アベの「防災より武器」
死者が100人を超えた西日本を中心とした豪雨被害。安倍首相は、さすがに11日からの欧州・中東訪問を取りやめ、激甚災害指定方針を固めるなど、やっと災害に目を向け始めた。こんなに腰が重いのは、安倍首相が災害を軽視しているからだ。昨年、安倍首相は北のミサイル発射前夜に官邸泊を繰り返したが、今回の災害では、私邸にこもって危機感ゼロ。そんな「防災より武器」という安倍政権のスタンスは、予算配分にもクッキリ表れている。 ■災害無策でも防衛費概算要求は過去最高へ 7月7日未明、愛知県岡崎市から出動し、午後から岡山県倉敷市真備町で救助活動に加わった全地形対応車「レッドサラマンダー」。全国でたった1台しかない。 「1台なので、どこにでも出動できるように、2013年3月、愛知県の岡崎市消防本部に配備しました。日本列島のだいたい真ん中であることや高速道路が東西南北に整備されているためです」(消防庁広域応援室)
岡崎市消防本部によると、レッドサラマンダーは2両編成で、全長8.72メートル、高さ2.66メートル、重量12トン。10人乗りで、最高時速は50キロ。足回りにキャタピラーが付いていて、急傾斜とされる26.6度の坂まで対応でき、災害現場で見られる、がれき、ぬかるみ、段差、水たまりなども走行できる。 「最大60センチの段差や幅2メートルの溝はクリアでき、水深1.2メートルなら走れます。また、やったことはないのですが、水に浮くため、キャタピラーが水かきをして、時速3キロ程度で、水の中を進むこともできるのです」(岡崎市消防本部消防課) 災害時に活躍しそうなレッドサラマンダーの価格は約1億円。民主党・野田政権の2011年度3次補正で予算がついた。安倍政権では、17年度補正で2機分(2億円未満)を計上し、これから入札予定。青天井の防衛費に比べればあまりにもケチな対応である。
北朝鮮の脅威が薄まる中、安倍政権は、6月に閣議決定した「骨太の方針2018」で「防衛力を大幅に強化する」と明記。8月の概算要求では、過去最高の5兆円超の防衛関係費を要求するという。 中身も必要性、品質、価格すべての面で疑問だらけだ。北がミサイル発射中止表明をしているのに、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の山口と秋田への配備は見直すことなく進められている。本体とレーダーで1基1000億円もするが、1発30億円超の迎撃用ミサイル「SM3ブロック2A」も必要になる。加えて、ポンコツ機「オスプレイ」17機3400億円、米国防総省が数百件もの欠陥を認めている「F35ステルス戦闘機」42機5400億円など、不良品に大盤振る舞いなのだ。 武器のムダ遣いを少しでも災害対策に回せないのか――。イージス・アショア1基分を防災に向ければ、47都道府県に各20機のレッドサラマンダーを配備でき、お釣りがくる。
「少なくとも、北の差し迫った脅威がなくなる中、これだけ大きな災害を目の当たりにしたわけです。一方で財政は厳しく優先順位は必要です。人命第一というなら、防衛費を削って、災害予算を充実させることです。防衛費増で凝り固まっている安倍政権は、そんな簡単な政策転換もできないのでしょう。『災害か武器か』は、次の選挙の最大の争点にすべきです」(政治評論家・山口朝雄氏) 政権交代でフツーの政治を取り戻すしかない。
日刊ゲンダイ7/10より転載
橋ーーまさしく同感!