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オスプレイ欠陥機。現代ビジネス9/9


沖縄県の米海兵隊普天間基地に配備されている垂直離着陸輸送機「MV22オスプレイ」が8機一斉交換となった。米軍側と日本の防衛省は「通常の機体交換」と口を揃えるが、これ以上の説明はない。

そもそも機体を丸ごと交換すること自体、「通常」とはいえない。それも同時に8機である。普天間基地に配備されて5年も経過しないうちに、墜落などで2機が失われたオスプレイ。いったい何が起きているのか。

シラを切り通す米軍

この問題は、全国紙やテレビで報道されていない。最初から説明する必要があるだろう。

8機のオスプレイが山口県岩国市の米海兵隊岩国基地に到着したのは7月7日だった。大型輸送船に乗せられ、6月22日に西海岸にあるカリフォルニア州のサンディエゴ海軍基地を出港した。

岩国基地への陸揚げに際し、日本政府や岩国市への事前通告はなかった。今年5月、横浜港にある米陸軍横浜ノース・ドックに陸揚げされた米空軍仕様の「CV22オスプレイ」5機の場合、到着直前の1日前に米側から通報があったが、今回は岩国基地に到着して4日も経過した7月11日の事後通告だった。

しかも「保安上の理由から機数は言えない」というのだ。防衛省に取材しても「機数は聞いていない」。岩国市は基地の状況を把握するため、民間の「情報提供協力員」に基地監視を委嘱している。その専門家が機数を数えているにもかかわらず、シラを切り通した。

陸揚げの際、確認された機体番号から、カリフォルニア州のミラマー基地所属の4機と東海岸のノースカロライナ州にあるニューリバー基地所属の4機と判明、米本土の海兵隊基地からかき集めたことがわかる。ブロックCと呼ばれるレーダーなどを強化した機体も含まれていた。

岩国基地には今年6月末、普天間基地のオスプレイ8機が飛来し、駐機場に置かれていたことが確認されている。これらの機体が、交換する8機を載せてきた大型輸送船に入れ替わりで積み込まれ、7月のうちに米本土へ向けて出港した。

岩国基地に陸揚げされた8機のうち、7機は7月中に普天間基地へ飛び立ったが、1機は滑走路で立ち往生。8月3日になって、ようやく普天間へ向けて離陸した。交換する機体に不具合があったとすれば、何のための交換なのか、という話である。

普天間配備のオスプレイは2012年7月に12機、翌13年7月にも12機の合計24機が岩国基地に陸揚げされた。

ところが、16年12月、沖縄県名護市の浅瀬に1機が不時着水して大破、17年8月にはオーストラリアで揚陸艦への着艦に失敗して洋上に墜落、兵士3人が死亡している。配備開始から5年も経たないうちに2機が失われているのだ。失われた2機はすでに補てんされている。

筆者は今回の交換について、普天間基地の広報部に「8機一斉に交換する理由は何か」「交換の理由が定期整備なら(オスプレイの定期整備を行う千葉県の陸上自衛隊)木更津駐屯地を活用しないのはなぜか」とメールで問い合わせた。

これに対する回答は、以下の通りである。

「この交換は、航空機および機器の通常の交換の一部である。入ってくるオスプレイと普天間基地の機体との1対1の交換が行われる。特定の機体は、アップグレードの予定。機数の増減はなく、沖縄のオスプレイの戦力レベルを変更する計画はない」

回答らしい回答は「通常の機体交換」「一部はアップグレード」の部分だけ。機数の増減や戦力レベルなど聞いてもいないことに答えて、肝心の機体交換の理由には触れていない。

機体内部がサビと腐食だらけ

防衛省に取材すると、沖縄調整官付は「米側から『通常の機体交換』と聞いている。それ以上は、米軍の運用にかかわることなので聞いていない」とまるで人ごとだった。

普天間基地を抱える宜野湾市基地渉外課にも問い合わせたが、「米軍は『保安上の理由』として、交換した機体の数さえ明かさないのです」とのことだった。宜野湾市役所は普天間基地に隣接している。「よき隣人でありたい」と繰り返す米軍が、機数という基礎データさえ明らかにしないのだ。

筆者は「定期整備の必要性から交換したのでは?」という仮説を立てていたが、岩国市や宜野湾市の問い合わせに、交換した機数さえ答えようとしないのは、「8機一斉交換」の事実そのものを隠したいから、ではないだろうか。

