないですか!」 「あそこのサンゴ」発言やアベノミクス偽装の実態が暴かれつつあるというのに、言うに事欠いて「私が嘘を言うわけがない!」。この幼稚でヒステリックな総理大臣と何か議論するなどということは、どだい無理なのだろう。

 しかし、今回、安倍首相が改憲の道具にもち出してきた「自衛隊員募集に協力を拒否する自治体が6割以上もいるから憲法改正が必要」という主張は、非常に危険なものだ。個人情報の扱いとして違法が指摘されている自衛官勧誘のための名簿提出を「協力しない自治体が悪い」と糾弾し、さらに自衛隊募集のための個人情報提出に反対する市民を槍玉にあげて恫喝する──。これはまさに、戦争に協力しない国民や組織を政府が全体主義で糾弾した、戦中のやり方にそっくりだからだ。

 安倍改憲がいかに恐ろしいものか。今回の問題は、さらにそれを浮かび上がらせたと言っていい。この主張を安倍首相が取り下げる気配もないため、今後も注意が必要だ。ーー2/14リテラ転載

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