よく言った大賞2017ーーリテラ転載
芸能人が少しでも権力者を批判するような発言をするや、ネトウヨが束になってかかり、大炎上させられるどころか、テレビから干されてしまう。一方、権力を擁護し、弱者を叩く発言をすると、喝采を浴び、テレビ出演や企業がらみの講演が殺到し、瞬く間に売れっ子になる。 その結果、空気を読むのに長け、政権や強いものに媚を売るタレントばかりがテレビを席巻するようになった。 しかし、そんな状況でも、権力に対しおかしいことは「おかしい」とはっきり口にし続ける勇気ある芸能人や文化人は存在している。 そんな芸能人、文化人を称えようと、リテラが毎年、選んでいるのがこの「芸能人よく言った!大賞」だ。 ま、リテラに褒められたところで誰もうれしくなないだろうし、下手をしたら、「ネガティブな反応が増えるだけ」と迷惑がられるかもしれない。 でも、本サイトはそれでも彼らの勇気を称えたい。彼らが言葉を発してくれたおかげで、沈黙していた国民が励まされ、権力に「NO」を突きつける声が確実に増えているのだ。黙っていられるはずがない。 ということで迷惑を承知で選ぶ「芸能人よく言った!大賞」。8位から順番にお届けしよう!
★8位 明石家さんま 政治的発言のイメージがない大物芸人の意外な「日本の戦争加担」への抗議活動
明石家さんまといえば、政治や社会に関する真面目な発言をするイメージがない人も多いのではないだろうか。それゆえ、ビートたけしには〈反射神経と言葉の選択のセンスは凄い。ただ、いかんせん教養がない〉(『バカ論』新潮社)などと悪口を言われてしまったりもするのだが、しかし、実はかなり本質的で踏み込んだ政治的発言もしている。 11月に放送された『MBSヤングタウン土曜日』(MBSラジオ)のなかで、さんまは日本が多額の拠出金を出していた湾岸戦争の時期、「俺はね、人殺しのアシストしたくて働いてるんじゃない」「こんなもんに金使うんだったら、俺は納めません」と税務署まで直接文句を言いに行ったことがあるというエピソードを披露したのである。 実はこれは数年前に『さんまのまんま』(フジテレビ系)でも語られたことがあるエピソードだ。しかし過去の出来事とはいえ、さんまがあえていまこのエピソードを披露したのは、安倍首相とトランプ大統領がひたすらに押し進める「戦争の機運」への危機感を感じ取ったからではないだろうか。 来年は、湾岸戦争の時期のことだけではなく、「いま」の安倍政権の戦争加担について直接、批判してくれることを期待して、8位に選ばせてもらった。
★7位 佐野元春 知性派ロックミュージシャンが表明した共謀罪批判と安倍・トランプ批判!
若手ロックバンドのミュージシャンが政治的なイシューに対して口をつむぐ一方で、積極的に問題意識を発し続けたのが佐野元春だ。 彼は、共謀罪の成立を危惧。5月17日には、フェイスブックに〈政府が進めている「共謀罪」に危険なシルシが見える〉というフレーズから始まる詩を投稿した。 そのなかで彼は共謀罪について〈戦前の治安維持法と似ている〉と指摘。そして、スーザン・ソンタグによる「社会においても個々人の生活においても、もっとも強力で深層にひそむ検閲、それは自己検閲」という警句を引用して、共謀罪の成立によりアーティストたちが自分の表現に自主規制をかける兆候が出ることを危惧した。 結果的に共謀罪は強行採決されたわけだが、それでも彼は自分の言葉に「自己検閲」という名のストッパーをかけることはなかった。 10月には、広島市内で行われたイベントの壇上にて、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)に安倍首相が言及しない状況を「もし核廃絶という目標を本気で持っているならば、日本のリーダーがお祝いのコメントを発信してほしい」と語った。 また同月には、「こだま-アメリカの友人、日本の友人に」という楽曲を発表。スポークンワード形式のこの楽曲では、〈誰がリーダーだろうと気にしない/気にするのは/リーダーに翻弄された人々/巻き込まれ、分断され、差別され/時に、人と人が殺しあうゲームに参加してしまう〉と朗読。人々の対立を煽る日米のリーダーを批判した。 こういった気骨あるミュージシャンが若手からも出てくると良いのだが……。
