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「望月批判」する官邸の大嘘


望月衣塑子記者の質問は「無駄が多い」「自分の意見を述べ続ける」は本当か? 信号無視話法分析による検証

 菅義偉官房長官の定例記者会見での東京新聞・望月衣塑子記者に対する異様な仕打ちが続いている。  望月記者の質問だけは菅長官がまともに答えない。望月記者の質問だけは司会者(内閣府職員・上村秀紀 報道室長)が妨害する。しかも、この異常事態は1年半以上にわたって続いている。

新聞労連が抗議声明を出す事態に

 筆者はこの問題について、昨年9月より自身のnote記事で10件の記者会見の分析を公開しており(※参照)、昨年12月14日午前の記者会見についてはハーバー・ビジネス・オンラインにも寄稿している。辺野古土砂投入の開始日、記者全員の質問が辺野古に集中する中、望月記者だけが不当な扱いを受けている事実を「時間」と「質疑内容」の両面から視覚化した記事だ。

(参照:”辺野古土砂投入の日、菅官房長官会見で浮き彫りになった「いじめの構図」。民意も批判的な記者の声も踏みにじられる”–HBOL))  同日の記者会見の様子は約2分の検証動画として公開しているため、記者会見を見たことが無いという方はぜひ一度ご覧頂きたい。  そして、今月、事態は新たな展開を見せている。

 2月5日、ついに新聞労連は首相官邸が「特定記者の質問を制限」したことに抗議する声明を発表。(参照:朝日新聞)

 2月6日には、山本太郎議員が「内閣官房長官の定例記者会見における特定の記者の質問を制限する発声等に関する質問主意書」を提出し、この問題が国会で取り上げられる可能性も出てきた。(参照:参議院 質問主意書)  また、女子中学生が発起人となって「東京望月衣塑子記者など特定の記者の質問を制限する言論統制をしないで下さい」(change.org)と訴えたキャンペーンは大きな反響を呼び、開始から数日で1万2000人を超える賛同を集めている。(2月7日22時現在)  

 前置きが長くなってしまったが、本記事では昨年12月14日午前の記者会見を改めて取り上げて分析してきたい。具体的には、この記者会見で質問した全3名の記者の質問内容を信号無視話法の観点で分析していく。

3人の記者の質問を信号判定してみると……

 改めて、「信号無視話法」分析の配色ルールを説明しておこう。  まず、各記者の質問内容を以下の配色ルールに沿って色分けすることとする。 青信号:質問内容 黄信号:質問の前置き、質問に関係する経緯を説明 赤信号:質問と無関係、事実誤認 灰色(図版中のみ。本文中は通常のテキストと同色):不要な言葉、言い間違い、似た言葉の繰り返し(読み飛ばしたほうが理解しやすい箇所) となっている。  望月記者に対しては、「質問に事実誤認がある」「自分の意見を延々と述べ続ける」「質問がまとまっておらず、意味がわからない」といった根拠のない批判がされることがある。その批判が正しければ、望月記者は他の記者と比べて、黄信号や赤信号や灰色の割合が高く出るはずだ。  しかも、この日の記者会見は辺野古土砂投入の開始日ということもあって、記者全員の全ての質問が辺野古に集中しており、比較しやすいはずだ。

※灰色は本文中では通常色

 そして、この日に質問した3名(共同通信 小笠原記者、朝日新聞 岡村記者、東京新聞 望月記者)の質問内容を色分けした結果がこちらだ。

まず一目見て、色の割合は3者で大きく変わらないということが直感的におわかり頂けるだろう。  

まずは1人目の共同通信 小笠原記者。 「(黄信号)共同通信の小笠原です。あのー、米軍普天間飛行場の辺野古移設について伺います。あのー、政府側は今日、辺野古沿岸部に、ど、土砂を、あのー、投入す・・、土砂投入を開始すると沖縄県に伝えましたけれども、 (青信号)現段階で実際に投入は始めてるんでしょうか?もしくは、午前中にも投入する見通しでしょうか?  (黄信号)関連で伺います。共同通信の小笠原です。あのー、昨日、長官と会談した 沖縄県の玉城デニー知事は土砂投入に重ねて反対する意向を示していたわけですけども、  あのー、(青信号)そういった状況下でこのタイミングでの土砂投入を判断した理由について伺います」  土砂投入のタイミング、土砂投入を判断した理由について、質問に関係する経緯を説明した上で質問に入っている。  

