福島・今
「日本政府は即刻対応しなければならない」――。国連人権理事会に各国の人権状況などを報告する特別報告者が16日、東京電力福島第1原発事故の除染作業員ら数万人が被ばくの危険にさらされている、として「深刻なリスク」を懸念する声明を発表した。 声明では〈作業員には外国人労働者やホームレスが含まれているとの情報がある〉とし、これらの作業員は〈被ばくのリスクを十分に知らされず、経済的な苦境から危険な作業を強制されるなど搾取されている恐れがある〉と指摘。さらに、人材派遣会社を通じて作業員を雇用していることも〈労働者の権利侵害が起きやすい状況〉を招いている可能性があると警鐘を鳴らし、日本政府に対応を求めた。 人権理事会は47カ国の人権理事国から構成されていて、現在、日本も人権理事国だ。その人権理事会の特別報告者が福島原発作業員の健康被害に疑義を唱えているのだから、政府としては「早急に対応する」と答えるのが当たり前。だが、外務省は「声明はいたずらに不安をあおり混乱を招く。風評被害に苦しむ被災地の人々をさらに苦しめかねず遺憾」とガン無視するつもりだ。
安倍政権は「共謀罪」法の時も、同法がプライバシーや表現の自由を制約する恐れがあると指摘した人権理事会のケナタッチ特別報告者に対して「指摘、批判は全くあたらない」と真っ向から反論していた。ところが、今年3月にスイス・ジュネーブで開催された人権理事会で、日本やEUが共同提出した北朝鮮の人権侵害についての決議が採択されると、一転して〈歓迎します〉だ。自分たちの提案なら「OK」だが、自分たち以外の指摘は「NO」とは、ご都合主義にもホドがある。一体、どのツラ下げて人権理事国なんて言っているのか。 福島原発では先月、2号機の原子炉建屋最上階の床面の放射線量を計測したところ、排水口付近でガンマ線とベータ線の合算値で最大毎時630ミリシーベルトが確認されたばかり。事故から7年経っても高線量の場所はあちこちに点在しているのだ。人権理事会が作業員の健康状態を不安視するのは当然だろう。安倍政権が人権など屁とも思っちゃいないことがよく分か
る。----日刊ゲンダイ8/18より転載