イージスアショア不要
イージス・アショア2352億円 米国に半額は負担させるべき
防衛省は8月31日、2019年度予算の概算要求を発表。過去最大の5兆2986億円は「今年度当初予算より2・1%増」と報じられた。だが、この概算要求には約2200億円と見られる沖縄の米軍移転経費が“事項要求”として記載され、その金額は計上されていない。今年度当初予算には当然それが入っているから比較は非合理だ。そこで今年度当初予算から米軍移転経費を除いて比べると7・2%という驚異的な増大だ。今年度の伸び率は0・8%だった。 防衛費を押し上げる最大の費目は「イージス・アショア」(陸上イージス)の2352億円だ。これは初年度分で、秋田、山口に配備する2基の総経費は4664億円と発表されている。これには迎撃用ミサイル(1発約40億円)の費用は含まれず、1基当たり定数の24発を発注すれば2基で約1900億円。さらに一部の用地取得や整地、宿舎などの建設、周辺対策などを加えれば7000億円にも達しそうだ。 陸上イージスは本来自衛隊が求めていた物ではない。日本に輸入拡大を迫るトランプ政権の意向をのんだ安倍政権の“政治主導”によるものだから2013年12月に決めた「防衛計画の大綱」(約10年を見通す)にも「中期防衛力整備計画」(5年)にも入っていなかった。
防衛省は「弾道ミサイル迎撃用のミサイルを搭載するイージス艦は現在4隻。艦艇の4分の1は定期整備にドックに入る。3隻のうち2隻を常に弾道ミサイル警戒配置に洋上に出し続けるのは無理があるから陸上イージスが必要」と説き、今年の防衛白書326ページの解説にも書いている。現在の4隻では苦しいのはたしかだが、だからこそ「大綱」「中期防」はそれを8隻にすることを決め、7隻目の「まや」は7月30日進水、2020年に就役の予定だ。21年にはさらに1隻が就役、8隻態勢が完成する。陸上イージスの納期は「契約の6年後」だから早くて2025年だ。 8隻中6隻が出動可能なら、うち4隻を2交代で弾道ミサイル警戒配置に付け、他の2隻はイージス艦の本来の任務である艦隊防空にあてられる、と海上幕僚監部は説明していた。陸上イージスは不要なのだ。イージス艦が近く8隻になることは言わず「4隻では無理だから陸上イージスが必要」と言うのは作為的で、これを地元自治体への回答書や白書などの公文書に書くのは改ざん同然の信用失墜行為だ。
日本のミサイル防衛の最大の弱点は迎撃用ミサイルの弾数の極度の不足だ。イージス艦の垂直ミサイル発射機には90発、新型艦では96発の各種ミサイルを入れられるが、現在は各艦8発しか迎撃用ミサイルを積んでいない。旧型のミサイルでも1発16億円もするからだ。これでは相手が核つきと通常弾頭つきのミサイルを混ぜて発射する場合、8目標に対処すると「任務終了、帰港します」とならざるを得ない。 地点防衛用の「PAC3」(射程20キロ、新型は30キロ)も同様だ。自走発射機34輌に各16発が入れられるが4発しか積まず、不発や故障も考え、1目標に2発ずつ発射するから1輛で2目標にしか対処できない。ミサイル防衛は形ばかりなのだ。ミサイル防衛に関わった自衛隊の上級幹部達に私が「陸上イージスよりは弾数を増やす方がまだ合理的では」と言うと、ほぼ例外なく「おっしゃる通り」との反応が返る。
陸上イージス用のミサイルは当面1基当たり4発購入と見られる。防衛省の地元への説明や白書等では「北朝鮮が日本を射程に収める弾道ミサイルを数百発配備している」と脅威を強調し、陸上イージスの導入で防衛能力が「抜本的に向上する」と言う。だが数百発に対し4発とか、定数にしても24発では焼け石に水。「抜本的向上」は極端な誇大広告だ。 主として北朝鮮北部山岳地帯のトンネルに潜む弾道ミサイルが首都圏に向かうのなら能登半島上空を通過、近畿地方へは隠岐島付近を経由する。陸上イージスが日本防衛のためならそちらに配備する方が効果が高い。秋田上空をへる軌道はハワイに向かい、山口上空を通るのはグアムに向かうコースだ。導入される新型の迎撃ミサイルは射高1000キロを超え、ハワイ、グアムに向かってなお上昇中の弾道ミサイルを迎撃する能力があると見られる。 米国はルーマニアとポーランドに陸上イージスを配備中で、韓国に「サード」を置いたが、その経費は全額米国が負担し、米軍が運用する。陸上イージスはハワイ、グアムの防衛にも役立つ以上、少なくとも半額ぐらいは米側に負担させるのが筋だろう。ーーー田岡俊次軍事評論家 日刊ゲンダイ9/17より転載
橋ーー「イージスアショア不要論」を新聞投稿したのですがボツでした。ひと月前です。アショアがハワイ。グアムを防衛目的とする日米同盟強化の目的と訴えたのですが。