なんで騒いでるの、とアベバカ
杉田水脈議員の「LGBTは生産性がない」発言への抗議がいまだ止まない。都内では、5000人が集まった7月27日の自民党本部前抗議につづき、今月5日にも渋谷駅前でLGBTQの当事者らを含めた抗議活動があり、同日には兵庫県宝塚市や大阪市でも抗議がおこなわれた。さらに7日には、障がい者や難病患者の団体「生きてく会」が、杉田発言は「出産できない障害者や患者の人権をも踏みにじるもの」として、杉田議員の謝罪と安倍首相による処分を求めている。
杉田発言に怒っているのは当事者だけではない。今月4・5日におこなわれたJNN世論調査では、杉田議員の「LGBTは生産性がない」発言に「非常に問題がある」「ある程度問題がある」と回答した人は83%に達し、同じ期間に実施された朝日新聞の調査でも、杉田発言に対する自民党対応に「問題がある」と回答した人は61%にのぼっている。
こうした結果の要因になっているのは、いまだに安倍首相と自民党が杉田議員を“無罪放免”にしているからだ。自民党は大規模抗議から約1週間も経った8月2日になって、ようやくホームページに党の見解を掲載。しかし、それは杉田発言を〈問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある〉としたものの、一方で〈個人的な意見〉と片づけ、〈今後、十分に注意するよう指導した〉という無責任極まりないもの。つまり、何の処分も下さなかったのだ。
さらに、この党見解が公表された同じ2日の午後、安倍首相もついに口を開いた。視察先の宮城県東松山市で記者の取材に対し、安倍首相ははじめて杉田問題について、「人権が尊重され、多様性が尊重される社会をつくっていく、目指していくことは当然のことであろうと思う。これは政府与党の方針でもある」と語ったのだ。
「人権・多様性が尊重される社会をつくる」などというのは当たり前のことだが、憲法改正によって基本的人権に制約を加えようとしているこの人に言われても、何の説得力もないだろう。だいたい、「政府与党の方針」であると安倍首相は言うが、同日のうちに自民党ナンバー2の二階俊博幹事長は「こういうことはそんなに大げさに騒がないほうがいいんです」などと述べた。自民党の本音は「これぐらいで騒ぎやがって」だというのがミエミエだ。
そして、安倍首相は杉田議員の発言をまったく問題視せず、無反省でいるということがはっきりとする報道があった。
自民党がかたちばかりの見解を公表し、安倍首相がはじめて杉田問題にコメントした2日の夜、安倍首相は赤坂にある行きつけの中国料理店「赤坂飯店」でおこなわれた自民党山口県連青年部・青年局の会合に出席。各紙の動静では「岸信夫県連会長らが出席」と書かれている。
だが、「週刊文春」(文藝春秋)によれば、じつはこの場には、問題のあの人物が参加していたというのだ。そう、杉田水脈議員だ。
杉田議員はこれまでも指摘してきたように、安倍首相が「素晴らしい」と称賛し、昨年の衆院選では自民党公認として比例中国ブロックから立候補。比例単独候補としては最上位という当選が確実に約束された厚遇を受けた。さらに今年6月からは、安倍首相と同じ自民党山口県連に所属している。
そして、問題の2日夜、杉田議員はこの自民党山口県連の会合に参加したというのだ。「週刊文春」では、県連関係者がこう語っている。
「杉田氏に反省の色は見えません。八月二日夜、赤坂の中華料理屋で、首相も出席して県連の会合が行われた。ここに杉田氏は『すみませーん、お騒がせしています』と笑顔で現れたのです」
文春が報道! 笑顔で会合に現れた杉田、「なんで騒いでるの」とうそぶく安倍
常識的に考えれば、これだけ世間を騒がせている渦中の議員で、しかもいまだ公の場で何ら説明していないのだから、いくら県連所属でも首相同席の会合への出席は県連側で自粛させるだろうし、杉田本人も辞退するものだろう。だいたい、党が「十分に注意するよう指導した」と表明した、その夜なのである。
ところが、「笑顔」で杉田議員が現れたということは、安倍首相も杉田議員がやってくることは承知しており、しかも、同席することに躊躇いがないということを示している。つまり、杉田議員は何の反省もしておらず、安倍首相もまた杉田議員の言動をまったく問題視していない、ということだ。
しかも、だ。「週刊文春」の記事によれば、安倍首相は杉田議員の辞職を求めるデモに対して、こう語っていたというのだ。
「彼女はそんなに有名じゃないのに、なんでみんな騒いでいるんだろうね」
有名かどうかの問題ではなく、為政者が生産性という考え方で人の価値を切り分けたこと、その暴論に対して批判が集まっているのに、その意味が安倍首相はどうやら何もわかっていないらしいのだ。
本サイトでは何度も言及してきたように、杉田議員はこれまで「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」などという暴言を国会の場で吐いたほか、慰安婦問題を否定したり朝日バッシングを繰り広げたことで極右政治家として名をあげ、それを安倍首相は「素晴らしい」と評価して自民党に引き入れた。稲田朋美や和田政宗も同じだが、ようするに、立場上、自分では言えない歴史修正や報道バッシングなどの“本音”をズバズバと発言・発信してくれる人物として自民党に招き入れたのだ。
とくに象徴的なのが、杉田議員が自民党から立候補した際のネット用ポスターだ。このとき、難民を中傷したイラストで世界的に問題視されたはすみとしこ氏が杉田氏のイラストを描き、応援ポスターを作成。杉田氏も「とても嬉しいです」といい、いまでもTwitterのヘッダー画像に使用している。政権与党の候補者が、ヘイトスピーチで商売をしている人物のイラストを選挙に使うことを公認するとは公党としての姿勢を疑わざるを得ず、逆にいえばネトウヨへのサービスとしか考えられないシロモノだった。つまり、最初から杉田議員は、安倍首相のガス抜き要員であると同時に、ネトウヨの支持拡大要員だったのだ。「何かあっても怒るのはリベラルだけ。大した問題じゃない」──安倍首相はいまなお、そう踏んでいるのではないか。
しかし、冒頭でも述べたように、杉田発言に対する怒りには鎮火の気配はなく、むしろ自民党が見解を出したあとも国民感情はおさまっていない。安倍首相が「生産性」で人を選別する、価値を決める考え方を諫めるどころか、処分もせずに会合に笑顔でやってきた杉田議員を迎え入れていたとしたら、これは大問題だ。メディアによる追及が必要だろう。 リテラ8/1より転載
橋ーーまさしくまさしく!