ほっしゃん偉い!応援するぞ
星田英利(旧芸名ほっしゃん。)と村本大輔(ウーマンラッシュアワー)といえば、松本人志はじめ多くの芸人が権力に擦り寄るなか、為政者たちに批判的な眼差しを向けている数少ない芸人だ。
先日、そんな星田と村本との間にちょっとした論争が起きていた。
発端は、今月11日に星田が「文在寅大統領「慰安婦合意、日本との誤った結び目を解くのが大統領の責務」…新年記者会見」なるタイトルの中央日報日本語版のネットニュースに〈「日本と心が通じる真の友人となることを願う」 なりましょうよ。願うだけじゃなく、なりましょう!〉とコメントをつけてツイートしたことから始まる。
これに対し、星田のツイッターアカウントにはネトウヨからの攻撃的なリプライが殺到。〈祖国に帰れ 日本に来るな〉といったツイートが押し寄せた。しかし、星田はそんな炎上に臆することはない。彼は毅然と〈祖国は日本だよ。 このクズの差別主義者!〉と返したのだった。
そんな状況を見ていた村本は、星田に向かってこんなリプライを飛ばす。
〈星田さん、世の中の空気に、相手することによって存在してると、色つけてあげることになるので、ぼく的には無視してほしいです。努力せず、逃げながら生きてるやつは一生誰にも相手されない存在が当然 笑笑〉
それに対し、星田はこのように返す。
〈なるほどな。笑 でも差別はブッ潰さんとあかんと思うのよ。友達にもたくさんいるし〉
村本はネトウヨに絡まれている星田を気遣ったのだろう。言うまでもなく、星田と村本は同じよしもとクリエイティブ・エージェンシー所属で、先輩後輩の関係にある。
先月にも、〈この人(編集部注:星田のこと)、関西のテレビでは後輩にくっつけてもらって無理くり出してもらってる。劇場では若手がめっちゃウケて暖めた空気を一瞬で凍らせる、ほんま辞めてほしい芸人№1ですよ〉とのネトウヨからのツイートに対し、村本は〈星田さんと劇場一緒になった時はいつもトリを任せられてます。トリってのは一番劇場に信用されてる人しか任されません。いま隣にいる社員に、星田さんて関西のテレビ、後輩にくっつけてもらってるんですか?って、聞いたらそんなバカな笑って言ってます。事実が知れてよかったですね〉と反論。芸能界の裏事情などなにも知らないくせに勝手に星田をバーター扱いする人の誤った考えを糾すツイートを投稿していた。
それに対し、星田から〈村本、巻き込んですまない。あと隣の社員様に、後輩とくっつけてでも出してくださいませ!どうかどうかお願いします!って俺が今、スマホ見ながら土下座してるコトを伝えといて!〉とのリプライが飛ぶ一幕もあった。
そんな二人だが、本サイトとしては、やはり星田の行動に拍手を送りたい。
ネトウヨの攻撃にさらされても、反差別を訴え続けるほっしゃん
今回、星田は〈別に祖国が朝鮮でも恥ずかしいことではないですよ。朝鮮人と言われて怒るということは貴方が朝鮮人とは恥ずかしいものだと認識している証拠ですよ〉というネトウヨのリプライに対し、このように返していた。
〈ほんとキミらって救いようがないよね。「祖国へ帰れ。」という朝鮮の方々に対してのヘイトに怒ってるんや。最低の人間ということを自覚しなさい〉
彼らの言う〈在日は祖国に帰れ〉的な言動は、安倍政権に対して意見を異にする人々に対して日常的に浴びせかけられる常套句である。そして、これに対し「私は在日ではない」とただ単に事実を返すかたちで反論すると、「お前こそ逆に在日を差別している」と攻撃してくるというのも、これまた定番パターンだ。
実際、以前にも星田は〈在日吉本〉と言われたことに対し反論したことから、差別的な発言など一切していないにもかかわらず、ネトウヨから「差別主義者」と攻撃を受けたことがある。
それに対し今回は、〈「祖国へ帰れ。」という朝鮮の方々に対してのヘイトに怒ってるんや〉と、事実でないことは事実でないと伝え、そのうえで差別は人間としてよくないことだと発信した。
