詩「便所掃除」
「男はつらいよ」全巻再視聴中です。再というのは、映画館では酔って眠ってたので😅今回の蘭ちゃん出演作は、夜間定時制高校で、国語の「便所掃除」の詩の授業が出てきました。この詩は「国鉄詩人賞」受賞作〈国鉄とはJRの前身です〉。昔、「教育評論」でこの詩を知り、学級通信で紹介したことがあります。歌「トイレの神様」がヒットする何十年も前です。懐かしかったので詩のcopyを添付しますね。 便所掃除 浜口 国雄 扉をあけます。/頭のしんまでくさくなります。/まともに見ることが出来ません。 神経までしびれる悲しいよごしかたです。/澄んだ夜明けの空気もくさくします。 掃除がいっぺんにいやになります。/むかつくようなババ糞がかけてあります。 どうして落着いてくれないのでしょう。/けつの穴でも曲がっているのでしょう。 それともよっぽどあわてたのでしょう。/おこったところで美しくなりません。 美しくするのが僕らの務です。/美しい世の中もこんな所から出発するのでしょう。 くちびるを噛みしめ、戸のさんに足をかけます。/静かに水を流します。 ババ糞に、おそるおそる箒をあてます。/ポトン、ポトン、便壺に落ちます。 ガス弾が、鼻の頭で破裂したほど、苦しい空気が発散します。 心臓、爪の先までくさくします。/落すたびに糞がはね上って弱ります。 かわいた糞はなかなかとれません。/たわしに砂をつけます。 手を突き入れて磨きます。/汚水が顔にかかります。 くちびるにもつきます。/そんなことにかまっていられません。 ゴリゴリ美しくするのが目的です。/その手でエロ文、ぬりつけた糞も落します。 大きな性器も落します。 朝風が壺から顔をなぜ上げます。/心も糞になれて来ます。 水を流します。/心に、しみた臭みを流すほど、流します。 雑巾でふきます。/キンカクシのウラまで丁寧にふきます。 社会悪をふきとる思いで、力いっぱいふきます。 もう一度水をかけます。/雑巾で仕上げをいたします。 クレゾール液をまきます。/白い乳液から新鮮な一瞬が流れます。 静かなうれしい気持ですわってみます。/朝の光が便器に反射します。 クレゾール液が、糞壺の中から、七色の光で照します。 便所を美しくする娘は、 美しい子どもをうむ、といった母を思い出します。 僕は男です。 美しい妻に会えるかも知れません。