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アベ・トランプ


 カネの切れ目は縁の切れ目。「揺るぎない絆」なんてしょせん、こんなものである。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が6日、トランプ大統領が巨額の対日貿易赤字を問題視し、安倍首相との友好関係が「終わる」と語った――と報じた。  コラムニストのジェームス・フリーマン氏がトランプに電話取材した内容をまとめた記事で、同紙は〈トランプ氏はなお、日本との貿易の条件で悩んでいる〉と指摘。トランプは安倍との良好な関係に触れつつも、貿易赤字の解消のために〈日本がどれだけ(米国に)払わなければならないかを伝えた瞬間、(良好な関係は)終わる〉と語ったという。  2017年の対日貿易赤字は689億ドル(約7兆6000億円)。赤字幅の国別順位では中国、メキシコに次ぐ3位だ。トランプは6月の日米首脳会談の際も、日本の通商政策に対して「真珠湾を忘れていない」と不快感を示した、と米紙ワシントン・ポストが報道。日本政府は事実関係の否定に躍起になっていたが、今回はコラムニストの電話取材を踏まえた記事だから信憑性は高い。

最大の理由は拉致問題  11月の中間選挙を控えたトランプにとって貿易赤字の解消は喫緊の課題だ。中国、メキシコに続き、次の標的は日本、ドイツだろう。対日貿易赤字の大部分は自動車産業だが、これを解消するには農産物の大幅な市場開放ぐらいしか手がないが、ここに手を付けたら地方の猛反発は必至。日本政府も到底、受け入れられない話だ。さらに今、トランプにとって最大のネックになっているのが北朝鮮の拉致問題だという。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。 「中間選挙に向けて北朝鮮問題を進めたいと考えていたトランプ大統領は、非核化と経済支援を同時進行させるため、日本と韓国に費用を負担させようと考えていたが、日本は拉致問題の解決なしには金を出さないスタンスで、北も強硬路線一辺倒の安倍政権との日朝首脳会談は断固拒否です。つまり、安倍政権では北朝鮮問題は1ミリも進まない。となれば、トランプ大統領にとって、もはや安倍首相の利用価値はないと考えても不思議ではないでしょう。総裁選の最中のタイミングで“三くだり半”のような報道が出ること自体、安倍首相に対する何らかのメッセージではないかと勘繰ってしまいます」

安倍首相はこれまで散々、拉致問題を政治利用して地位を築いてきたが、今度は逆に拉致問題が足元を揺さぶり始めたのだ。安倍首相は総裁選で勝っても、直後に予定されている日米首脳会談でトランプから2国間の自由貿易協定(FTA)の締結などを強く求められる可能性が高い。トランプから「シンゾウ、You’re fired!(おまえはクビだ!)」と宣告される安倍首相のひきつった顔が今から容易に想像できる。

      日刊ゲンダイ9/9より転載

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