次に2人目の朝日新聞 岡村記者。 「(黄信号)関連して、朝日新聞の岡村です。あの、玉城知事は9月の知事選で示された民意は、あの、辺野古移設に反対だとして、あのー、依然として反対を訴えておりますが、  あの、(青信号)長官としては、その、9月の知事選の民意、辺野古反対移設の民意をどのように お考えなのでしょうか?」  9月の沖縄知事選で示された移設反対の民意について、質問に関係する経緯を説明した上で質問に入っている。  

最後に3人目の東京新聞 望月記者。 「(黄信号)東京新聞・望月です。関連ですが、辺野古移設・移転の中止を訴えた知事の選挙での圧勝から知事や県民は繰り返し、耐久年数200年と言われる辺野古基地に反対の意をずーっと示し続けてきました。で、結果としてですね、政府はその意向を一顧だにせず、土砂投入に踏み切ります。  (青信号)結果として、これは県民にさらなる負担を強いることになりますが、この点、政府として、どうお考えなのですか?  (黄信号)関連でですね、玉城知事、今朝、官房長官・防衛省に工事中止と協議を申し入れたが、えー、(黄信号) 予定ありきで県民の民意を無視し、進める工事に強い憤りを禁じ得ないと強く反発されました。  (青信号)このタイミングで踏み切ったことについてですが、来夏の参院選への影響を最小限にしたいということではないんでしょうか?」  沖縄県民への負担増大、参議院選挙への影響という観点で、質問に関係する経緯を説明した上で質問に入っている。  つまり、3人とも質問文の構成には大差がない。

むしろ淀みなく質問していた望月記者

 さらに、記者別に色分けした結果を文字数ベースで円グラフにまとめたものがこちらだ。 共同通信 小笠原記者:黄信号57%、青信号33%、灰色(色つけなし)9% 朝日新聞 岡村記者:黄信号54%、青信号37%、灰色(色つけなし)10% 東京新聞 望月記者:黄信号65%、青信号34%、灰色(色つけなし)1%  3記者に共通して、前置きや質問に関係する経緯の説明(黄信号)に約6割を費やした後、約3割を質問(青信号)に充て、言い間違いや不要な言葉(灰色)が約1割ほど混ざってしまう、という構成だ。望月記者に着目すると、黄信号が他記者より8〜11%ほど多いものの、無駄な灰色(色つけなし)はわずか1%なので、質問はむしろ聞き取りやすいと言える。  結論として、望月記者に対する「質問に事実誤認がある」「自分の意見を延々と述べ続ける」「質問がまとまっておらず、意味がわからない」といった批判はこの日の会見では全く当てはまらない。  だが、官邸の対応はこの日も同じであった。  すなわち、望月記者の質問だけは菅長官がまともに答えず、望月記者の質問だけは司会者(内閣府職員・上村秀紀 報道室長)が妨害したのである。  本記事の分析を踏まえた上で、当日記者会見の検証動画(約2分)で改めてご確認頂きたい。  おわかり頂けただろうか?  この記者会見は異常だ。望月記者の質問には何ら問題はない。  ただ、菅官房長官と上村秀紀室長の対応が常軌を逸しているだけなのである。もちろん、この日以外の会見についても同様であり、異様なのは明らかに菅官房長官、そして政権側の対応なのだ。

    ハーバービジネス2/9より転載 作者は以下

<文・図版・動画作成/犬飼淳 TwitterID/@jun21101016> 【犬飼淳氏】 サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。最近は「赤黄青で国会ウォッチ」と題して、Youtube動画で国会答弁の視覚化に取り組む。  犬飼淳氏の(note)では数多くの答弁を「信号無視話法」などを駆使して視覚化している。また、同様にYouTubeチャンネル(日本語版/英語版)でも国会答弁の視覚化を行い、全世界に向けて発信している

橋ーーまさしく主意に同感

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