ローラを「傷だらけ」にするな!
辺野古の新基地建設で日本政府が14日から海に土砂を投入する作業を強行したことに対し、反対の声が高まっている。なかでも注目を集めているのは、市民がそれぞれの問題意識に基づいてアメリカ政府に直接提言・請願するためのホワイトハウスの請願書サイト「We The People」でおこなわれている、辺野古新基地建設の作業を来年2月24日の県民投票まで停止することを求める署名活動だ。
この署名には、先日、本サイトでも紹介した沖縄出身のタレント・りゅうちぇるをはじめ、ウーマンラッシュアワーの村本大輔、ミュージシャンであるASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文や七尾旅人、Base Ball Bearの小出祐介、ソウル・フラワー・ユニオン、俳優のうじきつよしやラサール石井、東ちづる、作家の平野啓一郎、映画監督である塚本晋也や想田和弘など、数多くの芸能人や文化人も協力。
しかし、こうしたなかでも強い影響力を発揮したと思われるのが、ローラの署名呼びかけだ。
ローラは18日の朝、インスタグラム内のストーリーにこう投稿した。
〈We the people Okinawa で検索してみて。美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかもしれないの。名前とアドレスを登録するだけでできちゃうから、ホワイトハウスにこの声を届けよう〉
ローラのインスタグラムのフォロワーは520万人で、国内では渡辺直美に次ぐ発信力をもっている。そんなローラが署名を呼びかけたことの影響は計り知れず、実際、18日15時ごろに署名はホワイトハウスが対応することになっている10万を突破。本日20時時点で12万8000を超え、いま現在も増え続けている。
こうした動きに、玉城デニー・沖縄県知事も反応。昨晩、自身のTwitterで〈りゅうちぇるさん、ラッシュ村本さん、ローラさん、たくさんの方々。(すみません)繋がっている嬉しさを多くの皆さんが誇りに感じていると思います。深く感謝です〉とメッセージを発信した。
だが、このローラの署名呼びかけに対して、案の定、バッシングも起こっている。〈ローラは反日〉〈ローラも化けの皮剥がれたな。反日左翼芸能人に成り下がったか〉〈タレントが政治的発言したらオワコン〉といった非難の声のほか、“ネトウヨジャーナリスト”である石井孝明氏も〈この人、日本人でなかったら、内政干渉行為と普通の国では騒ぎになりますけど〉などと投稿した(現在は削除)。
「内政干渉」って、いつからローラは国になったのか(苦笑)。中学生の教科書にも載っているような言葉の意味もわかっていないこのような人物がジャーナリストを自称していることにも驚くが、〈この人、日本人でなかったら〉という物言いは、ローラがミックスルーツであることを指して差別的な視点からも非難していることはあきらかだ。
しかも、ローラがこうした批判に晒されるのは、これがはじめてではない。熊本地震で炊き出しボランティアをおこなったり、ユニセフのイベントに参加し1000万円の寄付をおこなったことをインスタグラムで報告した際などには、SNS上では〈偽善者〉〈売名行為〉というバッシングが起こり、ユニセフへの寄付の件では夕刊フジ(ZAKZAK)が「これまでのキャラとは一変」「セレブ気取り」「ほかにやることがあるのでは」などと言及。ハリウッド作品に出演するなど海外での活動が広がるローラが、海外スターの社会貢献活動に「感化されている」と非難したのだ。
仮にローラが海外の仕事をしていくなかでノブレス・オブリージュの意識が浸透している海外セレブの姿勢を見習ったとして、一体それの何が悪いのか。たとえ海外セレブを真似してのファッションだったとしても、何もやらない
よりはよっぽどいい
バッシングに晒されても信念を曲げず貧困や環境問題を発信し続けるローラ
社会問題に目を向けるたびに必ず起きる、こうした足を引っ張ろうとする卑劣なバッシング。しかし、それでもローラは行動をやめることはなかった。以前から強い関心をもってきたプラスチックごみによる海洋汚染問題の発信をつづけ、〈少しずつみんなで使い捨てプラスチックをなくしていこう〉(10月28日のインスタグラム投稿)と呼びかけてきた。