彼の行動は言ってしまえば完全な徒労かもしれない。雨後の筍のごとく、次々に溢れ出てくるヘイトに対し、ひとつひとつ反論していくのは限りなく面倒くさい作業だ。たとえそんなことをしたところで、ただただ炎上するばかりであり、途方もない労力を使っても、もちろん一銭たりとも儲かることなどない。
しかし、そういったときに村本が言うような〈一生誰にも相手されない存在が当然〉という態度で多くの人がスルーしてきたことが、結果的にグロテスクな差別言辞を野放しにすることを容認し、現在の日本における排外主義の蔓延を生み出した。
星田といえば、過去にも〈誰に奪われたか知らないけど、ツイッターのプロフィールに 「日本を取り戻せ!」的な事を書いて差別ツイートを撒き散らすヤツ、 日本の前にまずあなたの人格とか正気を取り戻せよ〉や〈僕も愛国者ですよ。差別をして日本の評判を落とすヤツなんて、売国奴ですよ〉といったツイートを投稿。差別言辞、排外主義には一貫してアンチテーゼを唱え続けてきた。その度にネトウヨたちから何度も攻撃されてきたが、それでも口をつむぐことなく、抵抗し続けている。
排外主義の蔓延に対抗するには、星田のように、偏狭な排外主義や差別が日本社会にはびこっていることを可視化させ、それがいけないことであることをくり返し主張し続けること。地道で途方もない作業かもしれないが、それこそが、よりよい社会をつくっていくために必要なことなのではないだろうか。
権力に迎合することなく、安倍政権を批判し続けるほっしゃん
本サイトでも何度か取り上げているが、星田はことあるごとに安倍政権について異議を表明し続けてきた。たとえば、安保法制のときには〈のほほんと生きてる俺みたいなバカの戯言としては、国のリーダーならば何のごまかしもなく、「遥かに危険度は増す。死ぬかもしれん。でも、国のために、国民のために、皆さんの貴重な命をかけてくれ!」って頭を下げるのが現場の方々に対する最低限の礼儀やと思う〉とツイートしている。
また最近でも、相次ぐ沖縄米軍基地関連の事故と、それに対してなにも言えない対米従属的な姿勢の安倍政権に対し、〈沖縄で米軍ヘリが砂浜に不時着。米軍からの説明なし。こういうの、首相みずからバシッといえませんかね。ゴルフ場でバンカーの砂に墜落したのにガン無視されるような事とはわけが違うんだから〉や〈自国の空なのになぜ原因と安全性が確認されるまで飛行停止と言わない。国民のために、と普段偉そうに繰り返してるくせに、よく国民の命を他国の自主性に任せれるよな〉といったツイートで疑問を呈している。
ダウンタウン松本人志を筆頭に、コメンテーターとしての仕事欲しさに多くの芸人が権力の太鼓持ちのように成り果てた現在のお笑い界にあって、このような意見を公に表明するスタンスは本当に貴重だ。
そのような発言をしていることによる軋轢は、ただ単にSNSでネトウヨに絡まれるといったところから、実際に仕事に影響する範囲まで、想像するに余りある。それでも星田はものを言うことをやめようとしない。
その理由はなんなのだろうか。ウェブサイト「withnews」のインタビューで記者から「芸能人はものを言うなとか、言う人もいるのではないですか」と問われた星田はこんなことを語っていた。
「はいはいはい。それが一番あほなやつで。じゃあ、誰がもの言うていいのか分からなくなりますよ。政治家じゃないのに政治の話すなという人に、じゃあお笑い芸人でもないくせに、おもろいとかおもろないとか言うなと言いますか?芸人だとか、素人だとか、言うことがおかしい。僕は一切それはありません」
まさにその通りだろう。今後も社会的なイシューに踏み込む発言をするごとに星田のツイッターアカウントは炎上させられるだろうが、それでも負けずにいまのアティテュードを貫いてほしい。本サイトは、そんな星田を応援している。ーーりてら1/16