玉城勝利を・日刊ゲンダイは
驕れる安倍政権に痛烈な一撃だ。事実上の一騎打ちとなった沖縄県知事選。数千票差で決する大接戦とみられていたのが、フタを開けてみれば、約8万票も差をつけられての惨敗だった。組織をフル稼働させ、万全の態勢で臨んだ自公は、まさかの敗北に真っ青になっている。 ■上から目線のゴリ押しはもう通用しない 9月30日投開票された沖縄県知事選は、「オール沖縄」が支援した玉城デニー前衆院議員(58)が、自民・公明・維新・希望推薦の佐喜真淳前宜野湾市長(54)を大差で破って初当選した。一部メディアでは午後8時の投票終了と当時に「当確」が出る圧勝だった。沖縄知事選の過去最多得票数を記録した。
自民党は二階幹事長や菅官房長官、客寄せパンダの小泉進次郎筆頭副幹事長らが何度も沖縄入りするなど、国政選挙を上回る力の入れようだった。これで負けたら目も当てられない。「安倍首相を看板にして来年春の統一地方選、夏の参院選を戦えるのかという話になってくる。求心力の低下は避けられません」(自民党関係者) それにしても、異様な選挙戦だった。台風の直撃もあって、期日前投票が有権者の35%を超えたのも異例だが、佐喜真陣営は米軍基地の辺野古移設という最大の争点を隠蔽。カネと物量で圧倒し、業界団体に「期日前実績調査票」を提出させるなど、徹底的に締め付けた。テレビでは自民党のCMがバンバン流れ、ネット上には玉城氏に対する中傷デマが飛び交った。 現地で選挙取材を続けたジャーナリストの横田一氏が言う。 自民党総裁3選を決めたばかりの安倍首相にとって、このダメージは計り知れない。
何しろ自公両党は党幹部が沖縄に常駐し、所属議員や秘書、カネをかつてない規模で投入する総力戦を展開。
「玉城陣営は『アリがゾウに挑むようなもの』と言っていたほどで、カネも人員も宣伝量も圧倒的な差がありましたが、最後は沖縄の良識が勝ったのだと思う。辺野古移設をゴリ押しする安倍政権の意を受けた佐喜真陣営は、選挙戦では辺野古のヘの字も言わない二枚舌で、携帯電話料金の値下げや公共事業費アップなどカネの話ばかりしていた。札びらで顔をはたくようなものですが、知事に携帯代を下げる権限はないから偽札なのです。あまりに沖縄県民をバカにしている。経歴から日本会議との関係を消したり、デマを拡散したりと、勝つためならルールも無視する汚いやり方には、与党支持者からも反発の声が上がっていました。本土の安倍政権にウチナーンチュが怒りの声を示したわけで、草の根の勝利です」 ■問われたのは体質そのもの 玉城氏は無党派層の7割から支持を得たほか、自民、公明支持層の2割程度も玉城氏に流れたとみられる。中央の意向を押し付ける強権的なやり方が嫌われたのだ。
争点を隠し、勝つためならデマも利用し、「こっち側につかなければ干す」と脅しをかける。団体を締め付け、バラマキで懐柔する。もう、こういう傲慢なやり方は通用しないということだ。総裁選で安倍首相を圧勝させるため、上から締め付けたことが反発を招いて、地方票が伸び悩んだのと構図は同じである。 「総裁選の地方票で党員から見放されたのに続き、沖縄の有権者からも『NO』が突き付けられた。これは深刻な痛手ですよ。問われたのは、民意を無視して基地移設を押し進める安倍政権の体質そのものだからです。知事選の結果は、数の力を背景に、権力を振りかざして少数派を黙らせる安倍1強政治に対する不信任といっていい。これでも謙虚にならず、内閣改造でオトモダチ重用人事を断行するようなら、国民世論が黙っていない。政権の“終わりの始まり”がハッキリ見えてきました」(政治評論家・野上忠興氏) 沖縄県知事選での惨敗は、安倍政権ご臨終の一里塚だ。