オキナワーー人権理事会勧告
「琉球新報」11/18日社説転載
米軍基地によって沖縄県民の人権が侵害されていることを、国際社会が認識した。
国連人権理事会で日本の状況の審査を担当する作業部会は、日本に対する勧告を採択した。その中に、沖縄の人々をはじめ、少数派の人たちの社会権保障を強化すべきだという意見が盛り込まれた。対日審査で沖縄について言及されたのは初めてだ。 国連の特別報告者は今年、名護市辺野古の新基地建設反対運動などへの圧力に懸念を示していた。新基地建設に直接言及してはいないが、基地の重圧に苦しむ県民に寄り添った勧告と言えるだろう。 日本政府は国連人権理事会の理事国であり、勧告を誠実に受け入れるべきだ。県民の社会権を保障するために、米軍普天間飛行場を直ちに閉鎖し、辺野古の新基地建設を断念するしかない。 日本政府が勧告された社会権とは、個人の生存や生活の維持・発展に必要な諸条件を確保するために、国家に積極的な配慮を求める権利の総称である。日本国憲法の25条に当たる。25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とし、国にその実現を求めている。 対日審査の中で、ペルーの代表者が「アイヌと琉球の人々が社会的、経済的、文化的な権利を享受できるようにすべきだ」と求めた。 国土面積の0・6%にすぎない沖縄に米軍専用施設の70・38%が集中、民意に反して新基地建設が強行されている。普天間飛行場に強行配備された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは2機墜落。東村の民間地に大型輸送ヘリCH53が不時着し炎上した。嘉手納基地に暫定配備された最新鋭ステルス戦闘機F35Aの爆音で高校の授業が一時中断した。米軍岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機も飛来し、常駐のF15戦闘機などと共に激しい騒音にさらされている。 今回の勧告は、2015年9月、国連人権理事会で翁長雄志知事が、沖縄は日米安保体制下で基地押し付けの構造的差別にあえいでいると訴えたことが影響しているだろう。複数の非政府組織が、在沖米軍基地により「人権が侵害されている」と訴える報告書を提出したことも影響しているだろう。 昨年日本を調査した国連の特別報告者は、対日調査報告書に、沖縄平和運動センターの山城博治議長が抗議行動を巡って逮捕され、長期勾留されたことに言及している。「抗議行動に不釣り合いな制限が加えられている」「裁判なしに5カ月間拘束したのは不適切で、表現の自由に対する萎縮効果を懸念する」と指摘した。この報告書は人権理事会本会議で発表された。 このような過程を経て沖縄の現状が国際社会に伝わり、国際人権法上の権利が侵害されていることを国連が認識したことになる。日本政府に誠実な対応を求める。