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安倍・断末魔


「安倍政権」も<はや末期的症状!>

「首相案件」文書は決定打! 

「内閣」は総辞職すべきだ!

 加計(かけ)問題が「首相案件」であることが明確になる決定的文書の存在が報じられた。内閣総辞職が当然と思われるが、安倍首相は言い逃れに終始している。「サンデー時評」倉重篤郎氏が前川喜平・前文科事務次官を直撃、120分の独占インタビューで、現政権を怒りをもって告発する。

 権力中枢の館・首相官邸内に久しぶりに入った。4階の内閣官房参与室にその男は待っていた。飯島勲氏。小泉純一郎元首相の秘書官を務め、現在は安倍(晋三首相)応援団の一人だ。モリ・カケに揺れる政権の危機を安倍陣営はどう見ているのか。

 意外や。本誌の別特集でも触れているが、出てきたのは衆院解散論だった。

今国会で処理すべき法案を通した後、5月末から6月に一気に解散すればいい。そのほうがすっきりする」

「佐藤栄作政権の黒い霧解散(1966年12月27日)と同じだ。あの時は自民党は大敗する、と言われたが、結果的に微減で済み、長期政権になった。竹下登政権はリクルート事件で解散に躊躇(ちゅうちょ)し結果的に退陣(89年6月3日)に追い込まれた。そして今回だ。野党はあわてて一本化しようとしているが、うまくいかない」

「いま解散したら政権は終わりだ、と言う人がいるがとんでもない。小選挙区制は政党選挙だ。自民党の支持率はどう調査しても三十数パーセントある。野党は立憲民主党ですら2ケタ行かない。残りの政党は1~2%程度。全く怖くない。自民党は微減にはなるが、最悪の場合でも過半数は取れる。過半数取れるということは国民の信を得たということで、秋に総裁選をやる必要もなくなる。一石二鳥、三鳥だ」

飯島氏によると、解散は安倍氏の頭の中にも「完全にある。細かいことは言えないが、完全にある」。

 その証拠が「(森友、加計問題については最後は選挙で)国民が判断する」という安倍氏の答弁だというのである。

 飯島氏らしき強気の政局予測であった。とりあえずの狙いは、自民党内への牽制(けんせい)だろう。自民党総裁(首相)の(候補者)公認権を盾に党内の不穏な動きを抑え込もうというものだ。遅々として一本化の進まない野党への脅しにもなる。

 ただ相当部分、本音も含まれている、と見るべきだ。いまタガが外れたように噴出するさまざまな疑惑攻勢(森友、加計、自衛隊日報、裁量労働制関連)に対し、政権としての対処能力を失い、解散以外に疑惑をチャラにする道がない、というところまで追い詰められた、ともいえる。

 そんな中、また一つ政権にとって致命的な文書を『朝日新聞』が特報した。

 加計学園の獣医学部新設疑惑で、これまで安倍氏側が頑強に否定していたある重要会合の存在が、愛媛県側の資料によって裏付けられた、というニュースだ。

 文書は会合に同席した同県職員が報告メモとして作成、以下の経過を具体的かつ詳細に記している。2015年4月2日のことだ。加計学園、今治市、愛媛県の関係者が首相官邸を訪れ柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面談、この中で柳瀬氏は三者に対し「本件は首相案件となっている」との認識を表明、獣医学部新設の認可を受けるためには「自治体がやらされモードではなく死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」であり、「獣医師会とは直接対決を避けるよう」助言した。

 同じ日に三者は内閣府で藤原豊・地方創生推進室次長(当時)とも面談、藤原氏は「要請の内容は総理官邸から聞いている」としたうえで、「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」と発言した。

 すごい資料が出てきたものだ。柳瀬氏は昨年の国会答弁で会合そのものの存在まで「記憶にない」と否定していた。それが、会合相対者の極めて信憑(しんぴょう)性の高いメモにより、柳瀬発言が大嘘(おおうそ)であったこと、のみならず、この時点から加計獣医学部が「首相案件」として特別扱いされていたことが明確になったのである。

