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汚き名護市長選


フォトは美しき時の名護湾である。それにしても先の名護市長選は汚かった。不在投票が40%越えなんて異常すら感じた。

 以下は2/14リテラ誌からの転載である。

詐欺集団の安倍自民党が“フェイク演説”で市長ポストを騙し取った──これが「安倍政権vs翁長雄志沖縄県知事の代理戦争」と言われた名護市長選(2月4日投開票)の取材実感だ。

自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長ら有名国会議員が続々と現地入りをした名護市では、虚偽情報で特定候補を当選または落選させることを禁じる公職選挙法などどこ吹く風の無法地帯と化していたのだ。

 進次郎氏が市内3カ所で自公推薦の渡貝知武豊候補(現市長)の応援演説をした1月31日、人気抜群の総理大臣候補とは思えない言葉の軽さに唖然とした地元記者はこう言い放った。「『代理戦争報道はフェイクニュースだ』と訴えた進次郎氏本人が、北海道日本ハムファイターズのキャンプ期間短縮について“フェイク演説”をしていた!」。

 日ハムキャンプ問題は、渡具知陣営が「稲嶺市長三大失敗の一つ」として批判していたものだが、進次郎氏も次のように訴えていた。

「日ハムのキャンプの拠点だった名護市。残念ながら今度からいままでよりも名護市にいる期間が圧倒的に短くなってしまった。なぜ、その日本ハムファイターズのキャンプの拠点として求められていた球場の改修を含めて、もっとスピード感をもってやることはなかったのか。そういったことをやれば、地域の観光、飲食、宿泊、いろいろなことで地元の経済効果はもっともっと潤うはずです」

 告示前日(1月27日)に応援演説をした山本一太元沖縄北方担当大臣も、「いまの市長の判断が遅れたために、日本ハムファイターズのキャンプが丸ごとアリゾナのほうに行ってしまった。2020年に名護市民球場ができますが、この時に名護に戻ってくるのかわからない」と同様の責任追及をしていた。

名護入りした進次郎、山本一太もたれ流したフェイク演説

 しかし地元記者は、これを「フェイク演説だ」と断言し、こんな説明をしてくれた。

「稲嶺進市長の前任者で基地容認の島袋吉和市政が、老朽化した市営球場を放置したのが諸悪の根源です。スピード感をもって対応しなかった島袋市政の“負の遺産”を稲嶺市長が引き継ぎ、球場建て替えを具体化した。そして新球場完成までの間はキャンプの前半をアリゾナ、後半を名護市と国頭村で行うことになりました。暫定キャンプ地としてアリゾナを選んだのも、国内だと地元から引き止められて名護に戻り辛くなることを避けるためです。だから『丸ごとアリゾナの方に行ってしまった』わけでもないし、『戻ってくるのか分からない』というのも事実誤認で名護に戻ることは既定路線だった。日ハム関係者が稲嶺市長に感謝の弁を述べるなど両者の関係は良好なのです」

 日ハムに問い合わせれば、すぐにフェイクニュースと分かるようなデマ情報を進次郎氏も山本氏も鵜呑みにして“フェイク演説”をしたのだ。しかも基地容認の島袋市政時代(2006年1月から10年1月)こそが問題だったことは、過去記事の検索ですぐに確認できた。2016年2月18日付の夕刊フジには「(老朽化した球場について)球団では10年以上前から改善を求め」とあり、06年1月には問題が顕在化していたことが確認できた。真っ先に責任追及すべきなのは、自民党が支援した島袋元市長だったのだ。

 しかし山本氏は「稲嶺市長は国と対立しているから球場建て替えの補助率が5割と低く、市民負担が増えた」とも批判したが、一方、国と良好な関係の基地容認の島袋市長が高補助率で球場建替をしなかった“不都合な真実”は紹介しなかった。判断が遅れた島袋元市長は免責し、職務怠慢の後始末をした稲嶺前市長に全責任を押し付けたともいえる。

「フェイク演説」は他にもある。山本氏は渡具知氏の隣でこうも訴えていた。

「沖縄は未曾有の経済好況を謳歌しています。全国で一番経済が元気なのは、沖縄なのです。那覇も浦添もうるまもとっても元気なのです。その未曾有の好調を呈しているはずの沖縄。名護はどうでしょうか。これだけ美しい自然があって、これだけの観光資源があって、名護市民は市民生活が良くなったといえるのでしょうか。大変申し訳ありませんが、経済のデータを見たときに、沖縄の未曾有の経済活性化の流れに、名護は乗り遅れていると言わざるを得ません」 「名護が取り残されているからなのです」「沖縄11市の経済成長率は平均11.4%なのです。名護は9.4%なのです。市長のアンチ・ビジネス的な政策がこういう経済停滞を招いていることをはっきりと申し上げていきたいと思います」