バッシングに晒されてもけっして曲げない信念。そもそも、ローラの社会貢献に対する意識は、最近「海外セレブを意識」してというようなものではまったくない。もちろん「迷走」などではなく、むしろ強い意志に基づいたものだ。それも、バラエティ番組で「オッケー」とお茶の間を沸かせてブレイクするよりはるかに前からもちつづけている確固たるものなのである。
本サイトではたびたび紹介してきたが、ローラは「ViVi」(講談社)2016年1月号に掲載されたロングインタビューで、自身が長年抱いてきた夢について、こう語っている。
「事務所に入った時に社長さんに話した夢というか、最終的な目標があって――。お金がなくて勉強できない子供たちってまだ世界にたくさんいて、その気持ちは私もすごくよくわかる。自分が苦労してきた部分でもあって、私にとってはすごく現実的なことだから。そういう人たちの役に立ちたいの。ずっとその想いは変わってなくて、これからはもっと積極的にやっていきたい」
ローラはバングラデシュ人の父と、日本人とロシア人の親をもつ母親とのあいだに日本で生まれた。ローラは1歳でバングラデシュへ渡り、6歳で帰国するのだが、その後、両親は離婚。父は再婚するが、「女性自身」(光文社)の記事によれば、ローラと双子の弟、継母と父のあいだに生まれた双子、継母の両親という家族8人でアパートに暮らしていた時期もあった。ローラは働く父と継母に代わって、小さな双子のきょうだいにごはんを食べさせたり、オムツを変えたりとよく面倒を見ていたという。
そうした苦労をローラは自ら語らない。だが、ただひとつ、こんな話をしている。
「中学2年の時に、友達にすごく一生懸命説明したのに『ちょっと何を言ってるのか分からなかった』って言われたのがすごくショックで、そこからかなり頑張って中3の頃には普通に会話も出来てたと思う」(前述インタビュー、以下同)
高校時代はホームセンターでアルバイトし、渋谷でスカウトされモデルの世界に飛び込んで一躍“タメ口キャラ”でブレイク。だが、いまもローラには“もっと勉強をしたかった”という思いが強いのかもしれない。事実、ローラは地道に英語の勉強をつづけてハリウッドデビューを射止めたが、学ぶことが自分の可能性を広げるということを、彼女は身をもって知っているのだろう。
ユニセフで語ったローラの思い「リスクがあっても人と地球の幸せのために」
家庭が貧しいために勉強ができない、進学できないという子どもたちの存在は、なにも発展途上国だけの話ではない。日本では7人に1人が貧困といわれているにもかかわらず、国立大も授業料を大幅値上げしたり、奨学金返済の金利は異常に高いままだ。だが、社会では「貧しいことを理由に進学できないと言うのは努力が足りないから」「貧乏でも努力をすればのし上がれる」などと自己責任論をぶつ人は相変わらず多い。
しかし、子どものころから苦労を背負い、努力によって道を切り拓いてきたローラは、そんなことは言わない。
「今こうして私がここに居られるのは、差し伸べてくれる手があったり、諦めないでいてくれた人たちがいたから――。私も誰かのそういう手になりたいし、そのことを諦めたりもしたくない」(同前)
そして、今年8月にユニセフに寄付したのは、こうしたローラの思いがあってこその行動だった。ユニセフのイベントに参加したことを報告したインスタグラムへの投稿で、ローラはこう綴っていた。
〈わたしはいま頭の中が子供達や動物の幸せと地球をまもることでいっぱいです。それと調べるほど許せないこともたくさんあり、悲しい気持ちになります。今回は自分ができる事として1000万円を寄付する事にしました。まだまだ足りないです。何をするために生きているか何をしないといけないか冷静に考えて自分の感情を信じて生きて行こうと思います。リスクがあっても嘘のない、人にとっても地球にとっても幸せが続くことに精一杯力を注いで頑張っていきたいです〉
今回、辺野古の海を守るために署名を呼びかけたことも、「リスクがあっても嘘のない、人にとっても地球にとっても幸せが続くこと」に力を注いでいきたいというローラの思いからの行動だったのだろう。
自分のことだけではなく弱い存在の人たちに心を寄せ、バッシングを受けても怯むことなく社会の問題を考えつづけ、行動する。そんなローラに「反日」「偽善者」「政治的発言はやめろ」などという言葉を投げつけて邪魔をしようとする輩たちはいかに卑劣なことか。だが、きっとこれからもローラは、そんな浅ましい非難に負けることはないはずだ。ローラの行動に、大きな拍手を送りたい。―――リテラ19日より転載
(編集部
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