政権中枢が組織ぐるみで嘘をついた

 こうなると、前川喜平・前文科事務次官の出番であろう。前川氏は昨年12月の段階でこの会合の重要性を指摘、獣医学部認可申請を構造改革特区から国家戦略特区方式に切り替える節目の「キックオフ会合」であり、「国家戦略特区でやってください。そうして、うまく説明さえできれば認可されますよと。こういう知恵をつけた人がいると思う」(本誌17年12月3日号)と語っていた。

 あなたの言った通りの会合であることが証明された。

「かなり決定的文書だと思う。いままで安倍氏側は加計学園、今治市、愛媛県の三者が官邸に来たことさえ認めてこなかったが、この文書で面談の相手が柳瀬氏であること、面談の内容が獣医学部新設だということが明確にわかった。加計ありき、がはっきりしたと思う。内閣府の対応も、『官邸から言われている』『今度は国家戦略特区で行くんだ』と、私が思った通りの展開だったことが確認できた」

あなたはキックオフ会合と名付けた。

「ミッシングリンク(欠けた部分)が出てきた。あるはずのものがやっと出てきた感じだ」

 同じ文書が農水省からも出てきた。愛媛県の中村時広知事は会見で、この職員メモを備忘録と表現していたが、その備忘録がなぜか霞が関まで流れてきていた、というのだ。

「普通は裸の備忘録をそのまま外に出すことは考えられないが、あり得ないことではない。メモで首相秘書官が『首相案件だ』と明言していることが大きい。黄門さまの印籠(いんろう)のような効果を果たしたのかもしれない」

 三者陳情団は、同じ日に内閣府、官邸と効率よく動いている。メモには、午前11時半に内閣府、午後3時に首相官邸とある。

「今治市から出ていた情報によると、官邸での面談は加計学園を通じて後から入ってきた日程という。最初は内閣府の面談だけの日程が、首相官邸にも寄れということになり、急きょ帰りの便を遅らせ出張日程を変えたということだった」

「官邸の面談は、約束を取りつけた加計学園が今治市と愛媛県を連れて行き、首相秘書官が出てきてハッパをかけた構図だ。自治体が一生懸命やらないとうまくいかないよと。加計側はこれを言ってもらいたかったのかもしれない」

 このメモの持つ意味を整理すると?

「安倍首相自身の関与がこれでほぼ明確になったと思う。首相官邸で首相秘書官が会ったというだけで、首相の関与が色濃く疑われる。首相秘書官というのは首相名代だ。誰にでも官邸で会うわけではない。当然のことながら、会う前には首相自身の指示、または了解があり、後には報告があったと思われる。秘書官はボスのために仕事をする。従って、この15年4月2日時点で安倍氏は加計学園の獣医学部新設構想を知っていたと思わざるを得ない。17年1月に初めて知ったという首相発言は嘘だ。そのことを示す決定的文書だ」

 ただ、なおも柳瀬氏は「記憶にない」と言い、安倍氏はそれを「信用する」と往生際が悪い。これをどう突き崩す?

「言い逃れができない段階に来ているのに無理がある。柳瀬氏を証人喚問すべきだということになる。覚えているはずのことを、記憶にないと言い張るのでは、同席していた関係三者、報告を受けたはずの加計孝太郎理事長、市、県幹部らを喚問するしかない。藤原氏もその対象だ。そこまでやれば真相は明らかになっていく。そこまでやるべき案件であろう。政権中枢が組織ぐるみで国民に嘘をつき続けることができるかどうか、という日本の民主主義の根本の問題だ。それだけの価値はある」

佐川氏は封建時代の家来なのか

 森友問題についても聞きたい。財務省の公文書改ざん問題、どう受け止めた?

「役人としてやってはならないことをやってしまった。私の長年の霞が関人生からして役所が自らやることはあり得ない。何らかの外部的力が働いたとしか思えない」

 佐川宣寿(のぶひさ)・前財務省理財局長の証人喚問はどう見た?

「一言で言えば、マインドコントロールが解けていないという感じ。役人を辞めたんだから、役人時代の倫理道徳をかなぐり捨てたほうがいい。彼の態度は、主君のためにはわが身がどうなっても厭(いと)わない封建時代の家来のように見えた。見ようによっては美しい姿かもしれないが、ある種の催眠支配状態だ。本当のご主人は安倍首相ではなくて、国民ではないのか」

 モリ・カケ問題を抱え、いまの霞が関はどういう状況か?