★6位 星田英利(元ほっしゃん。) ネトウヨからの「反日芸人」攻撃にも屈せず安倍政権への怒りをツイートし続ける反骨芸人
前述したように、弱者を叩き権力者に媚びへつらう芸人ばかりが幅を利かす状況のなかで、異色の存在が、星田英利(元ほっしゃん。)だ。星田はツイッターを駆使して、安倍政権の原発政策や戦争加担、言論への圧力などについて徹底批判を繰り返している。 その結果、ネトウヨに「反日芸人」よばわりの攻撃を受け、頻繁に炎上。それとともにテレビでもその姿を見ることが少なくなっていったが、それでも星田はいまもまったくスタンスを変えていない。 先日も、安倍首相とトランプ大統領の北朝鮮への対応を疑問視。「戦争に行かされるのは国民。戦争をさせる人を絶対に許してはならないと思います」と怒りをあらわにした。 大阪民主新報17年10月22日号のインタビューで「選挙権を取って26年、いろんな政権を見てきましたが、今の政権にはこれまで感じたことのない違和感を覚えます。いろんなことに説明責任を果たしていない」と語っていたが、その発言はけっして党派的なものから出ているわけではない。 普通の生活者として、安倍政権に対しておぼえた怒りをストレートに言葉にしているだけなのだ。そしてだからこそ、彼の言葉には、素朴ながら説得力がある。 星田のツイッターアカウントを見ると、固定ツイートとして一番上に〈大人たちがみんな常に"モノ言える人 "でいないと、今の子供たちの将来にモノ言える世の中をプレゼントできへんと思うよ〉という文が掲げられている。こういう人こそワイドショーのコメンテーターをやってほしいのだが……。
★5位 水道橋博士 安倍首相に媚を売る見城徹・幻冬舎社長の恥知らずな振る舞いに「飲み屋でやれ!」
2016年は、安倍政権について〈数こそ力で、リベラルを破壊していく政権運営ってめっちゃくちゃ怖い〉〈本当に権力って長くやればやるほど腐敗しますよね〉と真っ向批判し、ネトウヨから炎上攻撃を受けた水道橋博士。 だが、そのスタンスは2017年も健在だった。総選挙直前、安倍首相の盟友・幻冬舎の見城徹社長が自らのネット番組「徹の部屋」(AbemaTV)に安倍首相をゲスト出演させ、「ずーっと安倍さんのファン」「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」などと恥ずかしくなるようなおべっかを連発したことに対して、ツイッターで強烈なダメ出しを食らわせたのだ。 〈是非、若者に見て欲しい。これが将来勝ち組になるオトナの会話だ。これくらい「飲み屋でやれ!」と思う映像も珍しい〉 この博士の発言にネトウヨたちから再び「三流芸人」などのバッシングが嵐のように寄せられたのだ、これに、映画評論家の町山智浩氏やラサール石井が博士の援軍として参戦。逆に見城批判とネトウヨ批判が盛り上がる形になった。 博士はそのあとも、著書『藝人春秋2下 死ぬのは奴らだ』で『ニュース女子』ヘイトデマ問題の裏に『そこまで言って委員会NP』の製作会社社長の存在があることを指摘するなど、サブカル文化人らしい斜めからの切り込みで、この右傾化状況を批判し続けている。
★4位 水原希子 理不尽なヘイト攻撃に対し、「平和の希求」「反差別」を宣言した姿勢に拍手!
