加計学園・安倍の大ウソ
疑惑の始まりは2017年7月23日に配信された週刊朝日のオンライン記事だった。安倍政権がひた隠しにしてきた、15年4月2日に首相官邸で行われた今治市の企画課長や愛媛県職員らと政府関係者による面会で、政府側の出席者が柳瀬唯夫首相秘書官(当時、現在は経済産業審議官)だったことをスクープした。 その加計学園問題で新たな事実が発覚し、政界に激震が走っている。 朝日新聞は4月10日、15年4月の官邸での面会後に、愛媛県の職員が作成した記録文書が存在すると報道した。記事によると、文書には柳瀬氏が述べた言葉として「本件は、首相案件」と書かれていた。 報道を受けて同日夕、愛媛県の中村時広知事が記者会見を開催。中村知事は、自らヒアリング調査をしたと説明したうえで、「当時の担当職員が、備忘録として書いた文書であると判明した」と、文書の存在を認めた。ただ、文書そのものは県庁内では確認できていないという。 中村知事の“ひと刺し”発言を受けて、朝日はデジタル版で文書の全文を報道。そこには、次のような生々しいやりとりが書かれていた(肩書は当時のもの)。 〈かなりチャンスがあると思っていただいてよい〉(藤原豊地方創生推進室次長) 〈加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ、今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった〉(柳瀬唯夫首相秘書官) 〈本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい〉(同) 政府関係者は言う。 「すでに永田町では、朝日のスクープで政局がおきるとの話でもちきりだ。安倍首相は、加計学園による獣医学部の新設計画をはじめて知ったのは昨年1月20日だったと国会で答弁しているが、それが完全にウソだったことになる。これでは(森友疑惑の)昭恵夫人ではなく、首相の証人喚問をしなければならなくなる。それくらい大きな話だ」
加計学園問題では、官邸での面会で話された内容は最大の謎となっていた。この日から、それまで門前払いだった加計学園の獣医学部新設構想が大きく動き始め、トントン拍子で17年1月に国家戦略特区の事業者に決まった。前述した週刊朝日のスクープ記事には、今治市関係者の言葉として、こう書かれていた。 〈「面会の後、今治市では『ついにやった』とお祝いムードでした。普通、陳情など相手にしてもらえず、下の担当者レベルに会えればいいほう。国会議員が同行しても、課長にすら会えない。それが『官邸に来てくれ』と言われ、安倍首相の名代である秘書官に会えた。びっくりですよ。『絶対に誘致できる』『さすがは加計さんだ、総理にも話ができるんだ』と盛り上がったというのは有名な話です」〉 柳瀬氏は面会の事実について、週刊朝日の報道後、国会で「記憶にございません」と7回以上繰り返した。10日の朝日の報道を受けてあらためてコメントを書面で発表したが、そこでも「自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」と面会の事実を否定した。 菅義偉官房長官は、関係省庁に対して愛媛県とのやりとりに関する文書について調べるよう指示したというが、何と応じるのか。 野党が柳瀬氏の追及を強めるのは必至だ。前出の政府関係者は言う。 「先週から、森友学園問題から加計学園に話題が移っていくという情報が流れていた。それが、この話だった。自民党幹部からは『安倍に対抗する勢力が、文書を入手して出したんじゃないか』といった声も出ていて、『秋まで政権は持たない』『安倍首相なら解散を打ってくるかもしれない』との声が、すでに出ている」 今年はじめまでは秋に予定されている総裁選で「安倍3選確実」との見通しが支配的だったが、風向きは一気に変わった。安倍政権は最大の危機を迎えている。
(AERA dot.編集部取材班) 4/9より転載