ガラパゴス国家へ走る日本
先週で通常国会が閉会した。しかし、これほど議会制民主主義の劣化をあらわにした国会はなかった。 モリカケ疑惑は、決定的な証拠が次々に出てきたのに、昭恵夫人、加計孝太郎氏らの証人喚問は拒否され、安倍政権は虚偽答弁に終始した。誰が見ても事件の中心は安倍夫妻なのに、安倍首相は「膿を出す」と言い続けているのだからどうかしている。 会期末は、豪雨が西日本を襲っていたのに、安倍首相は被災地を放置し、40人の自民党議員と酒宴を楽しんでいた。犠牲者は200人を超えたが、被災地救援よりも、カジノ法案の成立を優先したのだから常軌を逸している。おまけに、十分な審議なしに自分たちに都合の良いように選挙制度を変えてしまった。 一方、大手メディアはほとんど報じないが、野党4党が提出した「原発ゼロ法案」は、ほとんど審議されなかった。野党も国民の代表だ。野党の共同提案を審議しないのは議会制民主主義の否定にも等しい。
しかも、安倍内閣が7月3日に閣議決定した新たな「エネルギー基本計画」は支離滅裂だ。経産省は、2030年の電源構成について、約30基もの原発を稼働させて原発比率を20~22%にするとしている。原発の新設なしには不可能な数字だ。40年で原発を廃炉するルールを守るとすると、すべての原発を60年稼働させねばならないことになる。 再生可能エネルギーについても、ドイツは50%以上、フランスも40%としているのに、日本は目標を最大24%としている。そのうち、すでにある水力9%が含まれている。「主力電源」と言いながら、やる気がないのだ。既存の電力会社の地域独占を残し、少しでも多く原発を再稼働させようと考えていることは明白だ。 世界中で再生可能エネルギーが急速に伸び、IoTによるグリッドシステム開発を競い合っている。エネルギーをどうするかは国家戦略の中核であり、成長戦略のコアになるテーマだ。 なのに、安倍政権は、カジノを成長戦略の柱に位置づけているのだ。原発建設同様、外国ではカジノが次々に破綻している。完全に後ろ向きなのだ。 いずれ日本は、見るも無残なガラパゴス状況に陥ってしまうだろう。
日刊ゲンダイ' 7/24 金子勝慶大教授論