そのナゾに迫るには、筆者が米軍に問い合わせた「木更津駐屯地での定期整備」についての解説が必要だろう。

航空機は、定められた飛行時間ごとに分解され点検を受ける。オスプレイも例外ではなく、5年に1回の割合で、分解点検を含む定期整備が必要とされている。

防衛装備庁は、普天間配備のオスプレイと陸上自衛隊が導入を進める17機のオスプレイの共通整備基盤として木更津駐屯地の活用を決め、自衛隊の格納庫1棟を整備工場に改修した。米軍の入札により、整備は「スバル」(旧富士重工業)が請け負い、約30人の整備員が機体整備にあたることになった。

最初の1機は昨年1月、普天間基地から飛来し、翌2月から定期整備に入った。防衛装備庁は「1機あたり整備工期は3、4カ月程度」と説明していたが、今月になって9月5日以降の試験飛行開始を発表した。つまり、整備に1年8カ月以上もの長期間を要したことになる。

これにより「定期整備は年5~10機」とする防衛装備庁の目算は外れた。最初の1機の定期整備が順調に終わっていれば、交換した8機は米本国へ送り返すことなく、木更津で整備できたのかもしれない。

定期整備が異常に長引いたことについて、防衛装備庁の坂本大祐事業管理監は「最初の一機なので慎重にやっている。開けてみないと分からない状態のところもあり、部品を発注しても米国から届くまでに時間がかかる」と話す。

整備の「不慣れ」が主な原因との説明だが、防衛省関係者は「事態はもっと深刻でした。乗員や兵士が乗る部分の床板を開けてみたら、機体の内側はサビと腐食だらけ。自衛隊が丁寧に使っている機体しか見たことのない整備員たちは『これは整備ではない、修理だ』と驚いていた」と明かす。

手の施しようがなく、そっくり交換しなければならない部品が思いのほか多く、その部品の修理・交換のために必要な工具も米国から取り寄せたという。その間、作業は滞らざるを得ず、整備の遅れにつながった。

10月からは首都圏上空でも飛行する

では、どうしてそれほど腐食やサビが多いのか。

前出の防衛省関係者は「普天間基地の自然環境と地勢的な条件が影響している。ただでさえ潮風で機体が腐食する沖縄に置かれているうえ、米本土より近いので中東など海外へも頻繁に派遣されている。自衛隊と比べて、使い方も荒いようだ」と解説する。

8機一斉交換の背景には、過酷なまでのオスプレイの運用があるというのだ。

米海兵隊は、普天間以外の海外基地にオスプレイを配備していない。例えば、オスプレイを中東へ派遣するには米本土から送り込むよりも沖縄から派遣した方が早い。現にオーストラリアで墜落したオスプレイも普天間配備の機体だった。

機体を酷使した結果なのだろうか。普天間配備のオスプレイは、報道されているだけで墜落や緊急着陸が合計11回に上る。今年8月14日には、同じ日に鹿児島県奄美市の奄美空港と、沖縄の米空軍嘉手納基地に緊急着陸したばかりだ。

配備から6年も経過していないうちに、これほど墜落したり、緊急着陸したりした在日米軍の航空機は他に例がない。以前から指摘されてきた機体構造の問題にもあらためて目を向ける必要があるだろう。

2009年6月、当時、国防分析研究所主席分析官だったアーサー・リボロ氏は米連邦下院の委員会で「ヘリコプターがエンジン停止した場合、風圧で回転翼を回転させ、安全に着陸できる『オートローテーション(自動回転)』機能が欠落している」とオスプレイの構造的欠陥を証言した。

16年12月にあった名護市でのオスプレイの不時着水・大破事故の原因について、リボロ氏は琉球新報の取材に対し、「事故は操縦士のミスもあるが、そもそもの機体デザインの設計ミスも追及されるべきだ」と指摘し、「人口密集地で事故が起こればどれだけ危険か、米軍や日本政府はもっとリスクを考え、人口密集地では飛ばせないなど対策を取るべきだ」と訴えている。

防衛省は8月、在日米軍が空軍版のCV22を10月1日から都内の米空軍横田基地に5機配備すると発表した。最終的に10機まで増えるという。

また、陸上自衛隊が導入するオスプレイは佐賀空港への配備が間に合わず、やはり10月ごろには木更津駐屯地へ5機が配備され、最終的には17機が導入される。

海兵隊版MV22の10万飛行時間あたりのクラスA(被害が200万ドル以上か、死者の出た事故)事故率は、海兵隊保有の航空機でトップの3.24。CV22のクラスA事故率は、より高い4.05(昨年9月現在)である。

米国の専門家が「人口密集地を飛ぶべきではない」と進言するオスプレイが、間もなく、人口密集地の首都圏上空を飛ぶことになる。  

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