「官僚たちが本当にみじめな立場に置かれている。本来は矜持(きょうじ)と使命感を持って仕事をしているはずの人たちが、憲法15条(すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない)違反状態だ。権力を握っている安倍氏と周辺の人たちの、まるで下僕のようになって、彼らの私的利益のために仕事をさせられている」

「政治の世界が原因で起きている問題なのに、官僚の世界が責めを負わされ、詰め腹を切らされている。毎晩、霞が関中の官僚たちが本来の仕事ができず、自尊心をズタズタにされ、政権を守るためだけの答弁作りに忙殺されている。過労死が出ないように祈っている。そういう状態に官僚を貶(おとし)めたという意味で、政治の罪はあまりにも重く、かつ情けない」

その官僚たちに対するメッセージは?

「役人だったら初心を思い出してほしい。世のため、人のために尽くそうというものを持っていたはずだ。それが今回の森友、加計問題に見られるように、権力の私物化、つまり一部の権力者の私的利益に使われていることをどう思うか。そのために国民を裏切ることはおかしいのではないか。一国民として一個人として、どういう行動を取るべきかを考えたほうがいい」

「確かに、正面切って官邸に盾突くのは難しいかもしれない。ただ、いろんな方法がある。僕のような面従腹背という方法もある。表向きは従っていながら『サンデー毎日』に情報提供してもいい。というのも、私はリークするのを卑怯(ひきょう)だとは思っていないからだ。国民が知るべきことを表に出すこと。これは守秘義務違反ではない。むしろ憲法が要請する国民の知る権利に奉仕することだ、と思っている」

「現に私は退官後、加計疑惑について役所の内部情報を会見などで明らかにした。役人の守秘義務はOBにも付いて回るから、私もそれを問われる可能性があった。ただ、私は十分反論できると思っていた。情報提供により、誰かの正当な権利、利益を侵害するようなことがあれば、守秘義務がかかる。今回はそれに当たらない。確かに安倍氏や加計関係者は困るかもしれないが、それは正当な権利が侵害されたというわけではなく、説明責任を求められたということだ。国民の知る権利に奉仕するということ自体は間違ったことではない。主君のためにすべてを呑(の)み込んで自ら責任を負うのは封建時代の話だ。いまは民主主義の時代なのだから。いまの権力を持っている人たちがおかしなことをしているということならば、情報を国民に知らせるべきだ」

安倍さんは早く辞めてほしい

「第二の前川、出(いで)よ」と言いたい。特に財務省に。

「どうでしょうか。これ以上、安倍官邸の神通力が低下し、もう安倍さんや菅(義偉官房長官)さんににらまれても大丈夫だということになれば出てくるかもしれないが、いまはまだ出てこないかもしれない」

 内閣人事局の呪縛はそれほどまでか。あなただけは特別なのか?

「私は公務員を辞めて解放感があって、解放感のままにしゃべっている感じだ」

 あなたも『読売新聞』(17年5月22日付「出会い系バー通い」)報道で吹っ切れた?

「あの記事は官邸が私を黙らせるため、あるいは私の発言の信用性を落とすために意図的に読売に情報を流した、といまでも思っている。ああそうか、官邸がこういうことをするなら、もう忖度(そんたく)は必要ない、と思った。というのも、その時点ではまだ官邸に忖度はしていた。いわゆる天下り問題の責任を取って事務次官を辞任(同年1月20日)した時も、政権を守る方向で答弁してきた。悪いのは全部文科省です、政府全体の問題ではありません、と言っていた」

 安倍さんに何を言う?

「早く辞めてほしいということだ。加計学園問題で、私はある段階から首相本人の意思表示があったと思うようになっていた。(16年9~10月)和泉洋人首相補佐官から『総理は自分の口から言えないから私が代わって言う』と言われた時だが、まだ和泉氏が勝手に言っている可能性もあった。しかし、今回のメモは首相の関与を示す決定的な証拠だ。言い逃れすればするほど泥沼にはまる」

「安倍さんもこの期に及んで地位に恋々としないほうがいい。内閣支持率も30%割れするのではないか。それがどうであろうと、この政権にはここまで政治、行政を劣化させた重い責任がある。総辞職してもらうしかないと思う」

 前川氏の熱弁は、安倍政治の体質を巡り、まだまだ続く。

毎日新聞4/17より転載

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