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朝鮮戦争終結の先。日刊ゲンダイ6/12


トランプは、シンガポール入りの直前になって「チャンスは1回きりだ」と言い出した。この会談は1回きりのセレモニーで終わるのか。 「本来、非核化と体制保証は慎重に進めていかなければなりませんが、トランプ大統領は一発で決めたがり、首脳会談についても『会えば1分で分かる』と言っていた。そういう人だから、物事が大きく動いたと言えます。金正恩氏がディールできる人物か、見極めたのでしょう。超大国の米国と、小国の北朝鮮が対等な立場で話し合ったという意味では画期的な会談であり、86年にゴルバチョフ書記長とレーガン大統領がレイキャビクで会った米ソ首脳会談と重なる。レイキャビクでは具体的に何も合意できなかったが、この会談が冷戦終結への大きな一歩になった。今回の米朝会談でも、会ってお互いの意思を確認することが重要だったのです」(朝鮮史の専門家で東大名誉教授の和田春樹氏)

北は非核化を約束し、米国が体制維持を保証。それで東アジアの平和に向けた動きが加速すれば、今回の会談が第一歩なのだ。 「今後の具体的な交渉は、ひとつ決まれば、後退しないように信頼を積み上げ、少しずつ進めていくことになるでしょう。しかし、期限がある。トランプ大統領の最初の任期が切れる2年半後までに決着させなければなりません。お互いに失敗はできない。最後までまとめ上げるのは難しいが、それでも飛び込んでいった両首脳の決意は評価したい。革命的な変化を促す世紀の会談です」(和田春樹氏=前出)  トランプは再選のツールとしてノーベル平和賞が欲しい。  金正恩は、トランプ政権の間に国交正常化と不可侵条約を勝ち取らないと、次の政権でちゃぶ台返しされかねない。両者にとって、タイムリミットとの戦いでもある。

レイキャビクの米ソ会談から冷戦終結のマルタ会談までは3年かかった。米朝はどうなるか。 ■完全な非核化とは何か、何年かかるのか、途中で「やめた」とならないのか  アメリカが北朝鮮に求めてきた完全な非核化。しかし、核を実戦配備した国が交渉で放棄した例は過去に一度もない。そもそも「完全で検証可能かつ不可逆的非核化」(CVID)は、実現可能なのか。  すでに北朝鮮は核兵器を12~60個も保有し、核の関連施設は300~400カ所に及ぶという。地下にも広がる核関連施設の全容をつかみ、査察し、核兵器を解体するとなったら、その手間と費用はハンパじゃない。アメリカの核専門家は「15年かかる」と予測している。元韓国国防省北朝鮮情報分析官で拓大客員研究員の高永テツ氏はこう言う。

「非核化に15年かかると予測しているアメリカのハッカー博士は、何度も北朝鮮に入っている核の専門家です。非核化を実現するためには、国際原子力機関(IAEA)の査察チームが入って調査することになりますが、査察チームの専門家は300人。世界中で査察しているため、十分ではありません。トランプ大統領が『核廃棄は急がなくていい』と口にし始めたのも、CVIDはカンタンではないと理解したからでしょう。問題は、どこまでやったら非核化とするかです。極端に言えば、保有しているすべての核を国外に運び、全施設を破壊しても、データと技術者が残っていれば、もう一度、核をつくれる。結局、カギは、核を完全に放棄するという北朝鮮の意思が本当かどうかということになります」  北朝鮮にとって核は命綱のようなものだ。核を保有しているから大国のアメリカとも渡り合える。非核化したら、ただの弱小国だ。途中で金正恩が、「やっぱり非核化をやめた」と反故にする可能性もゼロではないのではないか。

次は日本の防衛問題を後編としてアップしたいと思います

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