ザ・プレミアム・モルツのCM出演を契機とした水原希子へのヘイト攻撃は本当におぞましいものだった。 プレモルの公式ツイッターアカウントが投稿するプロモーションツイートに対し、「エセ日本人」だの「通名を使うな」といったヘイトコメントのリプライが多数飛ばされたのだ。 しかし、これに対する水原の態度は毅然としたものだった。騒動を受けて彼女は、ツイッター上に〈どこの国で生まれても、どこの国で育っても、どこの国に住んでいても、みんな地球人である事には変わりません〉〈一日も早く、この世の中の人種や性別などへの偏見がなくなってほしい〉〈全ての争いがなくなる事を心から祈っています〉というコメントを投稿。 ネトウヨたちのヘイトに対して萎縮することなく、それでもなお多様性を認め、地球市民として、戦争と差別を憎み、平和を希求する姿勢をはっきりと示したのだ。 この、理知的で毅然とした水原の対応。それに比して、バカのひとつ覚えのように「日本人じゃない」「朝鮮人だ」と攻撃を繰り返し、彼女を起用した企業にまで「反日」と言いがかりをつけるネトウヨたちの愚劣さ、グロテスクさはどうだろうか。 差別主義者たちが卑劣な差別攻撃で口を封じようとするのに対し、個として立ち、差別と戦争を憎み、そして、平和を希求し続ける彼女のことを、これからも全力で支持していきたい。
★3位 SKY-HI(AAA日高光啓) アイドルグループに参加しながら共謀罪批判にも踏み込む貴重な若手ミュージシャン
昨年、「音楽に政治をもちこむな」論争などというバカバカしい議論が巻き起こったことが象徴的なように、現在の日本の音楽業界では少しでも政治的な発言をしただけで炎上を焚き付けられる。だから、直接的に権力者を批判するような楽曲を発表するなどもってのほかだ。 そんな唾棄すべき状況をSKY-HIは打ち崩した。 共謀罪が強行採決されてからわずか6日後、彼は「キョウボウザイ」と題された新曲を突如YouTube上にアップ。その歌詞は、〈燃えた家計簿に(加計)/火消しをするように/木で隠した森(Friend)/丸出しでソーリー/シンゾウには毛が生えて/舌の数は無尽蔵/HP残り36ポイント(支持率)/保護するのは秘密の方で/テロと五輪 歪なコーデ/組み合わせて出来た/それで治安維持しようぜ〉というもので、森友・加計問題を追求されることを嫌がり、早く国会を閉めてしまいたい一心で議論を打ち切った安倍政権の独善的な姿勢を直接的に批判した。 炎上を恐れるあまり、日本のミュージシャンで政治的な発言に踏み込む人はほとんどいなくなってしまった。とくに、20代〜30代の若い世代となると、ほとんどいない状況である。来年もひとりでも多くSKY-HIに続く人が現れてほしいものだ。
★2位 マツコ・デラックス 「安倍ちゃんなんてもう馬鹿の象徴じゃない?」という正論に絶賛の声!
「安倍ちゃんなんてもう馬鹿の象徴じゃない?」 国民の多くが感じていることをマツコ・デラックスは言葉にしてくれた。 マツコは10月2日放送『5時に夢中!』(TOKYO MX)にて、安倍首相のことを「馬鹿の象徴」としながら、病的な無神経さであるとも批判した。 マツコがこの発言をしたのは、ちょうど安倍首相が森友・加計隠しのために衆議院を解散させた直後のこと。国際的に芽生える対話の機運に背を向け、自ら北朝鮮問題を煽りたてておきながら、「国難」などと国民の危機意識に訴えかけようとするやり口は見苦しいものだったが、そういった状況を指してマツコは「あれぐらいのさ、アホな人じゃないと、多分あんなことやれないと思うんだよね。この時期に解散とか、普通の神経だったら言えないじゃん? でも、それを言えちゃうだけの図太ささだったり、無神経さだったり、どっか病気じゃないとやれない職業だと思うのよ」とも批判した。 また12月に安倍首相がインスタグラムを開設した際は、『5時に夢中!』で別の出演者がSNSによって首相の本当の仕事が世間に伝わるなどと安倍首相のインスタを歓迎したのに対し、マツコは「超、安倍寄りのこと言ってるじゃないの」と返し、こう続けた。 「インスタとかSNSっていうのは、ようはああいうのって、ものすごい操作できるってことを見てる人は(考えておくべき)。都合のいいように、それだけを信じるのは違うかなって思うんだよね。出てるものすらフェイクニュースである可能性もあるわけじゃん。トランプさんなんて、そういうやり方をしているわけじゃない? 『これが真実だ!』って言っているけど、それが真実かどうかはわからないわけじゃない?」 権力側から発信される情報の危険性について喝破してみせたのだ。実際、マツコの指摘するとおり、安倍首相はfacebookやメルマガでデマ情報を発信してきた前科がある。 マツコはこれまでも、リオ五輪閉会式における「安倍マリオ」についてや、アベノミクスについてなど安倍批判をしてきたが、今年はさらに踏み込んだ批判をしている感がある。いまの日本で最も売れているタレントがこういったアティテュードをもっているというのは、とても勇気づけられる話であるが、それだけ安倍政権の危険度がのっぴきならないところにきている証左かもしれない。
★大賞 村本大輔(ウーマンラッシュアワー) 最強の「反戦芸人」としての地位を築いた1年。『THE MANZAI』の漫才は伝説に!
