top of page

近況を随筆に書いてみました


戦争に強い農業です

             橋 てつと

社会派クレイマーを自称して、月一の新聞世論投稿と週一のマスコミへの電話を続けてる目的は啓発とマスコミ監視である。職業はヒプノセラピストとして紹介されている。昔は登攀家(クライマー)だった。大学山岳部に属して派手色のヘルメットを着けていたが色を塗り替えデモに出た。七十年安保と沖縄返還に時代が突入した事による。それを機に国語から社会科教師へと希望を変更した。マルクス、サルトルにかぶれたからである。

 どうにか高校教師に就いた後はヘルメットの要らない山行を復活させ、北海道は大雪山、四国は石鎚と山を歩いた。個人山行である。後に単行本第一作を「単独行」とし、本協会発表作「ヒプノシリーズ」の主人公名をブンタローとしているのも登山家加藤文太郎にあやかってである。結婚と同時に奄美群島勤務となり、十五年近い山行歴に終止符を打った。

 そこで次は海人(ウミンチュ)になった。七年の島在住で海の仲間から学んだのは魚の捌き方、宴会の持て成し方である。自宅で宴会の時、仲間は伴侶さんの手を借りる事無く魚料理を拵えていた。相方は宴に同席するだけである。これなら、宴会やると亭主が口にしても伴侶は断りにくいだろう、マネする事とした。元より山ヤで自炊をやっていたのが、一層調理自慢となった。離島後に市民運動仲間三十人に一人で宴会料理を引き受けた事もある。船舶免許も取っていたので小型遊漁船を手にしたが、管理の面倒からゴムボートに乗り換えて海人は退職まで三十五年ほど続けた。最後の勤務地は農業科のある高校だったのだが、科は以前に廃止されていて空き農地があった。放置しておけば雑草や雑木に覆われて管理不能となる。そこで、仲間と鍬を入れ畑の管理を始めた。収穫野菜は同僚に提供した。組合非組を問わず、敵対する機会もあった管理職にもあげていたので、職場の輪づくりには役立っていたのではないか。退職後四年間非常勤講師をしていたところ、十歳年下で教え子だった妻が個人山行に逝ってしまった。霊山、不帰の山登りである。もっと大事にすれば良かったと思ったが後の祭り。幸いにして三人の子は職を得て独立していた。後はわが身の処し方である。

 妻が借りてやっていた農地を引き継ぐ事とした。六十坪〈凡そ二百㎡〉は優に超える広さであるが、鍬と鎌の手作業でやっていたら、子供達がミニ耕運機をプレゼントしてくれた。ビーバー草刈り機も手に入れ、農薬不使用の有機農法でいくと決めた。問題は雑草対策なのだが強い味方を見つけた。穴あきビニール、マルチである。これを敷き詰めれば効果ありなのだ。が、問題は他にも出てきた。種子法改悪により自家産種子を採取してはならない。販売している種は殆どがF1種なのである。遺伝子組み換えがなされていて農薬に強いが種子を残さない。一代限りなので毎年種を購入させられている。苗から購入している人も多い中、自分は種まき主義なので一度に大量の作物が生産される。でも、作物を貰ってくれる人がいないのである。近所の知り合いは借地をして畑作をやっているし、子供食堂にも差し入れたりもしているのだが。農法について訊かれる事も増えた。経験浅い農家ながら、ネットで学んだ知識を鼻高くして教えている。元より「畝」と言う字くらいは読める、「千畝」を読めないどこかの首相とは訳が違う。根物が主流となった。葉物は殺虫剤を使わない限り虫に弱い。無農薬でいくとなれば手で取り除くしか無く、毎日発生する大量の虫を除去するには多くの労働時間を必要とする上に、葉物は保存が利かないからである。根物であるさつま芋は保存が利く。更に干す事で甘味が増して焼き芋なら究極の美味となる。そこらの和菓子より旨い。落花生は酒のツマミに最適である。玉ねぎも健康食品である。最近ハマりだしたのがニンニク、らっきょうである。発酵させると栄養度は増し、免疫効果ときたらサプリメントをも凌ぐ最高のアンチエイジング食品なのである。これら自産食を自営のハウスでゲストに出している。ヒプノセラピーをしている吾が「ヒーリングハウス北緯三十一度」は全作家HPの会員紹介にアップして貰っているのでご覧いただきたい。最後に、感じている異変がある。「沈黙の春」である。畑に立つとやってきていた鳥さん達が激減しているのだ、蝶や蜂類の減少は以前からだったが。相手をしてくれていた鳥さん達がいないのは寂しく、連れ添いを捜す事とした。が、三高ならまだしも四高に近い身である。高血圧、高尿酸、高血糖に加えて高齢。来てくれるもの好きはいない、そこで「売り」を考えた、「災害や戦争に強い農業やってます」である。戦中戦後の食糧難の時代に農家が「独り勝ち」したのは歴史が証明している。だが、戦争前夜を思わせる不穏な空気にもかかわらず、この「売り」に飛びついてきた女はまだいない。「ハ? 食管法? 何それ」である。

橋ーー若干のフィクションが入ってます。

   ラスト二行です。解ってたって! スゴ~イデスネ( ´艸`)

Recent Posts
Archive
bottom of page