経済成長率9.4%なのに“経済停滞”と主張するトンデモ欺瞞ぶり

 経済部の学生でもビックリ仰天の山本氏の思考能力だ。山本氏は「沖縄11市の経済成長率は平均11.4%で名護市が9.4%」というデータから“経済停滞”と決め付けているが、しかし「経済成長率9.4%」という立派な数字から経済停滞などと結論づける学者がいたら「権力者にゴマする御用学者」と見なされて信頼失墜するに違いない。また2%の平均との差についても、「那覇周辺の好景気が県北部の名護市など県全体に波及するまでのタイムラグ」といった解説をする専門家はいても、「名護市が取り残されている」などと否定的に捉える専門家は皆無に違いない。

 応援に駆けつけた自民党国会議員だけではない。応援をされた渡具知氏もこの“フェイク演説”に同調し「いま沖縄県、景気がすべて好調です。観光も好調、住宅も好調、建設も好調。その好景気をわれわれ名護は享受出来ていない」と訴えていた。小泉氏や山本氏、そして渡具知氏が、虚偽事項流布を禁じる公職選挙法違反や名誉毀損で訴えられても不思議ではないほどの“フェイク演説”が繰り返さられていたのだ。

 3月初旬に始まる予定の名護市議会では、多数派の稲嶺前市長系市議が、選挙中の“フェイク演説”や基地政策の二枚舌的立場などについて新市長を徹底追及する構えを見せている。推薦を受けた自公両党の基地政策の埋め難いギャップについても追及が予定され、渡具知氏が市長選では決して口にしなかった「辺野古新基地容認」を表明する事態も考えられる。そうなったら「公明党との政策協定に盛り込まれた『海兵隊の県外・国外移転』と矛盾」「公約違反だ」などの批判が噴出するのは確実で、市長リコールに向けた動きが出る可能性もある。

“フェイク演説”に加え、二枚舌的基地政策、基地容認の是非を問わなかった争点隠し、公開討論会の出席拒否などを駆使した結果、市長選に勝利したものの、いくつもの“爆弾”を抱え込んでしまったといえる。

辺野古の海上軍用滑走路に地震・津波リスクも!

 アベノミクス批判の急先鋒で安倍晋三首相がもっとも嫌うエコノミストの藻谷浩介氏も2月11日付毎日新聞で「事実に反する“イメージ” 流されてはいけない」と銘打ち名護市長選中の渡具知陣営の訴えに疑問を提示していた。

「沖縄県名護市長選で、辺野古沖海上への軍用滑走路新設反対を明確にした現職が、『経済活性化』を掲げた新人に敗れた。これだけ聞くと『名護の景気はさぞ悪いのだろう』と感じられる。だが実際には同市の人口増加率(10年→15年、国勢調査準拠)は、人口5万人以上の全国522市町の中で上から64番目、3大都市圏を除いた296市町の中では22番目であり、『これが“不振”なら“活性化”とは何か』と聞きたくなる。人口増加の原動力は、沖縄県内最大級のリゾートホテル集積であり、米軍基地の市内での増強は、こうした滞在型観光地としての経済活性化の未来に真正面から水を差すものである」

 小泉氏や山本氏の“フェイク演説”が訴訟となった場合、データ(統計)を元にした講演を全国各地で続け、フェイクニュースに警告を発している藻谷氏の主張は有力な根拠となるだろう。

 さらに藻谷氏は、辺野古に新設予定の海上軍用滑走路周辺に沖縄トラフが存在し、津波リスクがあることを指摘しているが、元土木技術者の北上田毅氏もまた月刊誌「世界」(岩波書店)3月号で「辺野古新基地建設はいずれ頓挫する」と題して、辺野古周辺海域に活断層が存在する可能性があり、軍事基地として不適切ではないかと疑問呈示、活断層に関する情報公開も求めている。

“フェイク演説”に、二枚舌的な基地政策、さらに地震・津波リスクについても市議会などで徹底的に追及される話はいくつもある。前代未聞の詐欺的手法で当選はしたものの、これから針のムシロに座らされて追い詰められるのは渡具知新市長のほうではないか。“フェイク演説”による“イメージ市長選”で稲嶺氏は選挙で敗北したが、事実に基づく市議会での論戦や法定闘争などで反転攻勢に転じる事態は十分に考えられる。

 全国的な注目を浴びた名護市長選は、進次郎氏の正体を浮き彫りにする役割も果たした。“客寄せパンダ”として全国の重要選挙に駆けつける同氏だが、「事実を確認にせずに応援陣営のウソを受け売りする“詐欺的若手芸人風政治家”ではないか」という拭い難い疑問が浮かんできたのだ。市長選という第一ラウンドでは自公推薦候補が勝利したが、第二ラウンドの3月市議会では演説内容をファクトチェックする“爆弾質問”で攻守逆転する可能性は十分にあるのだ。

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