今年の大賞は、やはりこの人をおいてほかにいないだろう。ウーマンラッシュアワーが『THE MANZAI』(フジテレビ)で見せた漫才は圧巻だった。 村本といえば、今年8月には『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)に初出演。「安倍さんは戦争の臭いがプンプンする人」「核の抑止力っていうのはほんとうに意味がない」などと物怖じすることなくはっきり意見を口にし、北朝鮮問題にも「対話」の努力を政治家に求め、その上、日本が侵略した過去にまで言及。終戦記念日には〈僕は国よりも自分のことが好きなので絶対に戦争が起きても行きません〉とツイートし、本サイトでは「最強反戦芸人」としてこの話題を取り上げた。 そして『THE MANZAI 2017』で村本は、ウーマンラッシュアワーという芸人として、こうした政治批判を、なんと漫才のネタに見事に昇華し披露してみせたのだ。 まずしょっぱなからテレビではタブー扱いの原発ネタをぶっ込んだのを皮切りに、沖縄の米軍基地問題、被災地の進まぬ復興、安倍首相の対米追従などを、村本の超高速かつ「立て板に水」の迫力ある語り口で次々と斬ってみせる。そして、最後はそういった問題を取り上げないメディアや国民の意識の問題を突きつけた。 年が明けて1日未明の『朝生』でもそのスタンスはいささかもぶれることはなかった。リアリストを気取った論客たちが、憲法9条について、加憲か2項削除かなどというテクニカルな議論に終始するなか、村本は「憲法9条2項に何が書いてあるんですか」「(9条にあるとおり武力の行使を)放棄すればいいじゃないですか、非武装中立がいい」と敢然と言い放った。この発言に自称リアリストたちは「もっと勉強してから来い」「侵略されたらどうするんだ」などと村本を一斉に非難したが、「白旗あげればいい、殺すくらいなら殺される」「お花畑ですけど?」と一歩も退かなかった。そして「非武装中立と言ったとたんに、これでは議論が成り立たない」と現在の憲法議論の議題設定の狭さを突いた。 例によって、放送直後から村本はネトウヨや冷笑系から一斉攻撃を受けている。2018年もこうした苛烈な非難に晒され続けるのは確実だが、無知やお花畑と非難されることを厭わず反戦を主張し続ける村本の存在は、貴重というだけでなく、かなり格好いい。どうか負けずにいまの姿勢を保ち続けてほしい。
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いかがだったろうか。芸能人「よく言った」大賞。その発言の背景や内容を知れば、このランキングに名前を連ねた芸能人や文化人たちがいかに勇気ある言動をしたか、がわかるはずだ。 実際、彼らは発言の後にネトウヨから大炎上を焚き付けられており、ツイッターなどSNSのアカウントをもっている人は、リプライ欄が地獄絵図のような状況になった。 今後、メディアで政権批判をすることはさらに困難になり、同調圧力もますます強まっていくだろう。それでも、芸能人、タレント、アーティスト、作家の皆さんはぜひ、圧力に負けずに声を出し続けて欲しい。その言葉のひとつひとつがこの国を覆う閉塞状況を切り裂き、言論の自由を取り戻す第一歩となる。 来年は「よく言った!大賞」の選定が困難になるほど、たくさんの人が声をあげる状況になってくれることを願っている。
(編集部)